指と二千万
やはり、相良の身分で、黒井組の組長を、ボコボコにして。
事を収めようとした、若頭の小指を落とした。となると、大問題となり、前田も責任追及されて。鉢嶺組の組長は、謝罪せずろう得なかった。
俺は、小指を落とした後、2日間の休養を取り。
黒井組の事務所を訪れだ時に、鉢嶺組から荷物が届いていた。
「お疲れ様です、鉢嶺組からです」
アタッシュケースの中身は、二千万と、指が三本。
親指、小指と薬指だ。
全て相良の指で。右手が三本で、左手が一本の写真も添えてある。
前田には、二千万万の支払いが命令された。
鉢嶺組からは、鉢嶺組長直筆の謝罪の書面が添えられている。
内容は、相良の破門だった。
結局、菊乃の居場所は分からず。死体も出てこない。闇へと葬り去られた。
俺は、二千万の内の八百万を使い。
オヤジを会長に据えて、俺を黒井組の三代目に置いた。
いずれ、この黒井組みたいな弱小は、消えてなくなると悟り。
お金がある内に、俺が黒井組の三代目を名乗り。
俺が、黒井組の解散をさせなければ、ならなかった。オヤジの名に、泥を付けたく無かった。
オヤジの命が亡くなり次第、黒井組を解散させるつもりだった。
オヤジの体は、癌に蝕まれていた。
最初は、胃がんだったが、転移が見つかり。
段々と、体中に転移しているらしい。
余命、1年と言われたオヤジが、思いの外長生きして。
40の時に亡くなった。
お葬式を終えて、初七日と順に続けて、四十九日を終え、納骨をした。
ソープランドと事務所は、鉢嶺組に高く買い取ってもらい。
黒井組の島は、自然と譲渡した形になった。
本家と俺のマンションは、売り捌いて。最後まで残ってくれた、組員に退職金を渡した。
加奈が、16歳を過ぎて困らないように、800万を渡した。
800万が、ギリギリだった。思いの外、オヤジが長生きして、貯金が減っていった。
俺も、他の組員と同じ、80万を手にした。
全てが片付き、翌日に解散届を提出して。
晴れて、堅気の人になった、つもりだ。
堅気としての最初の日に、前田の息のかかった、喫茶店へ行った。
古びたアーケードの地下に、スナックの看板が片付けれられずに並び、狭い通路を狭くしている。
そんな薄暗い地下の一角に、小さな喫茶店があった。
客の入はまばらで、数人の営業マンが仕事をサボり、ゲーム機に夢中になっている。
薄暗い喫茶店の一番奥の席を陣取ると、相良が現れた。
「早く、黒井組の退職金を渡せ」
俺が席に着くなり、直ぐに現れた。だいぶ、お金にお困りのようだ。
「慌てるな。まずは、これを見ろ」
俺は、ボストンバックの中から、ホルマリンに漬けられた、相良の親指を取り出した。
「俺の指だ、返せ」
相良は、ゲーム機のテーブルに置いた瞬間。手を伸ばして来た。
「まだだよ、慌てるな、話を聞け」
俺は、ホルマリン漬けの瓶を置いたが、綺麗に指を離してなかった。
伸びてきた手から守るように、 先に奪い取り。
相良に、睨まれた。右手の指は、3本しか存在しない。
「これを、オークションに出したら、三十万の値が付いたんなよ。ウケるだろ」
相良は、ゲーム機の画面を、右の手の平で叩いた。
「ソレは、俺のだ。返せ」
「んなわけ無いじゃん。お前も、俺の指を売れば良かったのに」
「そんなモノ無いよ。持っているわけ無いだろ」
「残念だったな。コレは売れたんだよ、コレクターに」
「いいから返せ。あと、黒井組の退職金も、持って来い」
相良の手と目は、完全にガラスの瓶に向かっていた。
ゲーム機のテーブルに、左手を置いて、右手の指を伸ばし、瓶に触れた瞬間。
