麻美とマー君
東江は、怒りの矛先を、ガキどもに向けていた。
許せなかった。復讐を誓った。
俺は、復讐の鬼と化していた。
アレは、忘れもしない、漁港での事だ。
漁網で、生け捕りにされて。漁港内を、引きずり回された。
壁に、何度か打ち付けられて、終いには意識を失った。
ソレばかりか、俺の金が帰って来ない。
真琴は、バイクを買うために、宮城へ53万を支払ったそうだが。何処かへ消えている。
ついでに言うと、最初に漁港内から逃げる時に、ポケットの全財産を、ぶちまけて。20万くらいを、ばら撒いている。
主犯の宮城と数人は、捕まったのだが。あのリンチに加担したヤツは、容赦しない。
これから、大人の復讐をする予定だ。
チームの連帯責任を取れ。
23人のガキが集まった。
金を返せと言っても、素直に払わないだろう。
一人ずつ捕まえて、拘束した。
ガレージに、ガキの一人を呼び出して、一斗缶に木炭を入れて火をつけた。
シャッターを閉めるS字フックの棒を、一斗缶の中に入れて、真っ赤に焼いた。
熱々の鉄の棒を見せて、仲間を呼ぶように仕向けた。
勿論上着を着ずに、閻魔大王を晒した。
特攻隊長の三上を捕まえたら、芋づる式に釣れた。総勢、23人。
ガレージの中に入ってもらい、インシュロックで両手を縛り。
両手は、ガレージの梁から吊るされた、紐に結ばれて、両手を下ろす事が出来なくなっている。
半数以上が、が特攻服を着ていて。脱がしやすかった。
一番苦労をしたのは、ピチピチのデニムを履いたやつだった。
皆のズボンとパンツを下ろして、3人に入ってもらった。
皆、首から手作りのプラカードを下げて。
『僕たちは、18歳以上です。成人してます』
念の為に、目出し帽を被せた。画像流出を恐れての事だ。
3人は、薄暗いガレージで、何度もフラッシュを焚き、写メを撮った。
「辞めろ、撮るな。東江、ぶっ殺すぞ」
「お願いします。撮らないで下さい」
「弁護士に、言うぞ。告訴してやる」
「そんな事を、言っていいのか。俺が本気になったら凄いぞ」
「ヤれるもんなら、ヤッてみろよ」
「後悔スッぞ、オッサン」
「後で、吠え面かかせてやる」
「オジサン、世代だから、一度これヤッてみたかっんだよ。チャンスをくれてありがとう」
ガキどもに、敬意を評して。
「女性陣に、入ってもらいましょう」
ナンシーが、外にいるレディースを連れて中には入ってきた。
「最初から、凝視すると目が潰れますから、壁の方を見てて下さい」
野郎の方は、撮影用に、明かりが付き。
レディースの方は、薄暗く、シルエットだけしか見えていない。
「聞いてねぇ〜ぞ」
「辞めて下さい」
「降参するから、手を降ろさせろ」
レディースの中が、ざわ付き始めたので。待たす理由には、行かなくなり。
「ごたいめーん」
レディースの方々は、一斉に振り向きフラッシュを焚き、無様な男たちを撮った。
下半身を露出させて、日ごろ強がっている男たちの、醜い姿をスマホに収めて行き。
1分後には、特攻隊長の三上に集中した。
アイドルのように、フラッシュが焚かれている。
「それでは、ズボン上げのオークションを開催致します。司会は、ワタクシ。東江が、務めさせて戴きます。どうぞ宜しく」
「オークションって何だ」
「っテメー、ジジーいい加減にしろよ」
「ふざけるな。ゼッテー訴えてやる。覚えてろよ」
「それでは、左端の冴えないヤツから、始めたいと思います」
レディースの方々は、あまり乗り気ではなかったが、1人だけレベルが違った。
「210円、ハンマープライス」
「180円、ハンマープライス」
「230円、ハンマープライス」
一人の少女が、一極集中して勝ち続けている。
ソレを、打ち破ったのが、マー君だった。
「160円、何方も宜しいですか」
「麻美、助けてくれよ。頼むよ。今度こそ、マトモに、なるからさ」
「私は、マー君と別れたの。今日参加したのも、三上先輩目当てなの」
「そんな事、言うなよ。頼むよ」
「嫌よ。私、約束したよね。もう、葉っぱは、やらないって」
「魔が差したんだよ。宮城が、誘ったから、断れなかったんだよ。直ぐに、逃げたから。捕まらなかったんだよ。信じてくれよ」
「だ、か、ら。私たちは、終わったのよ。もう、元には戻らないの。マー君を、信じられないの」
「俺、麻美がいなくなったら、生きて行けない。助けてくれよ」
「私が、何度その言葉に騙されたか。皆、知っているし。別れを、勧めてくるんだよ。私は、耐えられない」
「本当に、マトモになるからさ。俺、馬鹿だけど、麻美を幸せにする自信はある。こんどこそ、俺の本気を見せるから、頼むよ」
「本当に、信じていいの」
ざわつきの中、麻美を心配して、止める声もチラホラ聞こえる。
「もう、私を泣かさない。信じていいの」
「大丈夫。信じてくれ。俺は、麻美を幸せにする」
「180円」
「200円」
空気を読まない女性が居るようだ。
麻美は、レディースても無く、頭数の為に呼ばれた少女を睨んだ。
「210」
「22…」
「210円で、ハンマープライス」
俺は、割って入った。
誰も、彼女の暴走を止められそうに、無かったからだ。
「有り難う。麻美」
麻美は、マー君の元へ歩みを進めたが。
「ちょっと待ったー」
スマン。正直、コレもやりたかった。
俺は、スマホを取り出して、高く掲げた。
スマホは、録音表示されていて、カウントは、ドンドン上がって行く。
俺の行動に、数人が賛同した。その中に、真琴も入っていた。
皆が、録音表示をさせている。
当然、麻美も録音表示させて、マー君に見せた。
「そんな事しなくても、俺は生まれ変わったの。信じて欲しいの」
「信じたいけど。私は、何度も裏切られたの、別れ話をしたのも、何度目よ。こうなるのは、しょうがないよ」
「今度こそ、本気だよ。麻美を、俺が幸せにする」
「本当に、私を幸せにする」
「あぁ、信じてくれ」
「絶対だよ。裏切らないでよ。信じてるから」
麻美が、歩き始めた。俺が、スマホを掲げると。数人が、スマホを掲げた。
「ありがとう」
マー君のパンツとズボンが上がり、割れんばかりの拍手が、ガレージ内で起こった。
三上の値段は、3840円まで上がり。
勝利した子は、5人からお金を借りて、勝負していた。
負けた子たちも、ほぼ全員が、三上目当てで。
三上の後は、話にならなかった。
1人を除いては。
ストロボを焚かれて、夢を、大きく膨らませた奴がいた。
「ごめんなさい。助けてください」
注目を浴び、衰えることを知らなかった。
「320円」
最初から、破格の値段がついた。
だが、ここは、大人の対応で応えた。
「2000円」
朱美が参戦した。
「2000円、ハンマープライス」
「コレを、お子様たちに、触れさせてはいけない。大人の私が、片付けないといけない問題です」
バンツを上げて、スボンを上げても、違和感は残ったままだった。
彼のように、大勢の前で夢を膨らます少年は出てこなかった。
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