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喪女なのに狼さんたちに溺愛されています  作者: 和泉


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013.シングルベッド

 先日の演習室に向かいながら、ランディはヒナに問いかけた。


「怖くなかった? 武官はみんな大きいから圧迫感があるだろう?」

「いい人達でした」

 武官は街の住人からもあまり人気がない。

 騎士とは違い、自分の牙で戦う武官は血まみれのイメージが強く、怖いと恐れられるのだ。

 先日血を浴びた彼らを見ているはずなのに。


「働いてくれる?」

「いいんですか!」

 目を輝かせ、嬉しそうに答えるヒナ。


 前髪も眼鏡もなしでこの表情が見たい。

 ランディはヒナの前髪をそっと退かした。


「わわっ、ダメですっ」

 急いで戻すヒナ。


「そんなに前髪にこだわらなくても」

 ランディが声を上げて笑うと、ヒナは困った顔で微笑んだ。


「可愛いのに」

「かわいくないです」

 ぷくっと膨れるヒナ。


 あぁ、本当に可愛い。

 ランディはヒナの頭を優しく撫でると、グレーの眼を細めて微笑んだ。


「……本当に」

 ランディの手はヒナの頭から耳の後ろを通り、頬へ。

 

「可愛い」

 もう片方の手も反対の頬に添えられたと思った瞬間、ヒナの右頬にランディの唇が触れた。


 こっ、これがホストの手口か!

 ヒナは一気に真っ赤になった。

 身体も熱い。

 ヒナから甘い魔力が溢れる。


「ラ、ラ、ランディ様っ」

 焦るヒナの腰を右腕で捕まえ、左手はヒナの右手を握る。

 ゆっくりとヒナの右手を持ちあげるとランディはヒナの耳元で「手を見ていて」と囁いた。


 耳元で話すのもナシでー!

 ますます焦るヒナ。

 ランディの唇が再びヒナの左頬に触れそうで触れないギリギリの位置で止まると、ヒナからまた魔力がブワッと溢れた。


「見えたかい?」

「えっ?」

 何が?

 今、何が見えたら良かったの?


「よく見ていて」

 ランディが繋いだ手を少し上げて見やすくしてくれる。

 頬にランディの唇が当たり、ヒナの魔力が溢れた。


「ま、魔力……?」

 ランディと繋いでいる右手に薄く何か光が出る。

 薄いオレンジのような光が見えたような気がしたヒナは驚いて目を見開いた。


「見えたね」

 ランディはグレーの眼を細めて嬉しそうに微笑むと、ヒナの耳に口づけを始めた。


 手からはオレンジの光が見える。

 私にも魔力があったのは嬉しいけれど、でも、無理!


 色っぽい吐息が耳に掛かる。

 こんな大人の状況はムリ!

 これ以上は無理!


「あ、あの、もう、本当に、そのっ」

 ヒナは本当にもう辞めてくださいと涙目で訴えた。


 ランディが左腕を緩めると、ヒナは恥ずかしすぎてしゃがみ込む。


「ヒナ姫」

 ランディがヒナの頭をそっと撫でると、ヒナの身体がビクッと動いた。


「荒療治でごめんね」

 ヒナは普段何かが原因で心に蓋をしているので魔力が出ないのだとランディは説明した。

 魔力の少ない人でも普段から少しは魔力が見えるのに、ヒナは全く見えない。

 それは心を閉ざしているからだ。

 パニックの状態であれば魔力が解放されると思い、試してみた。


「私にも、魔力、ありました」

 しゃがんだまま、真っ赤な顔を隠したヒナがつぶやく。


「優しい色だね」

「ありがとうございます。でも、恥ずかしかったです」

 あぁ、マズい。

 本当にこの子に夢中になりそうだ。

 ランディはヒナに手を差し伸べると、グレーの眼で優しく微笑んだ。


    ◇


「ヒナ、一緒に寝よう」

 夜、真面目な顔で扉の前に立つアレクサンドロにヒナは苦笑した。

 ユリウスが今まで鍵のかかっていた奥の部屋を掃除し、ベッドを置くように手配してくれたのに一緒に寝たら意味がないだろう。


「アレク様、今までベッドを占領してしまってすみませんでした。今日からは狼の姿じゃなくて人の姿で寝てくださいね」

 ヒナがニッコリ微笑むとアレクサンドロは眉間にシワを寄せた。


 いつものように狼の姿になるとブルブルと服を脱ぐ。

 アレクサンドロは新しく準備されたヒナのシングルベッドに乗ると枕に顔を乗せ伏せをした。


「アレク様っ」

 ちゃんと自分のベッドへ行ってくださいとヒナが訴えてもアレクサンドロは動かない。


「一人で寝られますよ?」

 そんなに小さな子だと思われているのだろうか?


