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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
18/50

前田と東江

俺は、昭和のマンガみたいなリンチを受けて、気を失った。

前田と再会をして、煮え湯を飲まされたような、過去を思い出した。



 俺は、バイクを降りると、その場で佇んだ。

 逆に、宮城は、黒塗りのレクサスに向かって走り出した。

 宮城が、後部座席のドアの前で、頭を下げると。真っ黒いフィルムが張られた、窓ガラスが下がり。


 宮城は、ドアに近寄り、伺い立てた。


「前田さん、東江を呼んできました。これで宜しいですか」


「あぁ、ご苦労さん」


 前田は、宮城を労い。そのまま窓を、閉めようとした。


「前田さん、待って下さい。葉っぱを下さい」


「あぁ、忘れてた。だけど、東江を痛めつけて、『病院送りにした』って言っていたけど。俺の目には、ピンピンしているように見えるけど、気のせいか」


「良く見て下さい。右手にギブスしてます。病院送りにしました」


「最近のガキどもは、相手に、コブを作ったら、半殺しになるのか。腕一本、折ったくらいで、いい気になっているのか。立てないくらいするんじゃないのか。あ゙~」


「分かりました」


 宮城は、振り返り。


「あのオッサンを、袋叩きにスッぞ」


「「「「イェー」」」」


「もう、逃げられないぞ」

「今朝の借りを、返すは」

「死ね、オッサン」


 俺は、バイクを見たが。右手が使えない。

 ガキどもは、角材やらバットやら、道具を手にしている。


『東江、ピ〜ンチ』


 取り敢えず、横に止まっている宮城のバイクを蹴り倒した。


 次に、逃げながら、ポケットの中の万札や小銭をぶち撒けて、時間稼ぎを図った。


「万札だぞ。ラッキー」

「追えよ。バカ」

「痛ぇな宮城。殺すぞ」


 宮城と数名が、追いかけて来た。

 だが、半数は、小銭も拾っている。


 ガキどもとの距離は、離れる一方だったが。

 バイクを出された。


『あぁ、今朝の轍を踏んだ』


 それだけでは、無かった。2人で、バイクには乗り。漁網を携えている。


 俺は、簡単に捕まる雑魚だった。


 昭和のマンガみたいに、漁港の中を引きずられながら。ターンする度に、クルクルと回り壁にぶつけられた。

 それを数回耐えて、意識を失った。


「おい。死んだんじゃねぇ〜のか」

「どうでもいい。金目の物を探せ」

「持ってねぇな。死ね」


『ドカ』


 俺は、蹴りを入れられて、意識が戻った。

 体の至る所を擦りむき、ジャージは、ボロボロになっている。


「よぉ〜いい男、生きてるか」


 様子を見に来た、前田が声をかけた。


「ご無沙汰したます。前田の兄さん。相変わらず、人をコケにしてますね」


「今回は、俺の性じゃないぞ。お前が悪い、自業自得だ。あのナンシーから、手を引け。それだけだ」


「何ッスか。ナンシーさんが、かかわっているのか。少し見えてきた」


「お前は、何も考えなくて良いんだよ馬鹿。これ以上関わったら、命を落とすからな。分かったか」


 割って入る、宮城のバカ。


「前田さん、例のモノを下さい。お願いします」


 前田は、振り返り。頭を下げる宮城の頭を叩いた。


「空気を読め。バカなのか」


 前田は、車の運転手に向かって。


「コイツラに、ご褒美の袋を渡してやれ」


 運転手は、後部座席のドアを開けて、コンビニ袋を手にした。

 宮城たちは、レクサスと走り。運転手にも、頭を下げている。


「東江、返事はどうした。ナンシーに、手を出すなよ。生きていたいだろ」


「生きていたいけど。前田の兄さんが、関わっているなら、とことんナンシーさんに、関わらさせていただきます。俺も、兄さんに恨みが、残っているんですよ。お忘れですか」


「アレは、事故みたいなもんだろ。やる事やったんだから、ガキが出来ちまったんだよ」


「俺は、忘れてませんから」


「いいから、忘れろ。ナンシーの事も、忘れろ。分かったか」


『ドカ、ドカ』


 腹に、体重を乗せた踵が2回降ってきた。

 体が、2回くの字に曲がり。

 胃液を吐いた。

 何も入っなかったから、胃液しか出なかった。


「兵隊は、イッパイ居るんだよ。分かってんだろ」


「相良の後釜は、ガキどもですか」


「あぁ、いいコマだぞ。ガキでも、女でも、葉っぱやコカインで、言うこと聞いてくれるぞ」


「相変わらずの外道ですね」


「何とでも言え。上に立つやつが偉いんだよ。兵隊は、俺の言う通りに動くだけで、褒美がもらえる。ウィン・ウィンじゃねぇか。誰も、文句言うわけないよ」


 前田は、動けない俺にツバを吐き。


「スナックナンシーが、軌道に乗ったら、ナンシーとガキを、迎えに行くから。素直に、渡せよ。それまでは、自由にさせてやる。女の喜ばせ方も知らない、タネナシには、縁遠い話だけどな」


 ガキどもは、葉っぱをすいに消えた。

 前田も、俺に忠告をして。レクサスに乗り込み。


 ズタボロになった俺は、一人だった。


 ガキどもに、スマホを奪われて。辺土名弁護士や金城くんも、呼べずにいると。


 真琴が現れた。

 涙を流して、謝罪をしている。


「ごめんなさい。私が、お金を盗んだから。バイクを、欲しがったから。こんな事になって。本当に、ごめんなさい」


「バカ、死にたいのか。相手はヤクザだぞ。早く逃げろ」


「ごめんなさい。ごめんなさい」


「だから、もういい。ヤツらは、お前を道具としか扱わない。ここから早く逃げろ。捕まったら、AVやソープに沈められるぞ」


 俺は、誠を逃がそうとしたが。真琴は謝罪をするだけだった。


「分かった。救急車だけ呼んでくれ。お金の事は、心配しなくてもいい。この事と、お金の事は、関係無い。本当だ」


 救急車で、真琴の態度が変わった。


「オジサン、お金は必ず返すから。皆には。お母さんには黙ってて。お願い」


「何でもいい、黙っててやるから。ここから離れろ。取り返しの付かないことになるぞ。分かっているのか」


「お願いね。お母さんには、内緒にしてて」


 真琴は、漁港から走り去った。

 俺は、真琴がどのようにして漁港に来たのか、知る由もなかった。


 漁港に、救急車が到着して。


「どうされましたか。人が倒れていると通報があったのですが」


「東江さん、救急車はタクシーでは無いのですよ。世間で問題になってるのは、ご存知ですよね」


「あぁ、タクシー扱いしてないよ。頼むから、病院へ連れてって下さい。お願いします」


「宜しい。今朝は、素直じゃなかったですからね」


「そうそう、気分が悪くなった。萎えた」


「済まなかった。許してください」


「一刻を争うケガではないでしょ」


「だけど、これ酷いね。若者からリンチを受けるなんて。何をしたの東江さん」


「何もしてない。一方的に、難癖付けられただけ。俺は、被害者なの」

読んでいただき、有り難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。

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