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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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055.お茶会

 ノックの音と共にユリウスが入ってきた。

 いつもの3人の侍女が手に持っている紫のドレス。

 くすぐったい靴下にぎゅうぎゅうのコルセット。

 歩きにくい靴と装飾品。


「あ、あの、お兄様?」

 まさかそれを着るだなんて?

 返事の代わりにユリウスはニッコリと微笑んだ。


「アレク様も準正装です」

「俺も?」

「着ないならヒナとプチィツァの王子は2人きりになります」

 どうしますか? と意地悪に聞くユリウス。

 アレクサンドロは着るに決まっているだろうと急いで着替えに戻った。


「あ、頭飾りはあれを」

 リボンを手にした侍女にアレクサンドロからもらったバレッタを使用したいと言うと快諾してくれた。

 なんとなくニコニコされている気がするけれど。


 手袋を差し出されたが、暑いので断った。

 日焼けしてしまいますよ? と不思議そうな顔をされてしまったが。


 今日もお世辞を忘れない侍女達。

 いつも励まして頂いてありがとうございます。

 最後にシュッと香水がかけられ、ヒナの準備は完了した。


「ユリウス様。お嬢様の準備、整いました」

「はい。では参りましょう」

 ジャケットを着たアレクサンドロと廊下を進みながら説明を受ける。

 プチィツァの王子は現在、コヴァック公爵と話しているそうだ。


「今日は王子同士の交流という名目でお茶会を開催した事になりました」

 アレクサンドロは眉間にシワを寄せた。


 あれだけイーグルが暴れたのに、なかったことにするとは。

 本来なら一方的に襲われたこちらの国がプチィツァ国に抗議しても構わないのにコヴァック公爵はしない方を選んだという事か。

 しかも今日は祭りの日だ。

 他国の祝い事の日に騒動を起こすなど、礼儀がなっていない。

 だが、先ほどの事は全くなかったことにしてお茶会へ参加しろという事だ。


「……そうか」

 アレクサンドロは返事をするとそのまま黙ってしまった。


 珍しくアレクサンドロの声のトーンが低い。

 ヒナはエスコートしているアレクサンドロを見上げたが、いつもなら振り返ってくれるアレクサンドロが振り返らない。


「ヒナ、気にしなくていいよ。公務モードのアレクはいつもこんな感じだよ」

 ランディが大丈夫だと言ってくれる。

 ヒナはランディの方を振り向き、困った顔で微笑んだ。


「ランディ、扉をお願いしても良いですか?」

「あぁ。もちろん」

 ランディが扉に手をかけ、ゆっくりと開く。


「私が先に行き、コヴァック公爵に声をかけます」

「わかった」

 アレクサンドロはヒナの手をグッと1回握った。


「ご歓談中失礼いたします」

 ユリウスがコヴァック公爵に声をかけると、コヴァック公爵は立ち上がりアレクサンドロに礼をした。


 プチィツァ国第4王子フィリップも立ち上がり、エスコートされている令嬢を見つめる。

 あぁ。彼女だ。

 ドレス姿も美しい。

 窓越しではなくようやく直接話すことができる。


「フィリップ王子殿下、我が国のアレクサンドロ王太子殿下と滞在中の聖女ヒナです。こちらはプチィツァ国第4王子フィリップ殿下です」

 コヴァック公爵が3人を引き合わせると、さすが王子同士。

 握手を交わし、よろしくと微笑み合う。


 怖い!

 公務って怖い!


「聖女ヒナ。お目にかかれて光栄です」

 プチィツァ国第4王子フィリップはヒナの手をそっと持ち上げると手の甲に口づけを落とす。


 平常心!

 微笑んでいればOK!

 返事はしない!

 ユリウスの妻エリスに習ったマナーを心の中で唱えながら、ヒナはにっこりフィリップに微笑んだ。


 この挨拶の間にテーブルの上の紅茶とお菓子は下げられ、イスの配置も変わり、テーブルクロスも変えられている。

 侍女ってすごい!


