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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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097.好き

 月曜日の武官の日はランディが、火曜日の文官の日はディーンが、夜会に現れた変態について心配してくれた。

 同時に護身術がすごかったと聞いたと揶揄われたけれど。


 街では鳥族プチィツァ国、熊族ミドヴェ国、豹族レパード国と友好国になったことがウワサになっているとナイトリー公爵が教えてくれた。


 もう武官や騎士が争いで命を落とすことはないし、街も被害を受ける事がなくなったとみんな喜んでいるそうだ。


 熊族ミドヴェ国、豹族レパード国の店もすぐに出店準備にかかるので、事務所がまた2軒も取られると言いながらも嬉しそうにナイトリー公爵は笑った。


「今週の土曜日に召喚者を国境で引き渡すと連絡があったよ」

 コヴァック公爵はやっぱり国家予算5年分はムリだったねと笑っていた。


 ロウエル公爵は熊族ミドヴェ国のアービン公爵と意気投合。

 新しい作戦を思いついたと画策中だそうだ。


 慰謝料をもらったら、きっとチェロヴェとも友好国になるのだろう。


 あーあ。

 あと1週間、アレクが好きだと気づかなければよかった。

 そうすれば、街で一人暮らしになっても少し寂しいな。くらいですんだのに。


 ヒナは窓からぼんやりと外を眺めた。



「……なんだかずっと元気がないな」

「アレク様もそう思いますか?」


 夜会以来、なんとなく元気がないヒナ。

 武官や文官の仕事は普通に行っているし、食事も普通に食べてはいるが。

 ふとした瞬間に見せる寂しそうな表情は何だろうか?

 まだ夜会の恐怖が残っているのだろうか。


「ユリウス、休憩していいか?」

「えぇ。かまいませんよ」

 アレクサンドロは狼の姿になるとヒナの部屋へと遊びに行った。


「……アレク?」

 時計はまだ午前10時。


「サボり?」

 お兄様に怒られるよと笑うヒナの足に擦り寄ると、アレクサンドロはお座りをしてヒナを見上げた。


 今日もヒナは眼鏡をしていない。

 履いているのは不思議なズボンだ。

 日曜日に夕飯も忘れて夢中で作っていた服だな?

 

 アレクサンドロの綺麗なグレーの眼と目が合ったヒナは、ブラッシングする? と微笑んだ。


 部屋のど真ん中に寝転がるアレクサンドロ。

 ヒナはブラッシングセットを棚から取ると、アレクサンドロの横に座った。


 櫛で背中を梳くと綺麗な毛並みに線が付く。

 黒と濃いグレーのメッシュだ。

 首の後ろは少しふかふかなので、細かい櫛で丁寧に。

 三角耳の後ろをぐりぐりマッサージすると、耳の先がピクっと動いた。

 尻尾はふさふさで、足の先は少し白くて。

 肉球もぷにぷにで可愛い。


「グァウ?」

 普段触らない肉球を触られたアレクサンドロが振り返る。


「イヤだった?」

 ごめんねと言ったヒナの顔は少し泣きそうに見えた。

 狼のアレクサンドロは起き上がり、ヒナの口をペロリと舐める。


「あ! アレク、スナック菓子食べたでしょ」

 ほのかに香るジャガイモっぽい匂いは、きっとあのお菓子。

 朝から食べたの? とヒナは笑った。


「そろそろ戻る?」

 一緒に向こうの部屋に行こうかとヒナが言うと、狼のアレクサンドロはグァウと返事をした。


 少し先を歩き、振り返りながらヒナを確認するアレクサンドロ。

 まるで森を2人で歩いたときみたいだ。


 またヒナの顔が泣きそうになる。

 アレクサンドロは立ち止まり、ヒナを見上げた。


「ん? どうしたの?」

「グォウ」

 そんな顔をしているって気づいていないのか?

 何があったんだ?


 聞きたいけれど、狼の姿ではヒナには通じない。

 アレクサンドロは執務室を通り過ぎ、奥の部屋で着替えた。

 執務机の前を通り過ぎ、ユリウスの横を通り過ぎ、本棚を眺めているヒナの所へ一直線に進む。


「アレク様?」

「アレク?」

 ヒナの手を捕まえ、再び奥の部屋へ向かうアレクサンドロに、ユリウスもヒナも驚いた。


「あれ? 仕事は? アレク?」

 ユリウスの方を振り返りながら確認するヒナ。


 アレクサンドロは自分のキングベッドにヒナを押し倒すと、ヒナの上からグレーの眼でじっと見つめた。


 ふかふかのベッドにヒナの身体が沈む。


「えっ? アレク? どうしたの?」

 困惑するヒナ。

 仕事に戻るのだと思ったのに、着替えてなぜこの状態になったのか。


「ヒナこそどうした」

 なぜ泣きそうだと聞くアレクサンドロ。

 眉間にシワを寄せ、俺には相談できないのかと言いそうだ。

 ヒナは困った顔で微笑んだ。


「土曜日。チェロヴェから慰謝料をもらったら、街で一人暮らしかなーって」

 ちょっと寂しいなって思っただけだとヒナが言うと、アレクサンドロは驚いた顔をした。


「街……で暮らすのか?」

「安全になったら、ここにお世話になる理由がないよね」

 泣きそうな顔は、喜んで街へ出ていくという顔ではなく、行きたくないけれど出て行かないといけないと思わせるような顔だ。


「ここにいればいい」

「でも」

「ずっといればいい」

 アレクサンドロのグレーの眼が揺れる。


 ヒナは手を伸ばし、アレクサンドロの髪に触れた。


 狼のアレクサンドロはよくブラッシングしているが、人の姿の髪を触る機会はない。

 黒と濃いグレーのメッシュ。

 黒い部分の方がグレーより少し硬い。


 目は綺麗なグレー。

 整った顔。


 あぁ、イケメンだなぁ。


 眼鏡をしていないヒナの黒い眼が揺れた。


 見つめ合うと口づけが降りてくる。

 唇が触れ、舐められ、角度を変えた口づけが続く。


「好きだよ、ヒナ」

 口づけの間に囁かれる言葉。


「好きだ」

 だからここを出ていかないでくれと言うアレクサンドロ。


 ヒナはアレクサンドロの首に腕を回しながら、ありがとうと呟いた。

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