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タネナシとキュウコン  take2  作者: 愛加 あかり
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診断書と後出しジャンケン

東江は、朱美をビッチにして。信也を追い込んで行った。

白い封筒から、無精子症の診断書を取り出し。

「あの子は、俺の子だ」と言った。



「1200万で、宜しいですか」

 俺は、朱美に確認を取った。


 寝室からのクーラーの風が、皆のいる部屋に流れ。今まで使っていた扇風機は、キッチンにいるバイト君たちに当てられている。


「はい。コチラにサインをすれば宜しいのですか」


 羽瀬の両親は、朱美から600万円の借入したことにして。比嘉朱美のサインとハンコが加わり。

 書面の空白が埋まっていく。


 辺土名弁護士が、不備が無いかと確認をして。羽瀬の両親へと渡された。


「何が借用書だ。こんなのが、まかり通るはずがないだろ」


 父親が、不満を漏らしたが。


「ご不満があるのなら、裁判でも、何でもしたら良い。俺たちは、階段を昇降する動画を提出して。息子さんがした事を、ネットで喋るだけです」


 俺は、信也を指して言い放ち。

 父親は、テーブルの下で、握りこぶしを作っている。


「こいつが、殺人未遂で捕まり。胎児を殺害した事には、変わり無いのですから。身勝手で、残忍過ぎる。情状酌量は、先ず望めないと覚悟して下さい。初犯でも、4、5年のお勤めは、覚悟することだな」


 俺が、沖縄に帰って来なければ。

 防犯カメラを設置してなければ。

 金城くん以外に、頼んでいなければ。


 他にも色々あるかも知れないが。

 偶然が重なり合った出来事だ。


「それは困ります。600万は、必ず払いますから。穏便に済ませて下さい。お願いします」


 母親が、頭を下げて懇願した。


「こんな事が、田舎で広まったら。住む家がなくなってしまいます。村八分で、誰も相手してくれません」


 俺が、黒煉の車で挨拶したのも、そのせいだった。


 方向音痴のふりをして、村の人々に羽瀬の家の場所を聞いて回っている。

 心配した人々が、羽瀬の家に連絡を入れた。


 羽瀬の両親たちは、俺を探して。迎えにまで来てくれた。


 母親が、書類をたぐり寄せて。自分の名前を書いた。

 羽瀬家の名前に、泥を塗りたく無く。

 相手はヤクザだ。万が一の事が有れば。

 私が家を出れば、問題は無くなる。

 馬鹿な息子を、世に出した私の責任だ。


 父親も、何人もそんな家庭を見て来た。

 ある日、ヤクザが怒鳴り込んで来て、家族が崩壊して。離散する光景を、何度か目の当たりにしている。

 その番が、家に回って来た。


 母親は、書類にサインを終えて。辺土名弁護士に、書類を渡した。


 辺土名弁護士も、名前を確認して。一部を回収して。カバンの中にしまった。


 3人は、安堵の表情を浮かべたが。東江は、隠し持っていた、白い封筒をテーブルに置いた。


『琉聖病院』とだけ、記入されている。


「比嘉さんが、1200万しか取らないのなら。俺が、それ以上取る理由には、行かなくなったな」


 誰も触れないので、自ら病院の診断書を開いて見せた。


「俺は、この診断書の通り無精子症だ。子供がなかなか出来ない体だ。せっかく出来たのに、信也さんが、俺の子を殺したかも知れない。俺は、800万を、信也さんに請求する」


