わたくし、予知など出来ませんわ
書いた本人もびっくりだろうなぁ。
「シスレー公爵令嬢。これから学園長に挨拶に行くのですが、学園長室まで案内をお願いしても良いかしら?」
ふわり、と微笑むエレオノーラは頭を下げているイヴォンヌを咎めるつもりはない、と言う意味で案内を頼んだ。
「喜んで」
高位貴族の令嬢らしい、優雅なカーテシーにエレオノーラ達は頷いた。ステファノンの取り巻きは彼女が何者か理解できないのか、更にイヴォンヌを怒鳴ろうとしたが、ステファノンがそれを遮った。
「隣国からの大切な留学生の方々に醜態を晒すな。失礼しました。学園長室までは私が……」
「不要です。下でモノを見る方と仲良くなどしたくありません」
ステファノンの言葉を遮り、拒否をしたエレオノーラを取り巻き達が、不敬だと叫ぼうと睨むが、デビッドの鋭い視線に怖気付き、開けた口をハクハクさせ、言葉を呑み込んだ。
どうやらこの面倒な一団はエレオノーラの事を知らない様だ。
マルケナスの高位貴族の子息でありながらこのていたらく、乾いた笑いすら出てこない。
「エレオノーラ、案外、貴女の想像力は現実的なのかもしれないね」
「そうかもしれませんわ。ですが、それを本当に行えば、物語よりも悲惨な現実になるかもしれませんわ」
既に2人はステファノン達を視野に入れず、居ないものとして会話をしていた。
「エレオノーラ王太女殿下。わたくし、殿下のお書きになった物語の大ファンなのです」
学園長室に案内するイヴォンヌが頬を染めて、エレオノーラを見詰めている。
「嬉しいお言葉ですわ」
「特に『薔薇は棘まで美しい』は何度も読み返してしまうほどです」
『薔薇は棘まで美しい』はエレオノーラが最近書いた、所謂ざまぁ返しの話だ。
しかも、今の状況によく似ている。
「シスレー公爵令嬢。物語と現実を混ぜ合わせて見る事は良い事ではありませんが、何らかのお役に立てれば幸いですわ」
エレオノーラの言葉に、イヴォンヌは静かに頷いた。
ウチの猫
おっさんなのに甘えん坊だ。私の膝の上が定位置だが、寝る時は胸の上で寝る。6キロは重い。