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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
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西村とテレホン

西村は、責任を取らず。謝罪もしないと言い放った。

砂川は、責任の取り方が分からないと言った。




 ここまでは、靴擦れ以外は想定内の話だ。西村は、やはりアホだった。


「西村は、どう責任を取るつもりだ」


「何もする気はない。実際に、オレが何をした。ガキを虐めた訳でもないし。日にちを、遅らせた訳でもない。精々、アナタを怒らせただけだ」


「こら、西村くん。言葉を慎み給え」


「問題ない。忌憚なご意見だ。参考にしておこう」


「ほらな。俺は、無罪だ」


 コイツは、やはり馬鹿なヤッだった。言っても、無駄だろう。上司の安仁屋が止めても、変わらないのだから。次に進もう。時間の無駄だ。


「おい。コイツは、起きるのか」


「砂川、起きろ」


『パチン』


 隣で正座している西村が、手を振り上げて、思いっきり振り下ろした。


「痛ーい」


 砂川が、目を覚まして、声を上げた。頭を抱えて、うずくまっている。


「大丈夫なのか、コイツ」


 俺は、振り向いて、安仁屋部長に尋ねた。


「大丈夫だと思います」


「おい、バカ女。お前は、この事件について、どう責任を取るつもりだ」


「分かりません。ですが、私のせいで、子どもたちの救出が遅れたのは事実です。私に出来ることは、全力で、行いたいと思っています」


「お前に、何ができる」


「分かりません。空手しか知らないので」


「面倒くせえな」


「じゃあ、本題に入るか」


 俺は、一度席に戻り、照喜名道場のお爺さんに聞いた。


「照喜名道場は、この問題を、どう片付ける予定だ」


「はい。道場をたたみ、土地や建物を売却して、東江様や子どもたちに、賠償して生きていこうと思いますが」


 爺さんは、申し訳なさそうに。


「孫と生まれてくるひ孫には、罪を与えないで下さい。虫が良いとは、思いますが。どうか、ご慈悲を、頂きたいと思います」


「私も、同じです。この子に、罪は有りません。おじいちゃんと話して、土地も建物もすべて売却します。足りないのなら、働いて返します。だけど、この子には、罰を与えないで下さい」


「難しいな。お前たちの努力次第だろ。頑張れとしか言えん」


「どうか、御慈悲を」


「検討はする」


 そして、もう一度、席を離れた。

 中村に近付き、口の中の布切れを取った。


「助けてくれ。あの家に居たら、俺は殺されてしまう。頼むよ、何でもするから、あの家から出してくれ……」


 うるさくなったので、詰め物を戻した。


「バカ女は、分からないと言い。無能の豚は、責任を取らないと言う。事件の加害者は、助けを求めた」


 少し悩んでから。


『ん゙~』


「もう一度だけ、西村に聞く。考えを改める気はないか。お前の言う通り、お前の罪は軽いかも知れない。俺に、謝罪しないか」


『ん゙~〜』


『夏と冬のボーナスと、半年間の給料の15パーセントを俺に納ろ。今なら砂川と同じ罪で許してやる」


「断る。何で、砂川と同じ罪になるんだよ。オレが何をしたんだ」


「分からないのか。遅延だよ。今も、お前が遅らせている。お前が、許しを請わない限り続くんだよ。罪も重くなる。いいのか」


「西村くん。早く謝って。進行を進めて」


「なんで俺が、理由わからないヤツに、頭を下げないとならないのですか」


「西村、ソレはファイナルアンサーで、良いんだよな。OK分かった。非常に残念だが、お前はクビだ。答えを間違えた。この個室から出て、荷物をまとめて、家に帰れ」


「何で、お前に指図されないといけない。お前はそんなに偉いのか」


「だから馬鹿なんだよ。どうする。既に2択だからオーディエンスとテレホンがあるけど、オーディエンスは、全員揃って謝罪しろだ。テレホンを使うか」


 少しタメのあと。


「嫁さんにでも聞いてみろ。仕事を辞めていいのか。一年間給料が減ってもいいか。仕事で人を怒らせてしまったから、クビになりそうですって」


「西村。電話もするな、謝罪しろ。意地を張るな。頼むから。なぁ」


 安仁屋部長が、説得しようとして。皆が頷いている。

 だが、西村はスマホを手にした。


「何でもないのだけど。俺仕事を辞めてもいいかな」


 皆が落胆して。西村も、段々と顔色が悪くなる。


「だから、なんでって。別にいいだろ。誓って俺は悪く無い。あ゙…何…はぁ。分かったよ。分かりました。じゃあね」


 通話が終わった時。西村は、子犬のようになっていた。


「すみませんでした。許して下さい」


「お前は、俺が偉くないと言ったが。あの動画を持っている限り、俺は偉い。この中の全ての人が職を失うんだよ。お前一人の感情で、皆全てを失うんだよ。そんな簡単なことを分かれよ。大人だろ」


『ふ〜』


「それじゃあ、結論から話す。賠償金は、一億円だ」


「俺は、250万円でも、高いと言いましたよ」


「そんなお金、土地と道場を売却しても足りません。どうしたら宜しいですか」


「協会も、そんな金は、有りません。無理です」


「そうです。何処をひっくり返しても、そんな大金出てきません」


「慌てるな、バカ共。お前らからは取らねえよ。一億円が集まるまでは、照喜名道場の抵当は抑えるけど。直ぐにたまると思うぞ」


 俺は、USBメモリーを皆に見せた。


「この動画の最後の部分を、ユーチューブに載せる」


 皆の頭が、フリーズした。


「言っている意味が分からん。乗せたらマスコミに、リークしているのと、同じじゃないのか。全てが水の泡じゃないか」


「良く聞け。中村を、傍観者の魔の手から、子供たちを守ったヒーローにする。コレで大バズリを狙う」


 俺は、前原の方を向いて。


「空手協会は、世界中に呼びかけろ。いいねと登録と、拡散させろ」


 次に、照喜名道場の方を向いた。


「照喜名道場は、追随するように、子供たちの動画を次々と上げろ」


「コレだと、東江さんが、悪者になります」


「だからどうした」


 俺は、上着を脱ぎ捨てて、閻魔大王を、皆に晒し。


「俺が、良い奴に見えるか」


 皆が、ドン引きしている瞬間に。


「コレから、主文を言い渡す」


 楽しい時間が始まる。


「弁護士の佐久間は、250万円の支払いを、言い渡す。勉強代だ。最初の土下座が悪かった。3秒以内に、誰にも指示をしなかった。お前が悪い」


「甘んじて受けますが、ユーチューブのネタを使ってもいいですか。直ぐに元が取れそうです」


「問題ない。だが、半年だけ待て。こっちがバズってからだ」


「承知しました。サインは、そちらの弁護士と済ませたら宜しいですか」


「あぁ、うちの弁護士の書類にサインをしてくれ」

 

 

読んでいただき、有り難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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