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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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028.元通り

 カフェを出た後は、のんびりと街を歩いた。

 前回はアレクサンドロと一緒だったので、気軽に出入りは出来なかったが今日は冷やかしも可能だ。


「刺繍でもするの?」

 ヒナが手芸屋で立ち止まると、エリスはひょこっと覗き込んだ。


「針と糸が欲しいです。ボタン取れた時とか、ズボンの裾とか」

 ヒナが簡易セットを指差すとユリウスとエリスが驚いた。


「えっ? 待って、ヒナは自分で縫えるの?」

 嘘でしょ! ボタンの付け方がわからないわと焦るエリス。


「もしかしてミシンとか使えますか?」

「えっ! ミシンがあるんですか?」

 ユリウスが店の奥を指差すと、ヒナは奥を覗き込んだ。


 足でキコキコ踏むタイプ。

 でも手縫いよりは絶対キレイ。


「お給料貯めていつか買います」

「買ってあげるわよ。好きな布を選びなさい」

「えっ? でも」

 今日はすでにいっぱい買ってもらったのに。

 遠慮するヒナにエリスは微笑んだ。


「私はこの布にするわ。ミシンで私のためにリボンを作ってちょうだい。頭飾りよ」

 このレースもつけて。とヒナに手渡す。


「色違いのお揃いで、コレはヒナの分」

 急がないからいつでも良いわとエリスは笑った。


「ありがとうございます」

 支払いはもちろんイーストウッド家。

 ミシンと布は明日の夕方届けてくれるそうだ。

 後で宰相であるお父様にお礼を言わないと。


 そのあとお昼を食べ、書店で料理の本を買ってもらった。


「今日はどこで寝るの? ねぇユリウス、まだ部屋はできていないわよね?」

「どちらでもいいですよ? 客室でもアレク様の隣の部屋でも」

「これ以上は気まずくなるだけよ」

 優しく微笑む美女エリスにヒナはそうですねと目を伏せた。


    ◇


「ヒナ! おかえり!」

 アレクサンドロは帰ってきたヒナを見て立ち上がった。

 ユリウスがいなかったので1人で書類と格闘中だ。


「ただいま、アレク」

 俯いたヒナとは目が合わない。

 アレクサンドロは寂しそうに微笑むとユリウスとエリスを見た。


「鳥族を捕まえました」

 ユリウスが報告するとアレクサンドロは驚いた顔をした。

 鳥族はトリの姿。

 区別などつかない。


「ねぇ、ヒナはどうして紙に書いたの? 鳥族とトリの区別がつく所が1番驚きだけれどね」

「お父様が昨日『情報はいつも鳥族から漏れる』と教えてくれたので」

 聞かれたら逃げられてしまうでしょう? とエリスにヒナは答える。


 捕まえる事が前提なのだ。

 相手にバレないように紙に書いた。

 スパイの鳥族がそこにいると。

 アレクサンドロとユリウスは顔を見合わせた。


「ヒナ、また遊びに行きましょうね」

「はいエリスお姉様。今日はありがとうございました」


 あんな笑顔を向けられたい。

 ヒナを笑顔にしたい。

 アレクサンドロはヒナをジッと見つめる。


「お兄様、お父様にお礼を言いたいのですがいつ会えますか?」

 ヒナが尋ねるとユリウスは手帳を広げた。


「5分後なら宰相室に戻りますよ。30分はいます」

 今から行きましょうと言うユリウスにヒナは頷いた。


「行ってきます」

「ヒナ! 戻ってくる……?」

 不安そうな顔でヒナを見るアレクサンドロに、当たり前でしょ! とエリスはツッコんだ。


 扉から出て行くユリウスとヒナ。

 アレクサンドロは椅子にボフンと座った。


「あの子、良い子だったわ」

「あぁ」

