引っ越しと下着の箱
引っ越し作業再び。ガキどもを使って、203号室へ。
その時に、朱美のトラップが発動した。
変態の公康が消えて、向かいのアパートに、平和が戻った。
朱美は、休んでいた仕事を探すようになり。
天音ちゃんの登園が始まった。
普とは、学校の近くまで一緒に歩き、集団登校の輪に入ってからは、道を挟んで離れて歩いた。
学校に着くと、大きく「押忍、行ってきます」と言って、学童の波に消えた。
保育園では、入り口で分かれて、ハイタッチをすると、クラスまで走って消える。
帰りは、夕飯の買い物に充てた。
今日は、兆志の要望で、カレーに決まったが。
どの味付けにするか、考察中だ。
取り敢えず、3種類のルーを籠に入れて、フルーツを買い足した。ビターチョコに鍋用の白湯スープの素とキムチ鍋の素を買った。
一つ目は、フルーツをたっぷりと入れた、甘口カレーを作り。
コレは、基本子供用で、試作用で作っている2つ目のカレーが失敗した時に、混ぜるようとしてキープしている。
2つ目は、ビターチョコとキムチ鍋の素を入れた、中辛カレーを作り。
コレは、チャレンジに近い。皆の反応を見ながら、意見を聞く。合わなかったら、1を混ぜてみたり、3を混ぜてみたりする。発展途上の家のカレーだ。
三つ目は、白湯スープをベースに、コリアンダーや、ウコン、八角等を、素から作った辛口。
主に、俺と京子しか食べない。夏場は、ビールによく合う。
今回も、2に関しては、苦情は出なかったが。基本的にカレーなので文句は出ない。ただ、キムチ鍋のスープの素は、匂いに若干の違和感を覚えた。
天音ちゃんを風呂から上げて、髪の毛をドライヤーで乾かしている時に。
「元の203号室に、戻っても大丈夫かなって、思って」
203号室は、まだ、誰も借りては無いし。空いたまんまだったので、問題は無かったのだが。
「アルファードの駐車場と交換しようか」
アルファードが、302号室の駐車場に止まっているので。朱美は、向かいのアパートの駐車場を、そのまま利用していた。
「駐車場の問題だけじゃないの。新しい職場にまだ馴染めなくて、夜に天音の手を引いて、3階に上がるのがつらいのよ」
「俺が、3階まで抱っこして送ろうか」
「お願いしてもいい。私、結構重たいと思うけど、大丈夫」
「天音ちゃんを、抱っこさして送ろうか」
「それは、冗談だけど。2階に戻してくれると助かるかなって」
「あんまり無理するなよ。無理に続けなくてもいいから」
「もう少しだけ、頑張ってみる」
一月半ぶりに、引っ越し作業員を募集した。
週末の土曜日の午前中から、男女24名の若人が集まり、前回同様に、スムーズに事が運んだ。
前回のメンバーも、そうでない奴らも、テキパキとモノを移動させたが。
一つだけ、怪しい箱が存在した。
大きさ的には、比較的に小さい駄菓子の箱に入り。
念入りに、ガムテープが施されている。上部にパンツと書かれていて、ハートマークも付いていた。
女性陣は、最後に女性が運べば問題ないと思っていたが。
荷物と荷物の間に挟まり、いつの間にか、荷物を搬出する玄関に行き。
男子にバレた。
外の廊下では、数人の男子が興奮しながら、ジャンケンを始めて。負けたやつは、勝ち残った奴の肩を、グーで殴っていた。
「ヨッシャー。神様アザース」
ガッツポーズを決めて、最後の一人が、衣服の箱の上に、『パンツ』の箱を重ねた。
「大丈夫か、無理するなよ」
「休んでいいぞ。オレが変わるから」
「水持ってきたぞ。飲めよ」
3階から一階へ降りて、細い路地を渡り、向かいの203号室へと運んだ。
数々の誘惑にませず、一心不乱に黙々と休むこと無く運んだ。男としてやりきった。
203号室にも、数人の女子が荷物を確認している。
その荷物を持って来た男子を、軽蔑した目で見て。蔑んだかに見えたが。
何の考え無しに、スッと『パンツ』の箱を取り、ガムテープを引っ張って、開封した俺。
中身は、天音ちゃんのパンツだ。
ドキドキさせた、朱美のトラップだった。
野郎共は、肩を落として。
女子は、ホッとした。
コレは、俺に対するトラップだった。
一緒に入っていたハンカチの中に。黄色いレースのパンツが出てきた。
4000円の値札も、付いたままだった。
ここで、ハンカチのように汗を拭くのだが。
俺は、床に放置した。
女の子たちは、パンツを拾い。大人なレースのパンツを、回しながら広げてみている。
作業するその手は、止まっていた。
だが、午前中で引っ越し作業も一段落して、野郎共は、お決まりの洗車タイムだ。
「朱美の軽自動車も、ついでに洗車するか」
「絶対に駄目。今度、洗車機に通すからいい」
コレは、俺からの仕返しだった。
今の朱美の軽自動車には、知られてはいけない物が、大量に入っている。
「仕方ない。コスモとアルファードの洗車をするぞ。野郎ども」
俺は、ガキどもを連れて、ガレージ前に着いた。
ガレージに入ったら、ナンシーがスポーツブラとスパッツで、ランニングマシーンを使っている。
「あれ、引っ越し作業は」
「終わった。時間が余ったから、洗車タイムだ」
「だったら、私の車もお願いできるかしら」
「それは構わないが、変な物は入ってないだろうな」
「大丈夫よ。トランクも含めて、やましい物は、入ってません」
「分かった。どんなに些細な物でも、刺激が強すぎるからな」
俺は、洗車道具の入ったアディダスの缶々を取り。ホースに手をかけた。
「ここを出る時は、刺激を抑えた服装で頼む。ティーンエイジャーを、刺激させるなよ」
「分かったけど。この後シャワーを使うから、誰も入れないでね」
「あぁ、分かった」
巻かれたホースを出して。業務用の掃除機も出した。
ナンシーの新車のセダンの鍵を取り、ガレージに、鍵をかけてプリウスを取りに向かった。
中と外にグループを分けて、外には洗車道具と巻かれたホースを渡して。室内担当には、掃除機を渡した。
学園祭みたいなノリで、3台の車が綺麗になって行く。
体のラインが出る、スポーツブラとスパッツ姿で、ガレージからナンシーが、出て来た。
髪の毛は、乾いてなく、濡れている。
俺は、泡まみれの手を腰に当てた。
外国製の匂いのキツイ、シャンプーやボディソープが、ティーンエイジャーの鼻と目を刺激した。
「新車だから、丁寧に扱ってね。優しく。優しくね」
プリウスを、洗車していた男の子は、緊張して。
「はい。優しく、洗います」
「「「「オー」」」」
どよめきが起こり、やる気に拍車が掛かった。
「サービスよ。サービス」
俺に向かって、ウインクをした。
3台とも、WAXまでかけて、ピカピカになった。
いつものように、バイト代の他に、ボーナスも支給して、解散をした。
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