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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
23/50

過去とヤクザへの道

東江は、この家を出た頃の話から始めた。

横浜に移り住み。川崎の黒井組に、拾われた話を始める。



 俺は、16歳までここで暮らしていた。


 父親は、他所に女を作り。

 母親は、パート出で忙しなく働いていた。

 祖母は、母親の財布から金を抜き取り。

 爺さんは、見て見ぬふりをしてる。


 俺は、間違いなく、この家の子だった。

 爺さんのように、見て見ぬふりをして、バイトに明け暮れていた。


 父親が、女を家に連れ込み、事件が起きた。


 母親が、離婚を父親に突きつけて

 俺は、母親の方に付いた。


 コレには、家族皆が、驚いた。


 一人っ子の俺は、絶対に残ると思われていたからだ。


 父親は、俺を勘当して。


「連れ込んだ女と、何人も子を成すからいい、出ていけ」


「言われなくても、出てくよ」


 俺は、母方の横浜へと引っ越しをした。


 その頃は、ちょうど沖縄ブームで、転校してもチヤホヤされたが。

 バイトを始めてからは、学業は疎かになった。


 バイクの免許を取ってからは、朝に起きれなくなり、一限目から席に座っているのが珍しく、午後からの登校もあった。


 そんなこんなで、ギリギリ高校を卒業して、喫茶店、スナックのボーイ、ソープランドの呼び込み。

 チンピラまがいの事もした。


 21で、初めてお務めをした。


 ソープ嬢にストーカーが付きまとい、2人の嬢が狙われた。


 一人は、当時ナンバーワンの牧姉さん。

 もう一人は、ナンバーツーの泉姉さん。


 仲が悪かった理由では無かった。

 時間帯も違っていたし。


 何度も、被害届を出したが、事件性は無いと判断されて。


「ソープ嬢だから、悪い」


 逆に、こちら非があるみたいに言われた。


 そして、事件は起こった。


 明ら様に、ソープランドの前に現れて、泉姉の帰りと、牧姉の出勤の邪魔をしているので。口論になり、俺が手を出した。


「お客さん、困ります。何度も、出禁と申しています。帰って下さい」


「福屋みどりさんは、何処に引っ越しをしたんだよ。知っているんだろ」


「困ります。帰って下さい。警察を呼びますよ」


「それなら、金払うから牧さんに会わせろ。客として会うんだから、問題ないだろ」


「大有りです。お客さんでもありません。出禁と、何度も申し渡しています。お引き取りください」


 俺は、ストーカーと揉み合いになり。

 タイミングが悪く、泉姉を乗せた車が到着した。


 ナンバーワンとツーと言っても、名ばかりで。

 大きな、ソープランドでもないし。

 アイドル級に、可愛いわけでもない。


「榊原さん、横浜の中華街近くのマンションに引っ越ししたんだよね。コレ、引っ越し祝い」


 ストーカーは、銀行名の入った封筒を掲げて、泉姉さんへ手渡そうとしている。


「いい加減にしろ」


 俺は、拳を振り下ろしていた。


 その場は、ストーカーが去って一段落したかに思えたが。

 後日、弁護士を連れて現れた。


 ストーカーの要求は、2人の住所を教えろだった。

 俺は、それを拒み。


 ソープのお金を50万を取り、俺の通帳から60万を、合わせて110万を2人に渡して。誰の物かも分からない軽自動車に、2人を乗せて逃がした。


 ストーカーは、小突いただけなのに。

 偽の診断書を出して、100万を要求された。


 俺は、黒井組に150万の借金をして。

 2年のお務めの後、黒井の親父から盃を頂き、住み込みで働いた。


 事務所の掃除と、食事の世話、使い走りまで、何でもやらされた。


 24の時に、沖縄に帰って来た。


 祖母は、昴が帰ってきたと喜び。

 爺さんは、奥の部屋から出て来た。

 父親は、背を向けて新聞を読んでいた。


 俺は、外から家の中に入らず、母親が死んだ事を告げて。

 ヤクザになった事を、報告した。


 1年後の25の時に、小さな抗争が起きて。組の為に、2年のお務めした。


 カチコミを受けて、事務所の前でバットを振り回し、警察に捕まった。


 警察が来て、襲撃は失敗に終わり。

 黒井組は、守られた。


「絶対に、事務所の中に入れるな。今、ガサ入れされたら、皆捕まるぞ」


「山田、寺内、東江は、表で暴れて来い。刃物は、絶対に持ち出すなよ。バットと木刀だけにしろ。捕まっても、お土産と草野球用と言え。分かったな」


 一番若手の俺が、バットを持ち、先陣を切らされた。

 あの頃は、鍛えていた訳ではなく、ガリガリだった。


 「かっかて来いよ。黒井組の島だぞ、分かっているのか」


 相手も、刃物は持たされて無く。

 黒井組の島の外で、薬を売買した事が原因だった。

 完全に、前田と相良が犯人だった。


 この時の前田は、若頭で。相良は、若頭補佐をしていた。


 二人とも、カチコミに怯えて。黒井組事務所には、葉っぱや覚せい剤が、隠されていた。


 俺らは、そんな事知らずに、黒井組の看板を守っていた。


 27の出所祝いは、派手に行われて。

 ここから、ヤクザとしての出世街道に乗る。


 本家の住み込みとなり、菊乃お嬢様の世話係となった


 異常な程に、菊乃お嬢様との時間があり。

 菊乃お嬢様も、積極的にグイグイ来る。


 身分を弁えて居たつもりだったが。

 半年も持たずに、親父に頭を下げて。菊乃お嬢様との、恋愛が始まった。


 週に一度、日帰り温泉へ行き。

 月に一度、お泊りもこなした。


 気を使い、避妊もしていたが。

 菊乃お嬢様が、妊娠をした。


 俺は、まな板と出刃包丁を手に、組長室の戸をノックした。


「誰だ」


「東江です」


「入れ」


『ガチャ』


「菊乃お嬢様を、妊娠させてしまいました。申し訳ありません」


 俺は、その場で土下座をして、まな板と出刃包丁を、手前に置いた。


「ちょっと待て。勝手に落とすなよ」


 親父は、筆を執り。真剣な表情で、筆を下ろし。

 ブツブツ言いながら、何枚か、紙を無駄にしていた。


「やっぱり、コレだな。東江桃彦」


 命名の大きな紙に、桃彦の字が、垂れていた。


 ニコニコ顔の親父に対して、俺の顔は、死相が出るほど、青かったと思う。




「ちょっと待ってよ。東江さん、アナタ無精子症じゃないの。何で、子供ができるのよ。パイプカットじゃないわよね」


 京子が、昔話の途中で止めた。


「えっ。無精子症って何。なんの事」


 ナンシーが、戸惑っている。


「アナタ、人の話を聞いてなかったの。種無しの話、裏でしたわよね」


 京子は、診断書をナンシーに渡した。


「えぇ〜。次は、女の子が、欲しかったのに」


 ナンシーも、思考がぶっ飛んでいた。


「私は、愛が起こす奇跡が起こると、信じてますよ。パパ、ねぇ」


 朱美には、理屈が通用しないと思った。


「大丈夫。オチもあるから」

読んでいただき、有り難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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