新築祝いとすみれ姐
家が完成した。至れり尽くせりとは行かないが。満足する家が完成した。
全国の『雀のお宿』から、新築祝いが届いた。
我が家の新築が、完成した。
5LDKsの平屋。真新しい匂いがする我が家に、次々と、荷物が届く。
47都道府県の『雀のお宿』と『花咲か爺さん』から、新築祝いが届いた。
なっちゃんの話では、大分の別府に広大な土地を購入して、新たな宗教団体の『まんだらけ教』を設立して。税金対策に充てると、唱えていた。
来月の地鎮祭に呼ばれていて、『雀のお宿』と『花咲か爺さん』の創始者として、教祖を演じることとなっている。
形ばかりとか、名ばかりですと言われて、教祖にまでなってしまった。
「教祖の座を降りたければ、『まんだらけ教』の誰かと、子供をなせ」としか言われない。
その座を欲しがる女性は多数いて、皆未婚の若い女性たちだった。
家の隅々を見て回り、和室に仏壇だけは、変わらずに、天板が高くなり。
見事な梁が、横に2本、縦に太いのが1本通り、日本家屋らしく見えた。
寝室は、クイーンサイズのベッドが、真ん中に配置されて。取り囲むように、テレビや音響機材色々と並び、壁は集音材が張り巡らしている。
防音設備用の重たいドアを開けて、裏に進む途中で、大人用のトイレがあり。
俺の老介護用に、広く作られていて、個室と小用に分かれている。
トイレの反対側の仏壇の裏には、ウォーキングクローゼットがあり。
俺の荷物は、ここには入らない。
主に、女性陣の仕事着が、納められている所だ。
さらに進むと、大きなパントリーがあり。
今は、半分のスペースを、お米が占領している。
クーラーが設置されていて、温度管理もバッチリだ。
日常で使うようの、狭いパントリーがあり。
そこは、業務用の小さな冷凍庫があるが、人が立ったまま入れるサイズだ。天音ちゃんが入らないように、高い位置でフックが掛けられている。
反対側には、棚と背の高いワインセラーが、並んでいる。
ワインを嗜む程ではないのだが、ロマネ・コンティのある年代物のだけ届く。
大変効果なものなので、開けられずにいる。
その横に、洗面室、脱衣所、洗濯室、乾燥機などがあり、風呂場の入り口でもある。
抜けて、キッチンだが。揉めた。
俺も、キッチンに立つので、俺のサイズで作ろうとしたら、京子に反対された。
「東江さんのサイズに合わせると、私が立てなくなる。私のサイズに合わせなさい。女性陣も居るのよ」
勿論、却下した。京子に、同意する2人を、よそに。『俺の家だ』と、言い張った。
譲れないモノが、ここにある。
冷蔵庫は、2台並べて。お取り寄せの卵も、届いていた。
リビングは、L字型のソファーとシングルが2つ、壁に、カウンター式のテーブルと椅子を3つ並べて。
玄関横に、子供部屋を増築した。
子供用のトイレも、そこにある。
全体的には、ザックリと説明をした。
ガレージにも、ランニングマシーンやら、サウナ室と小さなシャワールームも、設置されていた。
機材は、まだまだ届く予定だった。
初日に、8人だけでパーティーをした。
兆志は、御当地のレトルトカレーとラーメンを取り。
普も、ラーメンに手を出していた。
女性陣は、果物やスイーツに手を出している。
果物は、傷みやすいので、早い方が助かる。
アイスクリームに、アンコの和菓子、ロールケーキ、まんじゅう、バームクーヘン。柿、梨、栗、ぶどう、林檎、サツマイモも、箱であった。
俺は、キッチンに立ち。包丁の腕を見せた。
まぁ、リンゴでウサギを作り。天音ちゃんを、喜ばせたくらいだ。
男二人は、子供部屋へ逃げて。
ナンシーは、桃のワインを開けて、ボトルとグラスを持ち、ダイニングテーブルのお皿に、剥きたての果物が並ぶのを見ている。
京子と朱美は、全国のスイーツ食べ比べを始めて。
真琴は、カウンターに座り。携帯をいじっていた。
フルーツの盛り合わせが完成して。ナンシーが、ボトルをテーブルには起き、グラスのワインを飲み干そうとした時に、天音ちゃんが走ってきた。
ワイングラスは、天音ちゃんの横を抜けたが。
桃のワインを、頭から被った。
「ごめんね。天音ちゃん」
ナンシーはその場で謝り。
俺は、天音ちゃんが、びっくりしているのを見て。
そのまま、服を脱がして、お風呂場へと向かった。
何回も、シャンプーをしたが、匂いは取れず。
そのまま、体も洗った。
何十年ぶりに、幼い子の体を洗い。加奈と比較してしまって、涙目になった。
風呂場の外では、朱美が、天音ちゃんの着替えを取りに走り。ナンシーは、床を綺麗にして。京子は、子供たちを見ていた。
お風呂から出ると。朱美が、バスタオルを広げて待っていた。
目からは、涙を流し。天音ちゃんを、優しく迎えた。
「パパと、お風呂に入ったの。凄いね」
肩まで伸びた髪の毛を、覆い隠して。バスタオルで、グァサグァサと髪の毛を拭いた。
「ごめんね。ママが馬鹿だったから。天音が、男性恐怖症になったのよね。パパに会えて良かったね」
朱美の大きなトゲが、一本抜けようとしている。
天音ちゃんは、そんな事を気にしてなかった。
髪の毛を、鼻の前に持ってきて。
「くチャイ」
朱美も、天音ちゃんの頭の匂いを嗅いで。
「くチャイねぇ~」と、返した。
謝罪をしに来た、ナンシーに着替えを頼み。
ナンシーは、スウェットを取りに戻った。
「ごめん。俺が臭い臭い言い過ぎたかも知れない」
「大丈夫。パパのお風呂当番が、決定しただけだから」
その後は、ナンシーも天音ちゃんに謝り。
天音ちゃんも、ナンシーに謝った。
皆が帰り、俺は飛騨牛のステーキを、ワサビ醤油で食べて。勿論、ナンシーも一緒に食べた。
翌朝、早くからチャイムが鳴った。
『ピンポ~ン』
横で眠るナンシーに、気を使いながら。ベットから降りた。
寝室から、和室を抜けて、玄関へと辿り着いた。
ロングのTシャツに頭を通しながら、玄関を開けた。
そこには、色白のホッソリとした、着物の似合う女性が立っていた。
「ご無沙汰してます。すみれ姐さん」
大きな風呂敷を、両手で抱いている。
「何だよ。あの騒動で、私が捕まるとでも、思っているのかい」
「しかし、前田の兄さんは、沖縄から撤退したって、聞きましたよ」
「前田のヤツは、死んだよ。鉢嶺組の組長の娘を残して、先ねげたんだよ、前田は。当然の報いだろう。それに、一緒にいた志乃さんも葬って、菊乃の横に並べる予定だ」
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