 辺土名弁護士が、カバンから数枚の書類を、テーブルに出した。


 父親が、狂ったかのように、両手でテーブルを叩いた。


 帰らなかったバイト君達が、次々に立ち上がり。


「何を、言っているんだ。朱美の子は、俺との愛の結晶だ。嘘を付くな」


 金城くんが、オーバーアクションで訴えた。


「違う、違う。絶対に俺の子だ。お腹が目立つ前に、写真でもと。ブライダル会社に、予約を入れていたんだ」


「俺は、大学を辞めて、朱美を幸せにすると決めたんだ。就活の真っ最中だ」


 別な、バイト君が名乗りを上げて。


 トラブルが起きた。


 「………」


 島袋くんが、勢いを止めた。

 立ち上がったまでは、良かったが。言葉が出て来なかった。


 モジモジしながら、言葉が出てこない。

 静けさが、島袋くんを余計に緊張させた。


 「おい、こんな茶番は辞めろ。こんなモノに、ビタ一文出せる理由ないだろ」


 父親が、口火を切った。


 そんな時に、朱美がスッと席を立ち。島袋くんに近付いた。


 これは、台本に無い演出だった。アドリブで、乗り切らないと、行けなかったが。

 問題児の朱美が立ち上がり。

 追加の報酬を諦めようと思ったが。


 朱美が、島袋君に対して。大人なキスを演出した。


「島袋くんには、そのままで居て欲しいの。私が稼ぐから、島袋くんは大学で勉強していて」


「うん」


 島袋君は、頷くだけで。顔を赤らめ。

 朱美は、自らをビッチに落とした。


「朱美。許さんぞ、そんなオタクみたいなヤツとだなんて」


 イケメンが嫉妬して、暴言を吐き。

 隣りに居た父親が、信也の顔面を殴った。

 

 信也は、横に倒れ。母親に、勢い良くぶつかり。

 母親が、涙を流しながら、キレている事にやっと気付いた。


「彼らも、将来を棒に振ろうとしていたので、訴えを、取り下げてもらう為に。お一人、400万を請求するそうです」


 辺土名弁護士が、4部の借用書に金額を記入して、テーブル並べる。


「追加の2400万を、請求させて頂きます」


 これ迄は、想定の範囲内だ。少しトラブルも有ったが。結果往来で、台本通りに順調に来ている。


「これ以上、父親が増えないと、約束していただけますか」


 身の振り方を考えないといけない母親が、一つの穴を発見した。


「お約束しますよ。その馬鹿を、私どもに預けてくださればの話ですが」



 父親が、顔を手で覆う信也を殴ろうとして。東江が止めた。


「顔を殴るのは、辞めてもらえますか。大事な商品なので」


 父親は、手を止めて。母親は、目を赤くしながら、東江の方を見た。


「猿芝居は、辞めて下さい。今回の今治視察で、興信所が知らない事が出てきました」


 両親は、固唾をのんで。信也は、震えはじめた。


「俺は、今治で沢山の人に声をかけて、森吟村長に出いました」


 今度は、母親が、テーブルを叩いた。

 清楚そうな顔は歪み、父親は信也を見下ろしていた。


「諦めろ、森吟村長の一人娘との縁談は、既に決まっている。婚姻関係が決まれば、200万。式を挙げたら、300万。年内に、決まれば。追加の300万が、約束されて。ホテルに、予約も終えている」


 父親は、握った拳を開き。信也の肩に添えた。

 母親は、悪足掻きが出来ないことを知り。信也を、蔑む目で睨んだ。


「一番大きな屋敷を訪ねたら。お前の事を、婿殿、婿殿と語り。これから、莫大な借金をすると言ったら、助け舟を出してくれるそうだ。中身は腐っていても、外見が良いと、お金になる」


 俺は、森吟村長の親子写真を、アイパッドの画面に出した。


「男の子が生まれる度に、800万出して下さるそうだ。女の子でも、500万を約束してくれた。三兄弟で、親孝行できて借金の返済もできる。よかったじゃないの。ねぇ」


 バイト君たちは、娘の顔を見て引いていた。


 信也が、逃げ出そうとしたが。

 バイト君たちに、取り押さえられ。


 借用書に記入させて。地獄に落とした。


「地獄の沙汰は、金次第」


 俺は、閻魔大王をしまい。

 信也を、自宅のガレージに監禁した。



 朱美に、600万立て替えて渡し。


 辺土名弁護士に、100万を渡した。

 本人は、3200の1割を取る気でいたらしいが。

 簡単な書類を作らせただけだ。100万でも、高すぎると、思った。


 金城くんには、60万を支払い。バイト君たちは、30万で口止めをした。


 興信所に、120万を支払い。

 旅費と経費で、30万を使った。


 残った2000万は、天音ちゃんの金だ。


 「あの歳で、俺のように、天涯孤独になる所だったんだから。2000万は、妥当だ」



 余談だが、信也は、森吟村長の娘と結婚をして。お腹には、お子さんも授かっている。


 美人は、3日で飽きるが。ブサイクは、3日で慣れる。



 その後、天音ちゃんが俺の事を、『パパ』と呼ぶようになった。

読んでいただき、有り難うございます。

高評価、星とブックマークを、宜しくお願いします。


強引に纏めました。後出しジャンケンでした。

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