「あんな良い子を利用しようとしたのね、私達」

 エリスの言葉にアレクサンドロの手がビクッと動いた。


「あの子、料理も洗濯も裁縫もできるのよ。どんな生活をしていたのかしら」

 自立したいと聞いたときに無理でしょ! と思ったが、あの子ならできそうだ。


「あと、男性関係でイヤな思いをしたみたい。詳しくは教えてくれなかったけれど」

 アレク様を推しておいたからとエリスが笑う。


 あの子は考える間ずっと待ってくれるディーンよりもグイグイくるランディの方が一緒に居てラク。

 でも甘やかしすぎるランディではダメ。


「一緒に考えながら引っ張るアレク様が1番合っていると思うわ」

「……でもフラれたし」

 目を逸らすアレクサンドロ。


「あの子は知らない世界に来てまだ2ヶ月。違う種族の中に急に連れてこられて不安なのに、国のために婚約なんて誰が頷くのよ!」

 エリスに叱られたアレクサンドロは手にグッと力を入れた。


「あの子、昨日は泣きながら寝たわ。朝、酷い顔だったもの」

 寂しくて不安だったのでしょうねとエリスは肩をすくめた。


「ねぇ、アレク様。あの子は賢いわ。いろいろ悩んで1人で解決するタイプよ。少し強引に引っ張った方がいいわ」

 遠慮していたらランディに取られるわよと笑いながらエリスは部屋を出て行く。

 アレクサンドロは椅子の背もたれに身体を埋めながら、何もない天井を見上げた。


 国は聖女が欲しい。

 自分は暖かい魔力に触れたい。


 じゃあヒナは?

 ヒナのメリットは何だ?

 自分で働くので男に頼った生活の保障は不要。

 料理も洗濯もでき、侍女も不要。


 俺はヒナに必要とされていない。

 今の俺では婚約を断られるのは当然……か。


 アレクサンドロは椅子の背もたれから起き上がると狼の姿でヒナの帰りを待った。


「……アレク?」

 どうして狼? 戻ったヒナは首を傾げた。


「グアォ」

「俺の世話をする時間だとおっしゃっています」

 ユリウスが通訳するとヒナは笑った。


 私が気まずいと思ってアレクサンドロは狼になってくれたのだ。

 優しいなぁ。


「ありがとうアレク」

 シャワーと着替えをしてきますねとヒナは奥の部屋に消えた。


 ユリウスは今日の出来事をアレクサンドロに話した。

 買ったもの、買わなかったが興味を示したもの、エリスとの会話、鳥族を捕まえた時の事、そして宰相との会話。


「今日の食事は早めに準備します。昨日は眠れなかったそうなので今日は眠れると良いですが」

 ユリウスは一礼すると部屋を出て行った。


 シャワーを浴び、前髪で目が隠れてしまったヒナ。

 今日買った部屋着は上下黒だった。


「グアォ」

 地味だろう。

 アレクサンドロの通訳ができるユリウスはもういない。


 ソファーに座りヒナの膝に顔を乗せ、アレクサンドロはブラッシングさせた。

 食事を取るとすぐに眠そうな顔になるヒナ。

 アレクサンドロはヒナをベッドへ引っ張った。


「あっちで寝ます」

 アレクサンドロのキングベッドではなく、隣の部屋のシングルベッドに乗るヒナ。

 アレクサンドロはヒナのベッドに潜り込むと枕の横に伏せをした。


「……アレク、昨日はごめんなさい」

 好きだといってくれたのに手を離して距離を取ってしまった。

 どうしてよいのかわからなくて、アレクサンドロを傷つけてしまった。


「グアォ」

 気にするなと言ってくれたのだろうか?

 ヒナはアレクサンドロに擦り寄った。

 すぐにヒナの規則正しい息遣いが聞こえてくる。


 嫌がっても毎日一緒に寝てやる。

 俺がいないと寂しいと思わせてやる。


 アレクサンドロはもうすぐ新月になりそうな細い月を眺めながら眠りについた。

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