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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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091.変身

「アレクサンドロ王太子殿下、聖女様」

 銀髪のロウエル公爵が赤色の服を身につけた3名を案内しながらやってきた。


 ロウエル公爵の服は黒。

 イケオジの黒タキシード!

 犯罪でしょ。

 ヒナはミドヴェ国の3人よりもロウエル公爵に釘付けだ。


 やっぱり銀髪が好きなのか?

 アレクサンドロの眼が揺れる。


「こちらはミドヴェ国王陛下、第3王子ナット殿下、そしてアービン公爵です」

 アレクサンドロと挨拶を交わした後、第3王子ナットがヒナの手を握る。

 熊族の手は少し硬いようだ。


 手の甲に口づけされたヒナは、礼はせずにエリスの教え通りに微笑んだ。


「お時間を頂いても?」

 アービン公爵が微笑むと、ヒナはもちろんですと答えた。


 アレクサンドロを見上げるヒナ。


「別室にしようか?」

 グレーの眼を細めて微笑むアレクサンドロにヒナは頷いた。

 アレクサンドロが合図するとユリウスがお辞儀する。


 ヴォルク国王と宰相も同席し、長年敵対していた国同士の異例の会談となった。


「先日は贈り物をありがとう」

 すごい効果だったとミドヴェ国王はヒナに治癒クッキーのお礼を言った。


「一応聞いておきたいのだが、ミドヴェも良い国だ。こちらに来る予定は?」

 第3王子ナットは独身だがどうだろうか? と言うミドヴェ国王に、ヒナは首を横に振った。


「チェロヴェから追い出され、死にそうだった私を助けてくれたのはヴォルク国です。私はこの国にいたいです」

 ヒナがアレクサンドロを見ながら言うと、ミドヴェ国王はそうかと頷き、ヴォルク国王を見た。


「ヴォルク国王、我が国とも友好国になって頂けないだろうか?」

 聖女の恩恵を受けられるのならば、聖女がどの国にいようが構わないとミドヴェ国王は言う。


「喜んで」

 友好国の調印を交わし、プチィツァ国と同様に出店や文化交流を行う事がその場で決まった。


「プチィツァ国にもこの後、友好国を申し出るつもりだ」

「ではプチィツァ国王をお呼びしましょう」


 ミドヴェ国とプチィツァ国も友好国となり、三国の国王同士は握手を交わした。


「ヒナのおかげだ」

 アレクサンドロはヒナを立たせると会場へ戻る。


 会場の入り口で待っていたコヴァック公爵は、アレクサンドロに黄色の服を身につけた年配のレパード国王、孫の第1王子レイナード殿下、レパード国宰相を引き合わせた。


 レパード国も先ほどの部屋へ。


 この日は四国が調印を交わすという歴史的な会談となった。


「チェロヴェは?」

「聖女が酷い目に遭わされたのだ。我が国としては聖女の意向を重視したい。貴国達は自由に友好国になってもらって構わない」

 ミドヴェ国王の質問に、ヴォルク国王はチェロヴェ国と友好国にはならないと答えた。


「ウワサは『聖女はチェロヴェから逃げた』だった。事実は全然違うのだな」

 年配のレパード国王が「大変だったな」とヒナに声をかけると、ヒナは「ヴォルク国のお陰で無事でした」と微笑んだ。


「ずっと争っていた他国と急に和平と言っても正直国民は困惑すると思うが、これから良い関係を築いて行けたらと思う」

 ミドヴェ国王の言葉に各国の国王達は頷く。


 よかった。

 周辺国とは仲良くなれた。

 あとはチェロヴェ。

 ヒナは手を膝の上でギュッと握った。


「……大丈夫か?」

 アレクサンドロがヒナの顔を覗き込む。

 やっぱり前髪と眼鏡で表情が見えない。


 アレクサンドロはヒナの眼鏡をヒョイと取った。

 ヒナの背中のリボンを外し、ウエストの横の紐も外していく。

 後ろで縛った髪のゴムも勝手に解き、ヒナの前髪を横に流した。


「ほう。その素顔を見ていれば男だとは思わなかっただろうに」

 レパード国王がチェロヴェは馬鹿なことをしたと嘆く。


 いつのまにかやってきたユリウスの妻エリスに髪をハーフアップにされ、紫の蝶のバレッタで止められた。

 首にはダイヤモンドのネックレス、耳にはお揃いのダイヤモンドのイヤリングがはめられる。


「アレク様からよ」

 選んだのはもちろん私とヒナの耳元で囁くと、眼鏡を持ってエリスは去っていく。


 あっという間の変身に各国の王子は釘付けだった。


「さぁ、行こう」

 手を差し出し、ヒナを立たせるアレクサンドロ。

 ヒナはネックレスに触れながらありがとうとお礼を言った。


 立ち上がったヒナのドレスは白と黒。

 先ほどまでは真っ黒のドレスだったのに。


 アレクサンドロが解いたリボンと紐でドレスが広がり、見せていなかった白い部分が現れたのだ。


「チェロヴェは気づかないかも」

 ドレスの色も違う、眼鏡もない、前髪もないヒナを聖女だと気づくだろうか?


 ヒナがくすくす笑うと、各国は何やら面白そうだと笑った。


「アレクだけズルいぞ。俺もヒナをエスコートしたい」

 会場に戻る扉の前でフィリップがアレクサンドロに抗議する。


「今日は俺だけだ」

 良いだろうと笑いながらアレクサンドロはユリウスが開けた扉をくぐった。


 会場に戻り、入り口近くで立ち止まる。


「聖女はヒナという名か?」

 レパード国第1王子レイナードの問いに、ヒナは「はい」と答えた。


「ヒナ姫と呼んでも?」

「ヒナでいいです。姫じゃないので」

「では私の事はレイと。16歳だ。同じくらいだろう?」

「私はナットと。21だが歳は離れているだろうか?」

 豹族レパード国第1王子レイナードと熊族ミドヴェ国第3王子ナットがヒナに話しかける。


「よろしく、レイ、ナット。フィルみたいにお友達になってくれるの?」

 ニッコリ微笑むヒナ。


「オトモダチ?」

 レイナードとナットは一瞬何を言われたかわからずキョトンとなった。


 これでも自分の国ではモテる方だと思っている。

 それを軽く「友達」と言われるとは。


 顔を見合わせ、笑い出すレイナードとナット。


 楽しそうな王子達の様子に、国王同士もワインを飲みながら歓談を始めた。

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