わたくし、ファンに囲まれております
令嬢達に囲まれてるなんて、男なら有頂天ですね。
数日後、授業の後、エレオノーラが明日の予定を話す様に何気なく口を開いた。
「古くからの友人とも先日、やっと話ができる様になりましたの」
微笑みながらエレオノーラがイヴォンヌの目を真っ直ぐ見詰める。
「古くからのご友人?」
「ええ。急に話せなくなってしまったのですが……」
エレオノーラが何を言いたいのか理解しようとイヴォンヌも彼女の蒼い瞳を真っ直ぐに見詰めた。
「少し気難しい人ですが、イヴォンヌ様とは気が合いそうなの」
「お会いしてみたいですわ。エレオノーラ様がそれほど大切にしていらっしゃる方なら」
「嬉しい言葉。近々紹介しますわ」
エレオノーラの言葉にイヴォンヌは何故か目が潤んでしまう。
物語の様な学園生活の中、エレオノーラの周りには問題の高位貴族令息達の婚約者達がいつの間にか集い、楽しげに笑っている。
「エレオノーラ様の物語は読んでいると次はどうなるのかしら?とドキドキしましたけど、実際は大丈夫なのかしら?と思ってしまいます」
アルガン宰相令息の婚約者であるフェノミナ・レント侯爵令嬢がクスクス笑いながら言えば、他の令嬢達も頷いている。
相変わらず問題児達は男爵令嬢の周りに侍っている様だ。
男爵令嬢もイジメられた、と泣いているらしいが、誰も彼女が本当に泣いているところを見たことがない。
しかも問題児の婚約者である令嬢達は、こぞってエレオノーラの物語を読んでいるせいか、令息達が冤罪を被せ断罪の証拠を捏造しようにも彼女達は自分達の無実を証明できる様行動しており、学園に通う他の者達も皆、彼らの浅はかな行動を冷笑を浮かべ、何を言っても欠片も信頼していない。
彼らは日に日に追い詰められている事にまるで気が付いていない。
現実は物語の様に、主人公達にとって都合の良い事などほとんどない。
あるのは物語の様に、主人公達が危機に直面する事。
ただ一発逆転の転機は無い。
状況を変えられるのは自分達の力量だけだと言うのに、彼らはそれをまるで判っていなかった。
「ご両親の権力がモノを言うのは下位のものに対してだけ、と理解できているのでしょうか?」
ハモン騎士団長令息の婚約者であるレーネ伯爵令嬢がはぁ、とため息を吐く。
下位のもの達になら権力で押し潰す事はできるが、今、彼女達の前で微笑んでいるのは絶対権力者のエレオノーラ。
彼女の前では小国の権力など、煩わしげに飛ぶ羽虫の様なものだ。
ウチの猫
猫は寝ている姿が可愛い。たとえ目つきが鋭いおっさんでもやっぱり可愛いです。