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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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094.吊り橋

 いつもそうだ。

 みんな遠巻きに俺を見て、いつの間にか守られて、解決して。

 何事もない日常が続く。


 ヒナと会ってからは毎日楽しかった。

 ヒナが日々の出来事を教えてくれて、ランディやディーンは俺が知らない街の様子を教えてくれて。

 

 イワライを家庭教師にしたのも同じ理由だ。

 俺に遠慮することなく、普通の暮らしを教えてくれたから。

 みんなの当たり前を教えてくれるから家庭教師に任命した。


 結局、ヒナも俺には何も言わない。

 作戦も秘密だと言い、何をしているのか知らない。


 俺など不要なのだ。


 ユリウスから目を逸らし、何も言わなくなったアレクサンドロ。

 コヴァック公爵からは落ち着いたというよりも諦めたように見えた。


 いずれ国王になるアレクサンドロ。


 感情を表に出してはいけない。

 自分の意見を押し通してはいけない。

 何かに固執してはいけない。

 慣れ合ってはいけない。


 幼い頃からそう教育されてきた。

 

 知りすぎてはいけない。

 情報も遮断され、外出も許されず、接触する人も制限される日々。

 それでも国のために我慢しなくてはならない。


 もう大丈夫だから離してくれと言うアレクサンドロをユリウスはゆっくりと離す。


「ユリウス、フィル達にはヒナは怪我もなく大丈夫だと伝えてくれ。コヴァック公爵は国王陛下に」

 このまま下がると伝えてほしいとアレクサンドロは言った。


「畏まりました」

 ユリウスがフィリップ達に、コヴァック公爵が国王陛下に伝えに行く。


「さぁ、部屋に戻ろう」

 ヒナに手を差し伸べ微笑んだアレクサンドロの笑顔は公務モードだった。


「……アレク?」

 様子がおかしいアレクサンドロに声をかけても特に返事はない。


 エスコートされながら部屋まで戻り、5分ほどでやってきた侍女たちにドレスを脱がせてもらう。

 アレクサンドロにもらったダイヤモンドのネックレスとイヤリングはケースに。

 蝶のバレッタはいつものようにベッドの横へ置いた。


 シャワーを浴び、いつもの姿に戻るとアレクサンドロの部屋へ行く。

 予想通りアレクサンドロは居なかった。


 また奥の部屋に入ってしまったのだろう。


 使用人カレブのことも、イワライのことも、アレクサンドロには話していない。

 夜会で各国との交渉とチェロヴェに慰謝料請求をするときにはアレクサンドロを婚約者候補だからと利用し、それ以外は何も教えていない。


 アレクサンドロからすれば、何も教えられないまま都合よく利用されただけだ。


 カレブの腕から逃げたとき、アレクサンドロが守ってくれた。

 ロウエル公爵が倒してくれなかったらアレクサンドロが怪我をしたかもしれないのに。

 まだお礼も言っていない。


「ヒナ、アレク様は?」

 戻ったユリウスにヒナは首を横に振った。

 2人でアレクサンドロが閉じこもってしまった部屋の扉を見る。


「……そうですか」

 ユリウスは溜息をついた。


「ヒナは大丈夫ですか? 怖かったでしょう?」

 護身術、見事でしたねとユリウスが褒めると、ヒナは困った顔をした。


「だいぶ落ち着いたんですけど、やっぱりまだ怖くて。首のあたりがまだ絞められているような気がして」

 ピンクのフリフリが嫌いになりそうですと苦笑するヒナ。


「……痕が」

 ヒナの首には薄く赤い痕。

 だいぶ強く締め付けられたようだ。


 このままアレクサンドロを部屋に閉じこもらせてはいけない。

 ヒナも今日このまま1人にしておけない。


 ユリウスはヒナにベッドへ行くように頼んだ。


「アレク様! アレク様!」

 ドンドンと扉を叩くユリウス。

 今日は鍵がかかっている。

 合鍵は持っているが使用したくない。


「アレク様、ヒナが、」

 お願いです。出てきてくださいと言うユリウス。


「首を絞められた痕に怯えてしまって。アレク様!」

 早くヒナの所へ行ってくださいと言うユリウスの声に、バタバタと音がした後、扉の鍵は開いた。


「ヒナは?」

「ベッドです。首が赤くなっていて」

 歩きながら説明し、アレクサンドロをヒナの部屋へ行かせる。

 アレクサンドロの寝室を超えたあたりで、ユリウスは立ち止まりお辞儀をした。


 あとはお願いしますね、ヒナ。


 ユリウスは引き返し、アレクサンドロの部屋の扉を閉めた。


「ヒナ! 大丈夫か?」

 鏡で赤くなった首を確認していたヒナは、アレクサンドロの声に驚きビクッと揺れる。


 ドレスの時は髪をおろしていたので気にならなかったが、後ろで一つに縛ったら首の横はしっかりと赤くなっていた。

 アレクサンドロはヒナの首を触りながら、痛いか? と尋ねる。


「痛くはないけど、その、まだ絞められていそうな」

 変な感覚が消えないとヒナが言うと、アレクサンドロは眉間にシワを寄せた。


「守ってやれなくて悪かった」

「アレクは守ってくれたよ」


 こういうのを吊り橋効果っていうのかもしれない。


 ピンクのフリフリの変態カレブに手を引っ張られた時、1番最初に気づいてくれて、1番最初に助けようとしてくれて。

 身を挺して守ってくれたアレクサンドロ。


 本当はあんな風に私を助けたら怒られてしまうのだろう。

 1番大事なのはアレクサンドロなのに危険に自ら向かってしまったのだ。


 でもうれしかった。

 大丈夫か? って目が合った時、ホッとした。

 

 そのあと、怒ったアレクサンドロが公務モードの笑顔で微笑んだとき悲しくなった。


 あぁ、どうしよう。

 吊り橋効果って一瞬の勘違いなのかな。


「冷やした方がいいのか?」

 タオルを濡らし、首にあててくれるアレクサンドロにヒナの顔も赤くなる。


 どうしよう。

 見慣れているはずのアレクサンドロの顔がいつもよりもカッコよく見える。

 これは重症かもしれない。


 スナック菓子が好きでちょっと子供っぽかったり、引きこもってしまったり。

 でも公務になると急に大人びて、頼りになって。

 夜会だってずっと側にいてくれて、守ってくれてカッコよかった。


 うわ、マズい。

 まんまと吊り橋に()められている。


「ヒナ? 大丈夫か?」

 やっぱり痛いのか? と覗き込むアレクサンドロのグレーの眼と目が合うと、限界をむかえたヒナから甘い魔力が漏れ出した。


「魔力?」

 アレクサンドロが首を傾げると、ヒナは真っ赤な顔を両手で隠す。


「怖かったから、ホッとして、吊り橋」

「なんだそれ?」

 冷静な判断ができないヒナの意味の分からない言葉にアレクサンドロは笑った。

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