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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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034.マロウブルー

 土曜日。

 迎えに来てくれたランディの色気にヒナは倒れそうになった。

 普段よりもラフな格好はどう見ても朝帰りのホスト。

 存在そのものが犯罪だ。


「行きたい店はあるかな?」

「手帳か予定を書ける物が欲しいです」

「紙店だね」

 差し出された黄色の花。

 毎回一輪だけ。

 今日で3回目だ。

 月曜と木曜にもらった花と同じ花なので、もしかしたら何か花に意味があるのかもしれない。

 ヒナはベッドの横に置いたコップに3本目の花も入れた。


「花瓶も要るかもしれないです」

 ヒナは笑いながらサーモンピンクのカーテンを閉めた。


 この部屋に住む令嬢がランディと出かける所を『鳥』は目撃してくれただろうか?

 今日も緑の鳥がいる事を確認すると、ユリウス宛にメモを書いた。

 急いでアレクサンドロが食事をするテーブルに置き、部屋に戻る。


「お待たせしました」

「では行こう」

 ランディに腰を抱かれながら廊下を進む。

 アレクサンドロと出かける時とは違う廊下と出入り口だ。

 不思議そうにキョロキョロするヒナをランディは覗き込んだ。


「こっちが普通の出入り口ね」

 アレクサンドロは王族用の特別な出入り口を利用しているのだと教えてくれる。

 普通の出入り口と言っても十分豪華なエントランスにヒナは圧倒された。


 馬車に乗り街へ行く。

 風で髪がなびいただけでも色気があり過ぎるランディ。

 狭い馬車では目のやり場に困る。


「まずは手帳を見に行こうか」

「はい。お願いします」

 嬉しそうに微笑むヒナにランディは敬語禁止! と笑った。


「もっとヒナと仲良くなりたいな」

 ランディがヒナの手を持ち上げ指に口づけするとチュッという音が馬車に響き、ヒナは真っ赤になった。


「来週父に会うんだって?」

「えっ? ランディのお父さん?」

 驚いたヒナの反応にランディも驚く。


「あれ? 聞いていないかい?」

「公爵に会うと聞きましたが」

「ロウエル公爵、俺の父ね。あとディーンの父、コヴァック公爵に会うと聞いているよ」

「えっ?」

 もしかして誰とも結婚しないと言ったからお父さん達が怒ったのだろうか?