相良は、全身に高圧の電気が流れた。
テーザー銃だ。
この日の為に、わざわざ入手した。
相良は、全身の筋肉が硬直するほど、電気が走り、床で眠っている。
「流石は、海外でも禁止されている銃だ。威力がケタ外れだな。デンジャラスだけは、何となく読めるけど。後は、意味は分からん。多分、猛獣用なんだろう」
俺は、用意していたシガーカッターを、相良の親指に嵌めて。
思いっきり、シガーカッターを踏んづけた。
相良の親指は吹き飛び、遠くへ転がった。
俺は、そこで、ヘマをした事に気付いた。
タコ糸で、縛ってなかった。
わざわざ、100均で買ってきたのに、無駄になってしまった。
「あぁ、綺麗に掃除してないから、親指が、少し埃まみれになってしまった。でも、問題ないよね」
俺は、少し汚れた相良の親指を拾い上げて、近くにいた客の、お絞りで拭き取り。
ホルマリン漬けの瓶に足した。
ゲームを楽しんでいた客は、皆、ドン引きしている。
瓶の中に、相良の親指が2本並び。カウンターで一部始終を観ていた客に見せた。
「いいの。三十万だよ」
「いいの。サービス、サービス」
お客の男性は、コーヒーを残して。三十万を裸でカウンターに置いて。
コーヒー代を払わずに逃げた。
「え〜。これから、救急車を呼びます。警察も来ます。皆さん逃げてください。お代は、結構です」
店にいた客が、皆逃げた。
喫茶店の電話機を使い、救急車を要請した。
相良は、そのまま救急車で運ばれて。
俺は、前田のゲーム喫茶で、逮捕された。
裁判の結果、残忍無比と言われ、情状酌量の余地は無く、7年の刑が、言い渡された。
7年の間に、父親が亡くなり。完全に天涯孤独となった。
その時に、辺土名弁護士にあった。
もう一人、面会に来た人がいた。
本名を名乗ったから、全然知らなかったが。
現れたのは、牧姉さんだった。
今は、ご姿勢的に羽振りが良くなって、お爺さんたちのタンス貯金を、食い尽くしている。
牧姉と泉姉は、あの後出張ソープランド改め、雀のお宿、スペシャル・バブルコースなるものを作り、別料金を頂いていた。
障害者も同様に、スペシャルを望み。お客さんは増える一方て、雀のお宿の評判は全国的な、フランチャイズとなり。
お客を取れなくなった、ソープ嬢は路線を変更して、雀のお宿へ就職した。
一強を許さ無いのは世の常で、ライバル会社の花咲か爺さんは、泉姉が経営して。
2社は、裏で繋がだていた。
知らない人たちは、2社を行ったり来たり繰り返していた。
「もう、裏稼業は足を洗って下さい。雀のお宿の会長として、私の上に立たれて下さい」
「なんだよ、牧姉。藪から棒だぞ」
「静岡の田舎の方ですが、本社の施設が御座いますので。出所後は、必ずお立ち寄り下さい。心よりお待ちしております」
そう言って、牧姉は、帰って行った。
出所後は、相良が死刑囚となり、報復は無く。
加奈も、施設を卒業してからは、行方知れずとなっていた。
仕方なく、暇を弄んでいたから、雀のお宿へ行ってみた。
俺を待っていたのは、酒池肉林の世界だった。
老人ホームとは、名ばかりな施設で。
老害用の、風俗施設だった。
昼間から、酒を飲み。ナースステーションの中で、事を始めている爺さん達。
覗いて、楽しむ輩もいる。
そこの経理に、なっちゃんはいた。
下積み時代に、あろう事か、なっちゃんのオシメも、交換した事があった。
本人は、恥ずかしそうにしているが。
美雪姉さんの娘だ。
読んでいただき、有り難うございます。
高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。