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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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95/100

095.ダンス

 夜会は何も食べることができなかったので、ユリウスが夕食を準備してくれた。


 夜会はあと1時間程続き、飛んで帰ることができるプチィツァ国の国王とフィリップ以外は、今日この王宮に泊っていくそうだ。


「先ほど、豹族レパード国レイナード殿下と熊族ミドヴェ国ナット殿下より、明日もし可能ならば国に帰る前に会いたいと申し出がありました」

「ヒナと?」

「アレク様とです」

「俺と?」

 ヒナに会いたいならばわかるが、俺と会いたいとは。

 アレクサンドロはユリウスにわかったと返事をした。


「何時ですか?」

「11時に約束を。昼食をご一緒できればと予定を組みました」

 ヒナの質問に手帳を広げながら答えるユリウス。

 ヒナは朝からクッキーを焼くので、王子達に手土産として持たせてほしいと頼んだ。


「わかりました。では、私はエリスと帰りますので、失礼しますが大丈夫でしょうか?」

「あぁ」

「はい、お兄様。今日はありがとうございます」

 テキパキと最終チェックをして去っていくユリウス。


「今ならまだエリスとラストダンスが間に合うからな」

 遅くまでユリウスを引き留めて悪かったなとアレクサンドロは目を伏せた。


 そうか。

 ラストダンスもあるのか。

 お兄様とエリスお姉様のダンスは優雅だろうな。

 美男美女だし。


「……踊ってみるか?」

 部屋なら誰も見ていないし、下手でも良いだろうと言うアレクサンドロ。

 手を差し出され、ヒナはゆっくりと手を取った。


 曲は聞こえない。

 部屋も踊るには狭い。


 アレクサンドロはヒナの腰に手を添え微笑んだ。

 ゆっくりと動き出すアレクサンドロ。


 曲はないけれど、練習の時に聞いた曲が頭で流れる。

 ダンスの先生よりもホールド感が強い。

 引き寄せられ密着しそうになる。


「ヒナ」

 名前を呼ばれて見上げると、グレーの眼が優しく微笑んだ。


 狭い部屋でもぶつからずにリードできる余裕までありそうだ。

 さすが王子!

 曲はないけれど、ダンスフロアでもないけれど、アレクサンドロと踊れたのは一生の思い出だ。

 

 あぁ、吊り橋、恐るべし。

 ドクドク跳ね上がる心臓を誤魔化すかのようにヒナはアレクサンドロに微笑んだ。


「ほわっ?」

 グイっと腰を引かれる手が強くなり、ヒナの顔がぽふんとアレクサンドロの胸に当たった。


 見上げるとグレーの眼と目が合う。

 ダンスを踊る足はいつの間にか止まっていた。


 見つめ合い、キスまであと20㎝。

 アレクサンドロとヒナの身長差だ。


 そっと唇が触れ、ヒナは目を閉じた。


 吊り橋効果は自分だけではないらしい。

 おそらくアレクサンドロも吊り橋の魔力にかかっている。


 息ができないほど貪るようなキスを繰り返した後、ようやくアレクサンドロの唇はヒナから離れた。


 急に恥ずかしくなったのか狼の姿になり、服をプルプルと脱ぐ。

 ペロリと舌なめずりする姿が急に色っぽく見えた。


 ヒナは座り込み、狼のアレクサンドロの三角耳の後をグリグリする。

 気持ちよさそうに目を細める狼のアレクサンドロにヒナは微笑んだ。


 いつものように2人でヒナのシングルベッドへ。

 眼鏡とヘアゴムを外し、ベッドの横に置く。


 まだ赤い首を狼のアレクサンドロはペロリと舐めた。


「くすぐったい」

 くすくす笑うヒナ。


 この細い首に噛みつきたい。

 狼のアレクサンドロのグレーの眼が揺れる。


「変態のせいでグチャってしちゃったけれど四国が調印ってすごいね」

 ヒナがもふもふのアレクサンドロに擦り寄りながら話すと、アレクサンドロはグゥと喉を鳴らした。


「安全になったらアレクと街に行ったり、南広場の芝生で寝転がったりできるかなぁ」

 祭りも行きたいねと言うヒナ。


「グァウ」

 行きたいと言ってくれたのだろうか?

 ヒナは狼のアレクサンドロの毛並みのいい背中を撫でた。


 俺と街へ行ってくれるのか?

 芝生で寝転ぶ?

 祭りも行きたいぞ。

 アレクサンドロのふさふさ尻尾が揺れる。


「今日はありがとう……」

 暖かい狼のアレクサンドロの身体にくっつきながらヒナが眠る。


 今日は怖かっただろう。

 ヒナの首はまだ赤い。

 護身術をロウエル公爵に習ったなんて知らなかった。


 曲はないがダンスも踊った。

 踊れないと言っていたがたぶんゆっくりな曲なら踊れるぞ。


 口づけも拒まれなかった。

 婚約者候補だから今日は特別か?


 慰謝料はうまくいくだろうか。

 ヒナの望みは叶うだろうか。


 アレクサンドロは眠るヒナに擦り寄るとゆっくりと目を閉じた。


 翌日はアレクサンドロのみ王子達と昼食会に。

 フィリップも参加し、四国の王子の食事会となった。


 別室では四国の国王の食事会を開催。


 さらに別室ではチェロヴェ国も入れた五国の公爵の食事会が開催され、それぞれ有意義な時間を過ごすことができた。



「チェロヴェのある公爵によると、召喚者引き渡しの方向で慰謝料を検討しているそうだよ」

 コヴァック公爵は国家予算5年分は無理だからねと笑う。


「慰謝料を払ったら友好国にしてくれるかと聞いてきたな」

 流石に結界があっても1対4では不安だろうとロウエル公爵も笑った。


「チェロヴェの宰相が引き渡しを国境にしたいと言ってきた。まだ何か企んでいるかもしれんな」

 宰相の言葉にロウエル公爵は想定内だと微笑む。


 おそらく結界の中にヒナを引き込み、狼族が手出しできないようにするつもりだろう。


 これに備えイワライの髪を銀に変えた。


 ロウエル一族は魔力が高く、結界内でも5分程度なら姿を保つことができる。


 現在戦えるロウエル一族は分家も併せて9人。

 そのうち魔力が一族で最も高いランディなら10分は姿を保てるだろう。

 ここに狼に姿が変わらない銀髪のイワライを加えれば、時間稼ぎは無駄だとチェロヴェは焦るはずだ。


 イケオジ3人は紅茶を飲みながら作戦の確認と、各国の協力体制について情報を共有した。

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