 アレクサンドロにエスコートされたヒナが1番最初に座り、次にフィリップ、最後にアレクサンドロが席に着いた。

 この順番もきっと決まっているのだろうなぁ。

 王子って大変だ。


 すぐに新しい紅茶とお菓子が運ばれてくる。

 今日の紅茶はアールグレイだと侍女がラベルを見せて去っていく。

 産地がどことか、銘柄も大事なのね。


 お菓子はサクサクのラングドシャっぽいものが薔薇の形になっている!

 すごい!

 うわー。食べてみたい。

 でも食べてはダメだとユリウスの妻エリスに教わった。

 未婚の令嬢は初対面の男性とのお茶会で食べない方が良いのだと。

 紅茶は相手が気に入らない場合は飲まない方がいい。

 

 ヒナはちらっとフィリップを見た。

 目が合い慌てて視線を逸らす。

 フィリップはイーグルを人にしたらこんな感じだろうなと納得してしまう容姿だった。


 背はアレクサンドロと同じくらい。

 髪はこげ茶色でイーグルの羽根と同じ色。

 目は茶色だが目力がすごい。

 声は男性にしては少し高めだ。


「先日、聖女にもらったクッキーのおかげで目の病気が治った。本当にありがとう」

 ずっとお礼が言いたかったとフィリップが頭を下げるとヒナは不思議そうな顔をした。


 イーグルにあげたのは割ったクッキーだけ。

 だが、作ったのは普通のクッキーだ。

 アレクサンドロも食べていたが何も言っていなかった。


「そんな効果があるなんて知りませんでした」

 ヒナが首を横に振ると、横に控えていたコヴァック公爵が情報を補足した。


「おそらく怪我や病気をしていない者にとっては普通の食べ物でしょう。だから誰も気が付かなかった」

「狼族にも有効でしょうか?」

「試してみないとわかりませんね」

 ヒナは少し考え、今すぐ誰かに試すことはできないかコヴァック公爵に相談した。


 オオカミはもう治してしまったが、他にケガをしている人はいないのか。

 もしいるのであれば試してみたいと告げると、ロウエル公爵が動いてくれた。


 連れてきたのは国王陛下付きの護衛騎士。

 ちょうど今、医局にいたそうだ。


「あー、運がいいなぁ~」

 ニヤニヤするロウエル公爵とは対照的に、王太子のお茶会に訳が分からないまま連れてこられ、顔面蒼白の騎士。


「腕の骨折らしい」

「うぁぁ!」

 ロウエル公爵が騎士の腕をギュッと握ると、騎士は涙目で叫んだ。


 ユリウスに先ほど作ったばかりのチーズパンを持ってきてもらう。

 4等分したものが1欠片余っているので、騎士にはそれを食べてもらう事にした。


「え? パンを食べるのですか?」

 骨折して医局へ行き、添え木をしてもらえるかと思ったら王太子のお茶会に呼ばれ、パンを食べろと言われた騎士。

 困惑しながらもパンを食べた。


「あ、えっと、おいしいです」

 とりあえずパンの感想を言う。

 ロウエル公爵に笑われ、騎士は困った顔で微笑んだ。

 ロウエル公爵が先ほどと同じように腕をギュッと握ったが、今度は騎士の叫びは聞こえなかった。


「……あれ?」

 痛くないと不思議そうに腕を動かす騎士。


「あの、痛くないです」

 自分でも触って痛くないことを確認すると、騎士は信じられないと目を見開いた。


「一応、念のため。これが骨折の診断書」

 ロウエル公爵は胸ポケットから騎士の診断書を取り出した。

 日時はついさっき、左腕前腕の骨幹部骨折と書かれている。


「すごい」

 プチィツァ国第4王子フィリップは目を輝かせながらヒナを見つめた。

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