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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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053.祭り3日目

「粉で白くなっちゃうから近づいたらダメ」

 窓とカーテンを開けながらヒナはパン生地の準備をした。


 今日のヒナは青のワンピース。

 いつもより少し目立つ色だ。


 キッチンの上にはヘリオトロープ。

 イーグルにもらった紫色の花。


 足元には狼のアレクサンドロとランディがいる。


 ランディは窓から見やすい部屋の真ん中で優雅に寝転び、アレクサンドロはヒナの動きに合わせて部屋を自由に動き回っている。


「これを捏ねると……」

 べちゃべちゃの生地がだんだん纏まってくる様子をアレクサンドロは椅子の上に乗りながら眺めた。


 本で見たぞ!

 耳をピンと立て、尻尾を振るアレクサンドロが可愛い。


 三角耳の後ろをぐりぐりしたいが、まだパンを捏ねている最中で出来ないのが悲しい。

 ヒナは生地を一纏めにすると、布巾を被せて作業を中断した。


 手を洗い、ようやく狼のアレクサンドロをもふもふする。


 耳の後ろから背中をもふもふすると、ランディが顔を上げた。


「ランディも?」

 ヒナがランディのいる部屋の真ん中へ行くと、アレクサンドロも椅子から降りて部屋の真ん中へ。


 2匹をもふもふしていると時間が経つのはあっという間だった。


 膨らんだ生地を分割して次の作業へ。

 生地を休ませている間に具の準備をし、パンに具を詰めていく。


 ランディは部屋の真ん中で、アレクサンドロはまた椅子の上でヒナを見守る。


 半分ほど具を包んだ頃、ランディが起き上がり窓を見た。


「グァウ」

 来るぞ。と言ったのだろうか。

 アレクサンドロも窓の外を警戒すると、部屋にランディの遠吠えが響き渡った。


 スゴい!

 遠吠え!


 狼の遠吠えを始めて聞いたヒナは驚いてランディを見た。


 この遠吠えはどこまで聞こえるのだろうか?

 今日は外にいるというディーンも聞こえている?

 ちょっと空気がピリピリしている気がする。


 パンを作る手が止まってしまったヒナをアレクサンドロは見つめた。


 遠吠えは怖かったか?

 狼は怖いか?


 アレクサンドロは椅子から飛び降りるとヒナの足に擦り寄った。


 まるで大丈夫だと言ってくれているかのようだ。

 ヒナはアレクサンドロに微笑むと、できるだけ気にしていないフリをしながら残りの具を生地に包んだ。


 窓を睨んだままだったランディが再び遠吠えをする。


 ランディからふっと緊張感が無くなり、窓から目を離して元のようにくつろいだ。


「……もう大丈夫って事?」

「グァウ」

「ありがとう」


 ……あれ?

 ディーンは外で正体を探るって言っていた気がするけれど、イーグルは来ていない。

 良かったのかな?

 

