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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
3/50

始まりと終わり(後)

京子が、会社を休もうとした。

明日、明後日と、連休を組んでいる手前、仕事を休めなかった。

最後に、松田ナンシーが登場した。




「今日から、3日間は浮気しないで。子種は、私の中に全て出してね」


 何度も聞いた。このセリフ。


「あまり、張り切らない方が、良いと思うよ。ほら、思い詰めないで」


「私には、使命があるの。45歳までに、昴の子を2人産まないといけないの」


「だから、そう言うプレッシャーを与えないで欲しいの。ついでに、お義父さんの方にも、伝えてくれないかな」


 俺の目の上のタンコブ。横井龍三には、絶対に逆らえ無いから、京子に代弁をお願いしている。


「昴さんは、そのままでいいの。私との子を、成したくないの。私は、体調管理もして、鉄分も葉酸も多く摂取してるのよ。この月に、3日間だけで良いの。私の願いを聞いて」


 凄く、か弱い女のイメージなのだが。なんなら、結構な頻度で、してますけどね。


「分かった。帰ってきたら、可愛がってあげる。だから、お仕事頑張ってきて」


 京子を抱き寄せて、熱いキスをした。


「今日、仕事休んで。今から可愛がって貰おうかな」


 京子が、腰に手を回してきたが、強引に、手を戻した。


「明日、明後日と、連休入れているんだろ。来月の連休が、取りづらくなるぞ」


 ここは、冷静に対処したつもりだ。


「今日の晩飯は、京子の好きなマーボーにするから。頑張ってきてよ」


 追撃の言葉を浴びせた。


「私専用の作ってよ。その為に、1人用の土鍋を買ったんだから。真っ赤に染めてね」


 コレをやると、京子はダイニングで食事を取る事になる。

 土鍋が、熱過ぎる事と、基本、年中薄着の沖縄で、汗だくのお母さんは、見るに堪えない。


 毛穴が開いて。そこから、滝のような汗を掻く。メイクが落ちるのも気にせず、ご飯と麻婆をひたすらかき込む、母親は見せたくない。


 後、それだけでは無い。


 最後は、汗だくのまま、風呂場へ直行する。

 今日は、泊まる予定だから、大問題なんだ。キスされる、俺の下半身の身になってみろ。

 歯磨きした後でも、死ぬぞ。


「成る可く、赤く染める。期待してて」


「分かった。早く仕事を切り上げて、定時で帰れるようにするね」


 今日は、ダイニングテーブルのティッシュボックスを取り、俺に向けた。


「口紅付いてる」


「有難う、気を付けるよ」

 朱美の方の事を、言っている。私ので、上書きしましたと。アピールしている。


「年内に、妊娠しなかったら。本気で妊活するからね。大学病院に、一緒に行くから。体外受精も覚悟してて」


 京子は、嵐のように去った。


 俺は、リビングの皿を片付けながら、天音ちゃんの残りを、胃に落としていく。

 食事を作りながら、味を確認したり。摘んだりはしているので、カロリーはゼロのはずなのだが。


 天音ちゃんと普は、大人しくアイパッドで、動画を見ていた。


 流しに、水を張り。時間が無いので放置する。


 天音ちゃんの、保育園のカバンの中を確認して。歯磨きを済ませ。戸締まりをした。


 家の鍵を閉めたら、3人で登校する。


 天音ちゃんは、道路を歩かない。

 俺が、前傾して歩くと、腰が痛くなり。

 天音ちゃんが、手を常に上げている状態が不憫に感じたからだ。

 天音ちゃんを、常に抱っこして。同じ目線で、会話をしている。


 途中から、普は俺たちと離れて。集団登校の輪に入る。

 悪ふざけをしたり、女子に、怒られたりしている。

 懐かしくもあるが、俺たちの時代に、集団登校は無い。

 女子は、大人びて。男子は、子どものままだ。


 天音ちゃんからは、童謡を教わったり。園の話をする。

 たまに。極、稀に。天音ちゃんを、歩かす事がある。


 週末の土曜日、お布団回収の時に、買い物を忘れて。帰りに、スーパーへ寄る時等は、魔女っ子のウエハースチョコで釣る。


 キラキラシールが出るまで、辞めないが。買い物をし忘れた事を後悔する。


 学校の校門に辿り着くと。


「押忍、行ってきます」と、元気な挨拶が飛んできて。

 俺と天音ちゃんは。「バイバイ」と手を振るが。

 俺達に、大きく手を一度だけ振り。


 友達に、置いてゆかれてる事に気付き、走って友達を追いかけて、子供の群れの中に消えた。


「行こうか」

「うん」


 俺と、天音ちゃんは、童謡を歌いながら、保育園へ向かった。


 俺は、この辺では、かなりの有名人になっていて。

 一次は、保育園を出禁にされていた。


 原因は、俺の過去と真琴事件に、関わってくるのだが。

 最近になり、玄関まで許されるように回復した。

 努力の賜物である。


