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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
5/11

辺土名と赤嶺

俺は、沖縄で何をしているのだろう。

何の為に、沖縄へ来たのだろう。

理解できない人って、居るんだな。




 東江は、那覇空港の2階へと上がった。

 食堂や民芸品店が並び、適当にお土産を買わなければならなかった。


 1つは、辺土名弁護士用に、もう1つは、不動産屋へ持っていく必要がある。


 俺は、懐かしい物を見つけて、衝動買いをした。


 大好物だった、クンペンとヨーゴだ。

 学生の時は、この組み合わせが好きで、バイト代で、余裕がある時は、贅沢と称してこのセットを買っていた。

 これで、満足できた。


 適当に、空いているベンチに座り。

 買ったばかりの、クンペンの袋を開けた。


 だが、食べていたメーカーが違うのか、味が変わったのか。クンペンの味が、思い出の味と違う気がした。


 俺は、色々と廻りながら、これと決まらず。


 結局、ヒヨコを2つ購入して、辺土名弁護士に、電話をかけた。


 「はい。辺土名法律事務所です。ご要件は何でしょう」


 男性が出た。時代か。


 「あの〜。私、東江と申しますが。東江住宅と東江アパートの件で、お電話を差し上げています。アポを取りたいのですが、いつ頃がよろしいですか」


 「はい。はい。東江昴様、お待ちしていました。住宅とアパートの件ですよね。いつ要らしても宜しいですよ。今日にしますか。明日にしますか」


 「今日って、今からでも、大丈夫なのですか」


 「大丈夫ですよ。問題有りません」


 「それなら、今、空港なので、タクシーで向かいたいと思います。宜しいですか」


 「分かりました。それでは、お待ちしております」


 俺は、タクシー乗り場へ移り。トランクに、衣類のケースを入れて。お金のケースは、後部座席に乗せた。


 俺は、辺土名弁護士の名刺を見ながら。


 「ごめんなさい。浦添の屋富祖まで、お願いします」


 「分かりました」


 タクシーの運転手は、メーターを回して。俺はスマホを取り出した。


 久しぶりの沖縄、俺が知っている道と全然違っていた。


 俺が、ここを離れたのは、だいぶ昔だ。

 昔は、違う場所に空港が有った。


 抜け道では無く。突き当たりだった。

 丸い駐車場に、外周に道路を作り。誰も、好き好んで、飛行機を見に来なかった。


 今は、海中を通り抜けて、大橋を渡り、港の直進を抜けたら、浦添だった。


 覚えている景色は少なく、全てが、新鮮にも感じ。スマホを仕舞い、車窓を眺めていた。


 浦添の繁華街だった場所は、さびれた街に代わっていた。

 辺土名法律事務所は、路地裏の2階に存在した。

 看板など無く。エレベーターに、表記されているだけで、正直怪しささえ感じ取れた。


 エレベーターを降りても、正面には、存在せず。

 3軒隣の部屋だった、事にはショックを受けた。


 電源の入っていない、スナックのネオン看板が、表に出ていて。看板に、紙を貼り付けて、『辺土名法律事務所』と、手書きで書かれていた。


 個性的ではあるが。無理がある。

 信用出来ない。


 取り敢えず、インターホンを押した。


 『ピーン』『ポーン』押すと鳴り。離すと鳴る。

 電気は、来ているようだ。


 「あの〜。東江ですが。辺土名法律事務所ですか、ここは」


 いきなり、辺土名弁護士が出てきて。


 「ささ、赤嶺不動産には、話は通してあります。行きますよ」


 いきなり出て来て。事務所のドアの鍵を閉めた。


 この男だ。刑務所に父親の訃報を届けた男。

 忘れていた過去を、思い出させた男。

 俺を、天涯孤独と教えに来た男。


 刑務所の面会では、気付かなかったが、かなりヤバイ感じがする。

 辺土名弁護士は、ヨレヨレのジャケットに、シャツもアイロンがかかっていない。

 無精髭が生え、頭はボサボサ。清潔感も無い。


 『こいつに、裁判を任せて。勝てる気がしない』


 「あの〜。これ、詰まらない物ですが、お収め下さい」


 辺土名弁護士は、少し変な顔をして。事務所の鍵を開けた。


 俺から、お土産を受け取り。事務所に放り投げた。


 次に、、俺からキャリーケースを奪おうとした。


 「これには、大品物が入っているんです。置いて行きません」


 「誰も、盗みませんよ。洋服なんか」


 「それでも、これは、手放しません」


 「私は、弁護士ですよ。物を盗む理由無いです」


 「駄目です。これは、離しません」


 「分かりました。どうなっても知りませんよ」


 辺土名弁護士は、事務所の鍵を閉めて、何処かへと向かった。


 繁華街の端に、駐車場が有り。一番端の軽自動車に辿り着いた。

 趣味なのか、大量の小説と、フォークギターまで、後部座席に置かれていた。


 俺は、衣類のケースを後部座席に押し込み。

 二億のケースは、助手席で抱いた。


 辺土名弁護士は、有ろう事か。那覇へ向かっている。

 こいつに、司法の免許を与えたヤツ出て来い。


 30分以上揺られて、付いた先は、奥武山の草野球場が見える場所だった。


 このなら、モノレールでも来れたよ。

 普通は、ここで待ち合わせをするよな。

 理解に苦しむ。


 赤嶺不動産は、5階建てのマンションで、1階が事務所で。2階より上が居住スペースになっていた。


 俺は、下半身が痺れて、力が入らないので、休ませてとお願いをした。


 「私は、忠告しましたよ。邪魔だからって。東江さんが、積むって仰ったんですよ」


 「はい。分かってます。私が悪いのです」


 絶対に、タクシーで帰る。

 もう一つの荷物も、ここで降ろして。


 「有難うございます。それでは、宜しくお願いします」


 辺土名弁護士が、先導して。赤嶺不動産へ入った。


 自動ドアが開き。対人センサーが、来客を伝えた。

 「「「「「いらっしゃいませ」」」」」


 辺土名弁護士は、何も言わずに。社長室へ向かい。ドアを、ノックした。


 「詰まらない物ですが。皆さんで、召し上がって下さい」


 辺土名弁護士は、返事を待たずに。社長室へ入った。


 俺が、お勤めしている間に、世間の常識が変わってしまった。

 僅か、7年で、常識が、分からなくなった。


 そして、社長室から、顔を出して。


 「東江さん、コッチ、コッチ」


 俺を手招きする、辺土名弁護士。

 俺が、向かうと。社長室に消えた。


 俺を、無視するかのような、従業員。

 俺は、正しい。俺は、正しい。俺は、正しい。


 「失礼します」


 社長室に入り。ゆっくりと戸を閉めた。


 赤嶺社長が、シングルのシートに座るのは許そう。

 だが、お前がそこに座るのか。


 「ささ。東江さんも、お座りになって」


 お前は何様だ。赤嶺社長は、何も言わないのか。

 この怒りを、何処にブツケたら良い。教えてくれ。


 「東江さん、お願いがあります」

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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