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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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078.お揃い

「嬉しいな。ヒナと街」

 だいぶこの街の食べ物も食べたのだと笑うフィリップに、ヒナはいいなぁと答えた。


 今日はプチィツァ国第4王子フィリップと街を散策する日。

 護衛はもちろん武官とオオカミ。


 数が多すぎです、お父様!


「護衛は彼だけ?」

 フィリップが武官のライルを指差す。


 狼の姿のジョシュ、リッキー、ノックス、ヘンリー、ヒースもいます。とは言えずにヒナはそうみたいと微笑んだ。


「ヒナはさ、何が好き? パンケーキとアップルパイだとどっちが好き?」

「アップルパイ食べたい」

「オッケー」

 なぜかヒナよりも街に詳しいフィリップ。


 手を繋ぎ、街を歩く。


 歩いた事がない道。

 見た事がない店。


 自由に飛べて、自由に着替えて散策できるフィリップをヒナはズルいと思った。


「この前の報告書、ありがとう」

 すごく役に立ったと言うヒナの顔をフィリップは覗き込んだ。


「イヤな事、書いてあったでしょ?」

 ごめんねと言うフィリップ。

 ヒナは首を横に振った。


「言われた事あったから」

「報告書の男?」

「うん」

「そっか」

 そのまま会話は途切れてしまった。


 手をギュッと握られたまま角を曲がると、可愛い黄色の店が現れる。


「ここだよ」

 あー、えっと護衛くんの毒味いる? と首を傾げるフィリップ。


「いらないよ」

 離れて座ると言うライルにフィリップはありがとうとお礼を言った。


 明るい店内は花も飾られ、思わず写真を撮りたくなるような雰囲気だ。

 もしカメラがあったら、アップルパイと紅茶と花で写りは最高だろう。


「あっ! フィルだけクリーム、ズルい!」

「そう言うと思った」

 笑いながら生クリーム付きのアップルパイと交換してくれるフィリップ。


 ヒナはニコニコしながらフォークを刺すと生クリームのついた美味しそうな一口目を頬張った。


「~~おいしい」

 甘すぎないアップルパイに生クリームがちょうどいい。

 嬉しそうなヒナを見たフィリップも微笑んだ。


「この前もらったクッキーね、うちの国の1番大きな教会に持って行ったんだ」

「教会?」

 ヒナが首を傾げると、病気の人やその家族は教会に祈りに来るのだと教えてくれた。


「そこで半分ずつ、100人に配ったらみんな喜んでくれたんだ」

 平民はお金もなく医師に診てもらえない。

 でも貴重な働き手なので少々の痛みでも我慢して働かなくてはならない。


「1番上の兄上の名前で差し入れしたから、兄上に問い合わせが殺到しちゃってね」

 失敗したと笑うフィリップ。

 でも嬉しそうだ。


「どうしてフィルの名前じゃないの?」

「第4王子が目立っちゃダメでしょ」

 余計な争いにならないようにねと笑うフィリップは、やっぱり王子なんだなぁとヒナは思った。


「……作戦は、順調?」

 幼馴染の緑の鳥にいろいろ聞いているのだろうか。

 フィリップはヒナの左手に自分の手を重ねながら、無理しないでと目を伏せた。


「お父様達がね、いろいろ準備してくれて。やっぱり大人ってすごいなって思った」

 自分の考えなど足元にも及ばないと笑うヒナ。


 十分すごいと思うけれど。

 フィリップは行動力がありすぎるヒナに苦笑した。


「夜会でさ、ダンス踊ってくれる?」

「あー、えっとね、ダンスは壊滅的で」

 誰とも踊らないとヒナは困った顔で微笑む。


「アレクとも?」

「うん、練習はしたんだけど……」

 あまりにも酷いダンスにイケオジ3人からストップがかかったのだ。


 日本人の庶民にいきなりワルツは無理だって!

 練習したってセンスがないと厳しいのだと思い知った。


「お父様が遠い目をするくらい、無理で……」

 ヒナらしいと、ブハッと笑うフィリップにヒナの頬は膨らんだ。


「それにね、最初は眼鏡の姿で参加するから誰も誘いたくないと思うよ」

 途中で着替えるというヒナにフィリップは首を傾げた。


「前髪が長い眼鏡をかけた小柄な人物」

 そのままの姿で参加しないと探している人物と一緒かわからないでしょとヒナは笑った。


「その姿で交渉ね」

「うまくいくかな」

 すでにロウエル公爵が熊族ミドヴェ国、豹族レパード国にクッキーを渡して友好国の話をしてくれている。


 あとは各国の国王陛下の判断次第だ。


「うまくいくといいね。プチィツァはヒナの味方だよ」

 ヒナのクッキーには感謝していると言うフィリップにヒナはありがとうと笑った。


 店を出た後は再び手を繋ぎ雑貨屋へ。


 アレクサンドロは小さな店には入れない。

 逃げ道が確保できない大きさの店はNGなのだ。


 ランディは人気のある店に連れて行ってくれる。

 ディーンは歩きすぎない場所で店を探してくれていた。


 フィリップは気ままに、外から見て気になった店に入る事が出来る。

 まるで日本で買い物している時のように。


 小さな雑貨屋にギュウギュウに置かれた商品。

 カラフルな腕輪、カラフルな飾り。


「これ可愛いよ」

 カラフルな3連のブレスレットはアジアンテイストっぽい。

 フィリップが手に取ったのはオレンジ・黄・赤の3連。

 うん、フィリップっぽい。


「こっちの色の方が好き」

 ヒナが青・紫・白を手に取ると、えぇ? そっち派? とフィリップは笑った。


「じゃ、色違いね」

 ヒナの手から奪い、支払いに行くフィリップをヒナが慌てて止める。


「友達とお揃いくらい普通でしょ?」

 ね。と笑うフィリップ。


 結局『友達』だと強調されヒナの腕には3連のブレスレットが通された。


「ありがとう」

「うん、お揃い。嬉しい」

 フィリップはブレスレットを自分の腕に通すとそっとブレスレットを撫でる。


 フィリップは左腕、ヒナは右腕。

 手を繋ぐとお揃いだとよくわかる。


「そろそろ2時間。戻ろうか」

 王宮がいい? プチィツァの店がいい? とフィリップがヒナに尋ねると、今日の護衛ライルが「店で!」と答えた。


「店なの?」

「はい。宰相の指示です」

 首を傾げるヒナにライルはニッコリ微笑んだ。

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