 天音ちゃんを、玄関で降ろし。ハイタッチをした。


「パパが、一番最初にお迎え来てね」

 可愛く微笑み。教室の方へダッシュした。


 朱美が、天音ちゃんに、吹き込んだ言葉だ。

 17∶00前に、お迎えに来ないとならない使命感。

 パパが、お迎えをして。ママは、ゆっくり出来る安心感。


 俺は、後ろ指をさされながら、保育園を後にした。


 帰りにお豆腐屋さんへ寄り、2丁半とお昼用のゆし豆腐を買い。油揚げは、購入して無い。

 財布の入った小さなカバンから、マイバックを取り出して、豆腐を入れた。


 その後は、スーパーへ寄り。野菜とひき肉を買い足した。

 ご褒美アイスは、今日はお預けにして。ランニングマシーンで、走る事を決意したいた。


 家に到着すると、ナンシーが縁側に座っていた。


 門を潜り、俺が視界に入ると、駆け寄ってきた。


 松田ナンシー 30歳 独身 スナックナンシーのママをしている。

 黒人系のハーフで、グラマスなボディにハスキーボイスの歌声で、男たちを魅了している。


「今日の晩御飯は、なーに」

 機嫌よく、俺の腕に大きな胸を押し付けて、マイバックの袋を覗いた。


「まほどぅふ」

 俺は、少し濁した。


 マイバックの中に、お豆腐屋さん豆腐を見つけて。

 ナンシーの顔から、笑顔が薄れてた。


 俺の顔も、引き攣っていたかもしれない。


 それでも、俺の手を引っ張って、家の玄関を開けてとせがんだ。


 11月中旬の曇り空だが、家を開けると『モワッ』っとした空気が流れてきて。俺達を包んだ。


 俺は、食材を冷蔵庫へ入れて。

 ナンシーは、家の窓を開けて、家中を廻り。空気の入れ替えをした。


 俺は、お客さん用のマグカップとナンシーのカップを取り出して、コーヒを入れた。


 俺は、コーヒーが、冷めるのを待ちつつ。

 流しの、食器を洗い始めた。


 ナンシーは、ダイニングテーブルの、いつもの席に座り。

 スナックナンシーの、愚痴を始める。


 赤嶺社長が、ケチだの。酔った辺土名弁護士が、うざい絡みをするとか。スケベでお尻を触る、お客さんの話。ソファーの修理費。スタッフの恋愛。


 色々な問題が、ナンシーに伸し掛かり。

 俺は、相槌を打つ。


「ねぇ。ちゃんと聞いてる」


「あっ。うん。聞いてる。ボーイと嬢の話だろ」


「もう、真剣に聞いてよ」


 ナンシーは、急に立ち上がり。後ろから、俺を抱きしめた。


 洗い物を続ける俺の左手に、手を絡めて。


『俺の小指を外した』


 俺の義指は、天音ちゃんの魔女っ子プレートの上に落ちた。


 次に、スウェットの上着のファスナーを下げて、前を外した。

 背中側のスウェットを捲り、中の黒いロンTも捲った。


 俺の背中の、閻魔大王が顔を出した。

 背中に、頭を5回打ち付けて。そのまま頭を押し付けている。


 俺の緊張や心音が伝わる。新たな、嘘発見器か。


「これでも私、モテモテなんだよ。年上ばかりだけど、チヤホヤされているんだよ」


 ナンシーは、自分のTシャツとブラを捲り。直接、大きな胸を押し付けた。


「昔みたいに、私を抱いてよ。優しくしてよ。お願いだから、キスしてよ」


「俺の背中の閻魔大王は、レーザーで、消えるかもしれない。醜く、跡は残るかもしれないけど、無くなるらしい」


 俺は、言葉を詰まらせながら。


「だけど、俺の過去は消えない。普の未来の為には、俺は邪魔な存在になる。足枷にしかならない。影で、援助するくらいで、表立って援助はしない。そろそろ、離れないと大事な時期になる。終わりにしよう」


 ナンシーは、蛇口を捻り。泡だらけの手を洗い。俺の背中の部分で、手を拭いて。

 少し、ずらして涙を拭いたのか。頭を押し付けて。

 俺のズボンの中に手を入れた。


「勃っているじゃん。私の体を使うか、変態叔父さん」


 嘘発見器では無かった。


 俺が、無視を続けると。


 俺のズボンから、手を出して。

 もう一度手を洗い。

 自分のブラとシャツを直して。

 コーヒーを手に、リビングへ向かった。


 リビングから、テレビの音が聞こえて。音のボリュームが上がるのを感じた。



 俺は、洗い物を早くする事も、遅くする事も出来ずに、丁寧に小指も洗った。


 洗い物を終えて、恐る恐るリビングへ向かうと。

 ナンシーの姿は無かった。


 俺は、テレビの音のボリュームを下げて。

 リモコンで、電源を切り。ローテーブルの定位置に戻した。


 冷めたコーヒーに、口を付けて、ソファーに深く座った。


 少し天井を見つめながら。沖縄に帰ってきて、天涯孤独に家族が増えたと、実感している。


 この1年半で、色々な事が有った。

 俺は、思いに老けた。

読んでいただき、有難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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