「人の姿に戻ったら自分のベッドへ行ってくださいね」

 約束ですよとヒナが言うとアレクサンドロのグレーの眼が揺れた。


 ヒナは眼鏡をサイドボードに置くとアレクサンドロの横に寝転ぶ。


 アレクサンドロのベッドはキングベッド。

 ここはシングルベッド。

 狼の姿とはいえ、大きなアレクサンドロと一緒に寝るにはシングルベッドは狭かった。


 いつもよりも密着がすごい。

 アレクサンドロのもふもふの身体が気持ちいい。

 天然のぬいぐるみだ。


「アレク様、私にも魔力があったんですよ」

 アレクサンドロは狼の姿なので返事はできない。

 それでもヒナはアレクサンドロに報告したくなってしまった。


「魔力がないから追い出されたと思っていたので、すごく嬉しくて……」

 もふもふで暖かくて、ヒナはすぐにウトウトしてしまう。


「グアォ」

 良かったなと言った時には、もうヒナはアレクサンドロにピッタリくっついたまま眠っていた。

 

 甘く暖かい魔力がある事は知っていたぞ。

 森で初めて会った時からずっと知っているぞ。

 普段、今日の出来事どころか、何も教えてくれないヒナが自分から話してくれた。

 人の姿に戻らなければ朝までここに居て良いのだろ?


 アレクサンドロは狼の姿のままゆっくりと目を閉じた。



「アレク様」

 ユリウスは全く使われていないアレクサンドロのベッドを見て溜息をついた。

 シーツが綺麗に敷かれたままで、一度もベッドに入っていない事がわかる。


「朝まで狼だったからいいだろ?」

「良くないです」

「襲ってない」

「当然です」

 ユリウスの冷たい回答にアレクサンドロは溜息をついた。


「あ、あの、ユリウス様。私が朝までアレク様を捕まえていて、戻れなかったんです」

 もふもふで気持ちが良くてとヒナは真っ赤な顔で説明した。

 まるでぬいぐるみを抱きしめて寝るかのように、アレクサンドロをしっかり捕まえて寝ていたので申し訳なかったとヒナが言う。


「暖かくて」

 本当にごめんなさいと言うヒナにアレクサンドロは「毎日一緒に寝てやる」と笑った。


 今日は金曜日。

 ディーンはアレクサンドロの部屋を訪れ、ヒナを連れ出した。


「ヒナ嬢、今日は図書室へ行って本を借りてみましょう」

「私も借りられるんですか?」

「えぇ。身分証のドッグタグがあれば大丈夫です」

 イーストウッド公爵家の紋章入りのドッグタグは、宰相の命令でディーンが作った物だ。

 まさか養女として登録し、国外への移動制限や行動監視までされるとは思っていなかった。

 このドッグタグで買った物、借りた本、遊びに行った場所、収入も全て宰相が確認できてしまう。

 何も知らないヒナが可哀想だが宰相の命令には逆らえなかった。


 中庭を通り図書室へ向かう。


「あっ! ディーン! っと、あ、」

 ヒナを見て一瞬どうしようか悩んだように見えたが、切羽詰まっているのだろう。

 茶髪の男性は手でごめんポーズをしながらディーンに話しかけた。

 いつものクレーマーが来て困っていると、上司を出せと言っていると茶髪の男性はペコペコする。


「ハサウェイは?」

「今日休み」

 ディーンは溜息をついた。

 ハサウェイは彼の本当の上司、ディーンは隣の係だ。


「ここで待っていますよ?」

「一緒に行きましょう。一人にはできませんので」

 申し訳なさそうに言うディーン。

 ヒナは手を繋がれ、文官たちの建物へと連れて行かれた。


 応接室ではなく、みんなが働いているエリアの片隅にあるテーブルと椅子。

 泣きながらペコペコしている女性と高圧的なお爺さんが見えた。


「お待たせしました。話を伺います」

 ディーンはお爺さんの前に座り、泣いた女性を下がらせる。

 ヒナと呼びに来た茶髪の男性はディーンの近くに立った。


 お爺さんは手続き方法が分かりにくい、書かせる項目が多い、書き方がわかりにくい、説明が不十分、処理が遅いなどあれこれ文句を言う。

 ディーンはお爺さんの話を否定も肯定もする事なく一通り聞き続けた。


「だからちっちゃい子でもわかるくらいの……」

 文句の途中で小さいヒナが見えてしまったのだろう。

 お爺さんはヒナを指差し、この書類をあの子が書けるか試せと言い出した。


 巻き込まないでください!


 ヒナは目を逸らしたがお爺さんは引きそうにない。

 隣に座れとお爺さんに言われ、ヒナは渋々横へ座った。

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