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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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75/100

075.ミス

「ディーン、その報告書に続きはあるかい?」

 ヒナの眼鏡を取りながらランディが尋ねると、ディーンは次のページを捲った。


「最後のページはもう1人の髪の長い聖女についてですね」

 ディーンは報告書を読み上げた。


『ほぼ毎日レパード国に行っている。

 毎日違う豹族の男性と睦事を交わしている。

 チェロヴェ国第1王子にレパード国へ移住したいと相談。

 第1王子は前向きに検討すると回答した』


「報告書の内容は以上です」

 ディーンは報告書を閉じるとテーブルの上に置いた。


 ランディはヒナの眼鏡をディーンに渡すと、後で1つに縛ったゴムも外しディーンに手渡す。

 ヒナの黒髪がサラッと広がった。


「この報告書は宰相へ渡していいのかな?」

 顔を埋めたままのヒナの耳元でランディが尋ねるとヒナは小さく頷いた。


「ではユリウスに……」

 ユリウスに渡そうとディーンが言うと、ヒナは首を横に振った。


 ユリウスもアレクサンドロもイワライとは仲が良い。

 彼が混血だったなんて知りたくないだろう。

 頻繁にチェロヴェに出入りしていることも、他国に行こうとしていることも、爵位がほしいことも、イワライ自身は知られたくないはずだ。


 勝手に調べた内容を彼の友人に渡すなんてしてはいけない。


「ディーン、直接宰相、またはコヴァック公爵から宰相へ」

「わかりました」

 では預かりますとディーンが答えるとヒナの身体がホッとしたのがわかった。

 報告書は見えないようにトートバックの中に。


「狼が良い? 人のままで良い?」

「……狼」

 どちらの姿で側にいてほしいか聞くと、やっぱり狼だった。

 ランディはヒナを抱き上げると奥のベッドへ運ぶ。


「シングルベッドに狼2匹は狭いな」

 寝ころべないねと笑いながらベッドの上にヒナを座らせた。


 一瞬ヒナの泣き顔が見え、ランディは困った顔で笑う。


「泣き顔も可愛いけれど、笑っている方が好きかな」


 銀狼になりブルブルと服を脱ぐランディ。

 ベッドの上に飛び乗るとグレーの眼で後ろからついてきたディーンを見つめた。

 すぐにディーンも茶色の狼になり、ベッドの反対側へ。


 ヒナに擦り寄ると、ヒナは泣きながら2匹を捕まえた。


 銀色で柔らかい毛並みのランディと柴犬くらいの硬さのディーン。

 座りながら左右に抱えるとどちらも暖かかった。


 右手でランディ、左手でディーンの首の後ろを触る。

 数分もふもふした後、急にヒナはベッドにひっくり返った。


 驚いた狼のランディとディーンが覗き込むとヒナは困った顔で微笑む。


「帰れるとは思っていなかったけど、やっぱり帰れないって言われるとショックかな」

 イワライにも言われたけどねとヒナが苦笑する。


 イワライは混血。

 という事は人族と狼族でも普通に恋愛した人がいる。

 お互いに人の姿だったら何族だって関係ないのかもしれない。


 キョウカさんは豹族が好きなのだろうか。

 豹族はランディと行ったお店で1人働いていたけれど、ネコみたいな人だった。


 私はネコよりイヌ派だな。


 目の前には狼2匹。

 心配そうな顔で覗き込んでいる。


 ヒナは両手で涙を拭うと、もふもふな2匹の狼の胸に手を伸ばした。

 柔らかくてふわふわで気持ちがいい。


「はぁ。夜会までにやる事がいっぱい」

 ヒナが天井を見ながら溜息をつくと、ランディがグゥと喉を鳴らした。


 無理するなと言っているのだろうか?


「ねぇ、ディーン。混血って調べられる?」

 他にも混血の人がいたら知りたいというヒナにディーンは首を振った。


「珍しい?」

 ヒナの質問に頷くディーン。


「あ」

 そういえば以前ディーンと本屋に行った時に、誤魔化すために適当に手に取った本は異類婚の本だった。


「ディーン、チェロヴェの本棚に異類婚の本があったの覚えている? 別の本でいいから異類婚の本が手に入らないかな?」

 どちらかというと別の本が良いけれどと真っ赤になるヒナ。

 あの本は確か『異類婚の夜生活』だ。


「グァウ」

 ディーンはわかったと言ってくれたのだろうか。

 ディーンはヒナの左頬に鼻を寄せた。


「ねぇランディ、眼鏡にズボンの姿でもイワライの前でイチャイチャしてくれる?」

 治癒能力を知ったランディがすごく優しくしてくれて、ランディのいるこの国に居たいってイワライに言うの。

 どんな反応するかな。とヒナは笑う。


 宰相である養父にはイワライのお父さんの保護を頼んでみよう。

 もちろん聖女の情報と引き換えだ。


 コヴァック公爵には熊族や豹族に治癒クッキーの情報を流してもらって、ロウエル公爵には国境で治癒クッキーの効果を証明してもらおう。

 

 起き上がり2匹の狼をギュッと抱きしめると、ヒナは大きく息を吐いた。


「もっと綺麗で優しい人を聖女に選べば良かったのにね」

 こんな悪巧みしている自分のような喪女が聖女の力を持っていて申し訳ないとヒナは肩をすくめた。


 まぁ、3人来た時点でチェロヴェは失敗しているのだけれど。


 綺麗なキョウカさん。

 優しいメイちゃん。

 聖女の能力を持った喪女。


 あぁ、全員の良いところを集めれば理想の聖女だ。


「……ミスってるわ」

 あり得ないでしょとツッコむヒナ。


 狼2匹はヒナにもふもふされながら首を傾げた。

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