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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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50/100

050.星空

 アレクサンドロはヒナをチラッと見ると狼の姿になった。

 ブルブルと身体を揺らし、器用に服を脱ぐ。


 ユリウスの手を借りてヒナが起き上がると、アレクサンドロはヒナの膝に顔を乗せた。


「アレク?」

 ふんっと鼻を鳴らし、絶対退かないぞとヒナにもたれかかる狼のアレクサンドロ。

 ユリウスとヒナは顔を見合わせた。


 ヒナはアレクサンドロの耳の後ろから首にかけてマッサージする。


 ユリウスはブラッシング用の櫛をヒナの隣に置くと、静かに退室した。



「見つけたぞ、聖女を」

 鳥族プチィツァ国の第4王子フィリップは第1王子オークリーに嬉しそうに報告した。


「聖女って事は女か」

「あぁ。黒髪黒眼の小さい女だ」

 人族のチェロヴェ国では前髪が長く後ろで髪を1つに縛った黒髪眼鏡の小柄な男と言われていたが、間違いない。

 フィリップは嬉しそうに笑った。


「美人か?」

「まだ幼い」

 何歳かわからないと言うと兄オークリーは一気に興味を無くしたようだった。


「なぜ聖女だと?」

「クッキーをもらった」

 呆れた理由に兄オークリーが溜息をつく。


 ただ好みの女を見つけただけじゃないか。


「俺の左目が遠くまで見えない事は知っているよな?」

「あぁ」


 フィリップは生まれつき左目の視力が弱い。

 見えないわけではないが、人族と同じくらいの視力しかない。


 イーグルの視力は人族の8倍。

 見える色も多い。

 右目は800m先の敵が見えるが、左目は100m先が限界だったのに。


「見えるようになった」

「嘘だろ?」

 ありえないと笑うオークリー。


「見えすぎてバランスが狂う」

「……そういえばさっき扉にぶつかったな」


 フィリップは遠近感が変わり思ったよりも扉が近くて驚いたと笑った。

 

「とりあえず口説く!」

「子供なんだろ?」

 ロリコンかよとオークリーが言うと、フィリップはそのうち大人になると笑った。


「ヘリオトロープを贈ったがわかってなさそうだった」

「おいおい、そんなに子供かよ」

「16以上だと思うけれど」

 軽くメイクをしていたとフィリップが言うと、オークリーは少し安心した。

 花言葉もわからないと言うので10歳くらいかと心配したが。


 フィリップは20歳。

 聖女が16歳ならまぁアリだろう。


「毎日花を贈ればいいか?」

「困るだろう」

「会いに行くのはいいのか?」

「迷惑じゃないか?」

 しつこいと嫌われるぞと言う兄オークリー。


「空から見るのは良いか?」

「ストーカーだと思われないくらい離れろよ」

 難しいなと眉間にシワを寄せながらフィリップは明日の予定を確認した。


「なぁ兄貴、他国に聖女の情報を流したくない」

 人族のチェロヴェ国、熊族のミドヴェ国、豹族のレパード国も眼鏡の人物を探している。


 聖女の居場所がわかれば他国に連れていかれるかもしれない。


「そうだな、鳥族は全員一度撤退するか」

 自分達のための最低限のスパイは他国に残すが。


 父上に話しておこうと兄オークリーが言うと、フィリップは嬉しそうに笑った。



「……なぜアレクが甘えているのかな?」

 公爵オススメの2軒のチキン焼きと、ナイトリーがココも買えと勧めた1軒のチキン焼き、そしてヒナにフルーツを購入して戻ったランディは、狼のアレクサンドロに苦情を言った。


「おかえりなさいランディ」

 ヒナのおかえりを聞きランディは嬉しそうに微笑む。


「はい、ユリウス」

 買ったものは毒味のためユリウスへ。


「ありがとうございます。あぁ、ランディ。そろそろコレを」

 昼に買って来た商品を手渡されたランディはヒナにニッコリ微笑んだ。


 昼の残りの食事が並ぶテーブルに四角い装置を置き、ボタンを押す。

 ディーンが買って来た物も少し離れた場所に置きボタンを押した。


「消しますよ」

 ユリウスが部屋の明かりを消すと、部屋の天井は一気に星空になった。


「わぁ」

 スゴい。

 まるで家庭用のプラネタリウムだ。


「キレイ」

 ランディとディーンが買って来てくれたので星は2倍。

 普段、外を眺めないので星がある事も忘れていた。


「今もこのくらい星が見えるの?」

「半月だから今日はこんなに見えないね」

 ランディの説明で「そっか」と普通に納得してしまうヒナ。


 普通の令嬢はそれだけじゃわからないのだけどね。


 月があると星が見えない理由を語れる男の方がモテるのに、そのチャンスすらくれないヒナ。

 なかなか良いところが見せられないとランディは苦笑した。


「あぁ、もう星空にしていましたか」

「ディーン、おかえりなさい」

 アレクサンドロの背中を撫でながらヒナがディーンに声をかけると、ディーンは複雑そうな顔をした。


「おかえりと言われてすごく嬉しいのですが、アレク様が甘えていて感情が相殺されました」

「あぁ、俺もそうだった」

 ディーンとランディが苦笑する。


 狼のアレクサンドロは羨ましいだろとばかりに上目遣いでランディとディーンを見た。


「狼になればヒナの隣に行けるのかな?」

「そういう事ですか」

 じゃ、我々も。と狼の姿になるランディとディーン。


 服をブルブルと落とすと月明かりに照らされた銀狼の毛が輝いた。

 茶色のディーンも月明かりで輝く。


「キレイ」

 ヒナが2人の狼の姿に見惚れていると、グアォとアレクサンドロは鳴いた。


「甘えて良いのは俺だけだ。とおっしゃっています」

 アレクサンドロが言っているとユリウスが通訳すると、ランディとディーンもグォウと答えた。


 何を言っているかわからないが楽しそうだ。

 ヒナがくすくす笑うと狼3匹はヒナを見つめた。


「お食事は毒味が終わりましたのでお好きな時に」

 ワインはこちらに。

 もうグラスは割らないでくださいね。

 ほどほどで解散してください。とユリウスがあれこれ言う。


 アレクサンドロがグァウと鳴くと、ユリウスは退室して行った。


 お兄様もエリスお姉様と祭りに行きたいよね。


 ヒナはもふもふの3匹と星空の部屋でゆっくり過ごした。

 みんな狼なので会話はできない。


 それでも楽しい時間だった。


 だんだん眠くなるヒナを狼のランディがベッドへ促す。


「うん、でもここはアレクのベッドだから自分のベッドに」

 部屋へ戻ろうとするとアレクサンドロが部屋の境目に立ちはだかった。


 狼のランディとディーンがアレクサンドロのキングベッドの方にヒナを誘導する。


「みんなで寝るの?」

 もふもふすぎて暖かすぎるよと笑いながらヒナはベッドに腰掛けた。


 アレクサンドロが顔でヒナを押すとだいぶ眠たいヒナはポフッとベッドへ。

 自分のベッドよりも数倍柔らかいアレクサンドロのベッドに沈み込んだ。


 天井には綺麗な星空。

 眼鏡を外す前にもう瞼が閉じてくる。


「グァウ(おやすみ、ヒナ)」


 なんと言っているかわかるはずがないのにそう言われた気がしたヒナは、嬉しそうに微笑みながらゆっくりと目を閉じた。

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