 少し生地を休めてからオーブンへ。


 狼のアレクサンドロはオーブンに興味津々だ。


「おいしく出来上がるといいなぁ」

 ヒナも一緒に覗き込むとアレクサンドロが「グァウ」と答える。


 パンはなんとか膨らみ、それっぽい見た目になった。


「完成!」

 熱いパンをオーブンから出し、網の上へ。

 湯気が立ち上るパンからいい匂いがする。


 すぐに食べてみたいけれど熱そうだ。

 ヒナは包丁で4等分にし、中まで火が入っているか確認した。


 とろっと出てくるチーズ。

 狼のアレクサンドロの尻尾は全力で左右に振られている。


「……待ってね、毒味するね」

 ハフハフしながらかじると、フワッと小麦の香りがした。

 有名店ほど柔らかくはないがチーズのお陰で塩気もあり、上出来ではないだろうか。


「熱いよ?」

 手で持ったパンを狼のアレクサンドロの前に出すと、ふんふんと匂いを嗅いだ後にペロッと舐めた。


「熱いよね」

 ふーふーするヒナ。


 狼のアレクサンドロは舌舐めずりしながら冷めるのを待つ。


「はい、アレク」

 牙が見えるのに、差し出されたパンをパクッと食べる姿がなんだか可愛かった。


 狼のアレクサンドロの頭を撫でると、パンを手に取りランディの元へ。

 ふーふーしてから差し出すと、ランディの綺麗なグレーの眼が揺れた。


 パクっと食べ、ハフハフする姿が可愛い。


 ヒナは狼のランディの頭も優しく撫でると食器洗いを始めた。


 料理も洗濯もできる令嬢なんて不思議すぎる。

 一体いつ覚えたのか。


 狼のアレクサンドロがヒナの足に擦り寄ると、ヒナはくすぐったいと笑った。


 狼の姿ならこんなに笑ってくれるのに。

 いつだって目を見て話しかけてくれるのに。


 人の姿ではダメなのか?


 狼のアレクサンドロは洗い物をするヒナを椅子の上から眺めた。


「次はミシン!」

 食器を洗い終わったヒナは昨日ランディに買って来てもらった布を広げた。


「キレイ……ありがとう、ランディ」

 ヒナが狼のランディに微笑む。

 ランディはグゥと頷いた。


 頼んだよりもたくさん買ってきてくれたのはランディの優しさだろう。

 上品な柄と無地が何色もあり組み合わせ自由だ。


「コレとコレ!」

 まずはお試しで自分用の手帳カバーを作成だ。

 ヒナはオレンジの無地と、黄色のヒマワリ柄を手に取った。


 手帳を持ってきてサイズを合わせる。

 バランスを考えながらなんとなくサイズを決めた。


 スッと立ち上がるランディ。

 急に窓の方を振り返るアレクサンドロ。


 ほぼ同時のタイミングで外から遠吠えが聞こえた。


 驚いたヒナも窓の方を振り返る。


 バサッという黒い影が一瞬窓の向こうを通過したのとほぼ同時にオオカミの悲鳴が響いた。


「えっ??」

 窓に駆け寄り、下を見る。

 

 イーグルと20匹くらいのオオカミが小競り合う姿が見えた。

 オオカミが怪我をしているのだろうか?

 芝生には血。

 こんな上から見えるくらいなのでかなりの出血だろう。

 1匹のオオカミがスローモーションかのようにゆっくり倒れる。


「やめて!」

 ヒナの声が聞こえたのだろう。

 イーグルはオオカミが届かない位置まで飛ぶ。


 イーグルの爪が赤い。

 あの爪でオオカミを!


 今日は祭りで多くの騎士や武官は街へ行っている。

 ここにいるのは最小限。

 だからオオカミが周りを守ってくれているのに、鳥がオオカミを襲うなんて!


「ランディ! 下まで連れて行って!」

 今すぐ! ヒナが頼むとランディはふぃと顔を逸らした。

 ダメだという事なのだろう。


 ヒナは窓枠の上でギュッと手を握った。


 オオカミの遠吠えが聴こえる。

 応援を呼んでいるのだろうか?


「鳥! 私に用事があるんでしょう? そこで大人しく待ってなさい!」

 ヒナは窓の向こうのイーグルに宣言すると部屋の扉に走る。


 止めるアレクサンドロとランディを振り切り、廊下を走った。


「アレクは来ちゃダメ!」

 王太子が怪我をしたら大変だ。

 ヒナが叫ぶと狼のアレクサンドロは「グァウ」と鳴いた。

 そのままヒナを抜かして足止めしようとする。


「退いてアレク!」

「グァウ!」


 ランディもヒナを抜かし立ち塞がる。


「早くオオカミの所に行かないと!」

 血がたくさん出ていた。

 倒れた子もいた。


「グォウ」

 アレクサンドロもランディもダメだと言っているのだろう。


 狙われているのは自分。

 ノコノコ誘拐してくださいと出ていくのは馬鹿だ。


 それでもあのオオカミを放っておけない。

 ヒナはグッと手を握ると、俯いていた顔を上げた。

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