 ユリウスが公爵は貴族の中で1番爵位が高いと教えてくれた。

 うちの息子がこんなに世話してやっているのに! と言われたらどうしよう。


「見た目は怖いけれど大丈夫だよ」

「こ、怖い?」

 あぁ、やっぱり怒られるんだ。

 そうだよね。

 何ヶ月もお世話になっているのに、誰も選ばなくて部屋まで作ってもらって。


 あぁ、どうしよう。

 息子さん達は良い人です。

 優しいです。

 カッコいいです。

 素直にごめんなさいって言うしかないよね。


「着いたよ」

 まずランディが馬車を降りる。

 ヒナに手を差し伸べ馬車から降ろしてくれた。

 文房具屋と言えばよいだろうか。

 紙やペンを取り扱っているお店は奥に長いお店だった。


「手帳はこの辺りかな」

 腰を抱いたまま片手で上の棚の手帳を取ってくれるランディからふわっと良い香りがする。

 甘くて良い匂い。

 花っぽいけれどフルーティな不思議な香りがする。


「どのくらいの大きさが良いのかな?」

 女性は手帳を使う習慣はないので黒やグレーのシンプルな物しかないそうだ。

 いくつか取ってくれたが大きさと厚さくらいしか違わず、中もそんなに変わらない。

 ヒナはたくさん書けるように大きめの、ノートもついているビジネス手帳っぽい物を選んだ。


「ペンも見て良いですか?」

「敬語じゃなくなったらね」

 笑いながらランディはペン売り場へ連れて行ってくれる。


「この種類が書きやすいよ」

「この色キレイ」

 合わせてくれているだけかもしれないが、なんとなく好みの色は似ていそうだ。

 ランディにもらった紺っぽい黒もとても好きな色だった。


「この色を買います」

「では同じ色を買おう」

 ヒナがオレンジ色を手に取るとランディも同じペンを手に取った。

 お揃いだねと笑うランディの笑顔は喪女には眩しすぎる。


 店内に悲鳴が聞こえる。

 ランディは図書室以外でも人気なようだ。

 筆箱を探してみたが無かった。

 ペンは上着のポケットに入れるそうなのでたくさん持ち歩くということはないらしい。


 この店では手帳とオレンジ色のペンのみ。

 ランディは買ってくれると言ったが、自分で支払いたいとお願いした。

 それぞれ別々に支払いをして店を出る。


「少し歩いても良い?」

 疲れたら抱っこしてあげるよと笑うランディ。

 ヒナに合わせてゆっくり歩いてくれているのがわかる。

 優しいなぁ。


「大丈夫ですよ」

 ヒナはにっこり微笑んだ。


 ヒールのない靴なのでそんなに疲れない。

 ユリウスの妻エリスに「そんな色気のない靴!」とダメ出しをされたが靴だけはこのヒールなしを買わせてもらった。

 いつか咄嗟に逃げる場合になっても走れる靴だ。


 ……そういえば、狼の出口はどこだろうか?


 ヒナは急に宰相に言われた出口を思い出した。

 見に連れて行ってもらった方が良いだろうか?

 それとも見ればすぐにわかるのだろうか?


 周りをキョロキョロすると緑の鳥が見えた。


 あぁ、ダメだ。

 見に行ったら出口がバレてしまう。


「どうしたのかな?」

 優しいグレーの眼でヒナの顔を覗き込むランディ。

 身長差は40cm。

 ランディの柔らかいグレーの髪がさらりと揺れる。


「な、な、なんでもないです」

 イケメンのアップは心臓に悪い!

 ヒナはバクバクする心臓を押さえた。


「ここも美味しいけれど、今日は違う店に行こう」

 ユリウスの妻エリスと行ったカフェを通り過ぎる。

『ここに連れて来ない男はセンスがないわ』

 ヒナはエリスの言葉と目を逸らしたユリウスを思い出した。


「お兄様はここに連れて来なかったとエリスお姉様が言っていました」

「ユリウスも大変だ」

 くすくす笑うヒナにランディは微笑んだ。


 一本奥の細い道に入ると急に周りが静かになった。


「……怖い?」

「す、少し」

 なんとなく1人では入ってはいけない道に思えた。

 薄暗い路地だ。


「連れ込まれたらダメだよ」

「もう連れ込まれてしまいました」

 自分が連れ込んでおきながら困った顔で笑うランディに、ヒナは笑った。


 お店はこじんまりとした緑が多い店。

 時間が止まっているかのような、とても静かな店だ。


「マロウブルーを」

 ランディが入り口で注文し、窓に近い明るい席までエスコートすると、すぐにキレイな青色の紅茶が出てきた。


「キレイ」

 透き通る海のような青い紅茶。

 添えられた花がこの紅茶の花なのだろうか?

 横にはレモンもあった。


 ハーブティーかな?

 スッキリとしていて飲みやすい。


「美味しいです」

「良かった。レモンはもう少し後で入れた方が楽しめるよ」

 長い足を組み、優雅に紅茶を飲む姿も色気がありすぎる。

 こんなに紅茶が似合う男の人ってズルくないだろうか。


 何気ない会話も楽しい。

 優しくて、話も上手いイケメン。

 それはモテるに決まっている。


「……あれ?」

 この紅茶、もっと青くなかったかな?

 飲みかけの紅茶の色は紫。


「キレイだろう? 色が変わるんだよ」

 ランディはグレーの眼で優しく微笑んだ。


 女性が喜びそうな物を熟知している!

 人気なのも頷ける。


「これにレモンを入れると……」

 ランディが紫の紅茶にレモンをスッと入れると、紅茶の色はピンクに変わった。


「……スゴい」

 紅茶はキレイなピンク色。

 青から紫、そしてピンク。

 3色に変わる紅茶にヒナは驚いた。


「温度で青から紫? レモンと反応してピンク? スゴい! こんな紅茶があるなんて」

 ヒナが紅茶を眺めながら喜ぶ。

 さらりと温度変化やレモンと反応したと言うヒナに驚きながらもランディは喜ぶヒナの顔を見て微笑んだ。

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