父親と金太郎
琉雲高校前店の売買の契約中に、和泉姉さんから連絡を受けた。『金太郎』に、公康を入居させる話となった。
俺は、ゲームのテーブルが並ぶ喫茶店にいた。
午後の客まばらで、俺ら四人の周りには、客の姿はなかった。
「ですから、いきなりの五千万円の値下げ交渉されなくても、相場の一億二千万で、手を打ってください」
俺は、コンビニの琉雲高校前店を、購入しようと金額交渉をしていた。
頼りないが、辺土名弁護士を横に付けて。公康の父親も、弁護士同伴で金額を争っている
琉雲高校の向かいにあるコンビニで、普通ならドル箱になるのだが。雨の日以外は、客足が遠のく。
バイトも、高校生の姿は無くて、外人が昼間から接客をしている現状だ。
「何を、言っているだ。相場だろ、どう見たって。犯罪を無かった事にしているんだから、コッチは。まっ〜今回は、コンビニの中で起きたんだ。オーナーのアンタが捕まる番なんだから……」
『ルルルルル、ルルルルル』
「失礼」
スマホ子画面に表示されたのは、和泉姉さんだった。関西で、『花咲か爺さん』のトップに立っている人だ。
「もしもし、今、商談中で後で折り返してもいいですか」
俺の今の立場は、『雀のお宿』のトップ、マキ姉さんと、『花咲か爺さん』のトップ、和泉姉さんに、お世話になっている身だ。
二人は、そんな事を気にしてなく。若かりし時の恩を返そうとしている。
二十歳前後の頃に、二人は黒井組のソープで嬢をしていたのだが。ストーカーまがいの客に言い寄られていて。
俺は、客寄せの身分でありながら、金だけを持っているストーカーに暴力をふるい、二年の最初のお勤めに出た。
バイク代に貯めていた、五十万前後のお金を下ろして、ソープのレジからも八十万ほど抜き。誰の名義かも分からない軽自動車を与えて、二人を逃がした。
二人は、介護の免許を取り。訪問介護とは名ばかりの出張風俗を始めて。客の取れなくなった、宏美姉さんや他の嬢達の面倒をみていた。
介護職が、全国へと広がり見せて。事業は波に乗り。龍紋會の息のかからない場所から始めて、全国に『雀のお宿』と『花咲か爺さん』を広めた。
今では、本職も一目を置く存在にまで成り上がっていた。
再開したのは、黒井組を解散させて塀の中にいた時だった。
坂下蘭の名で、面会に来たから。最初は、戸惑っていたが。会うと、マキ姉さんだった。
ココで、『雀のお宿』と『花咲か爺さん』の話を聞いた。
黒井組が、解散した事で。龍紋會とのえんがなくなり、大手を振って俺に会いに来たそうだが。
七年のお勤めを終えた後で、『雀のお宿』に二週間お世話になった。
酒池肉林の世界だ。マキ姉さんは、俺の子を望み。『雀のお宿』の跡継ぎを欲しがり。若くて危険日の女をあてが得てくる。
西の和泉姉さんも、同じだった。
福岡の宏美姉さんは、娘のなっちゃんを俺に押し付けようとする。
「例の件は、それでお願いします。ソレと、『花咲か爺さん』の『金太郎』件ですが。一人、推薦したい人がいるんですよ」
父親の表情が変わり、『花咲か爺さん』の名で、コッチの話に聞き耳を立てた。
「瑞慶覧公康君なんだけど、三十後半で引き篭もりのオタクなんだよ」
聞き耳を立てて、突然公康野名が出ておどろいている。
「それじゃあ、よろしく頼むね」
「何で、公康の名が出る。お前達は、何を考えている」
父親の方も、『花咲か爺さん』や『雀のお宿』の情報が流れていたらしい。
知っているだけで、コネクションが無いと入所できない。ソレばかりか。目の前で、公康の入所が決まろうとしていた。
「今度、引き篭もりを集めた、ホームを作ろうとしているんだよ。公康が選ばれたら、一期生だ」
精神科の先生方と話が決まっていて。
田舎の潰れたホテルを安値で買い取り、そこへぶち込む算段だ。
認証されていない投薬を体内へ入れたり、AVの汁男優として、小銭稼ぎ。本来の予定は、詐欺だった。
得意分野の試験をさせて、IQ120を作り出す。
コレは、医者もグルで。社会不適合者として、処理させる。補助金で、『金太郎』へお金が下りる。
第一回目の試験として、『数学』でも、『語学』でも無く。『魔女っ子』の試験となった。
決め台詞やボスの名は、イージー問題で。シリーズの何話の悪役の名前や、被害者の名も出てくる。
予定だが、IQ120以上の子種は売れるだろと、踏んでいた。
「公康は、どうなるのですか」
「問題無く、今まで以上に幸せな環境に送られる手筈になっている。やがて、『金太郎』のパンフレットが、家に届くはずだ」
子種を欲しがる女性の声と、田畑を守ろうとする田舎の老人の声、より良い知性を欲しがる女性の声も載せた。パンフレットが、瑞慶覧家へ届く手筈になっている。
「公康は、こちら側で面倒を見るから、心を気なく老後を楽しめ」
スマホを、ポケットにしまい。父親の方を見た。
「アレが、側にいると落ち着いて子供たちを外で遊ばすことができないからな」
「公康は、そんな事はしない。至って、優しい子なんだ。儂が、甘やかして育てたから、少しわがままが過ぎるだけなんだ」
「それで、盗撮か。笑えないな。だいぶ、甘やかし過ぎたんじゃないのか」
「一度、『金太郎』と言う施設へ、公康くんを預けてみてはいかがですか」
俺は、このセリフを吐かすのに、先方へ五十万は振り込んでいる。瑞慶覧の父親を落とせなかったら、辺土名弁護士と、何ら代わりはしない無能の弁護士だ。
父親は、他ならぬ側にいる弁護士の声に耳を傾き始めた。
「公康を怒らす事は、成る可く避けてくれるんだろうな。アレが癇癪を起こすと、手が付けられなくなる。怒り爆発のまま、我が家へお繰り返したりはしないよな」
「その点は、抜かり無いし。『花咲か爺さん』から外へ出たって報告は無い。外へ出たくとも、本人が出ないのだから、仕方ないだろ」
俺は、『花咲か爺さん』の名前を前面にアピールして、逃げ出す者がない含みを加えて話した。
「大丈夫だ。大船に乗ったつもりでいろ」
父親を納得させるつもりだったが、違う答えが返ってきた。
「東江さん。いや、東江様。儂にも、『花咲か爺さん』へ推薦状をいただけませんか。なっ、頼むよ」
瑞慶覧の父親とも、色々あった。だが、推薦出来るのならしている所だったが。
地方の地主程度で、推薦状は上げられない。
「舐めているのか貧乏人。アソコは、日本屈指の者達が、入所できるところだ。入会だけで、数千万とコネクションが必要なんだよ。ソレに、治外法権なくらい、中の物価は違う」
俺は、『雀のお宿』で酒池肉林を味わいながら、お金の代わりに使われていたチップが、湯水のように沸き、消える裏事情を知っている。
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