後日談 アルフレッド編
やっと完全完結に辿り着きました。
アルフレッド編
「正直、ステファノンがあそこ迄使えないとは思いませんでした」
ステファノンの処分を終わらせたアルフレッドは、目の前に座るマルケナス王に呆れた顔を見せた。
「情報の精査の仕方も操り方もアルフレッド、お前と同じく教えたのにな」
マルケナス王も呆れているし、王妃もうんざりした顔をしている。
「イヴォンヌちゃんの優秀さを見抜けないのだから、仕方のない事ね」
マルケナス王家はサティナス王国の属国ではあるが、優秀な諜報機関を使いサティナス王家の信頼を勝ち取っていた。
「小国には小国の強みがある、と何度も教えていたが、ステファノンは阿呆だった様だ」
「父上、まさかと思いますがステファノンにもトラップを?」
「当然だ諜報機関を生命線にしている国の者がトラップに掛かるなどあってはならない」
王の言葉に王妃も頷く。
「貴方はあっさり見破って、それを利用してたのに」
確かにそうだ。
アルフレッドは学生の頃、ハニートラップを仕掛けてきた少女を利用して自分の側近候補の素行調査や令嬢達の勢力分布図を極秘で調べ上げた。
「お陰で、私は良い部下に恵まれましたよ」
アルフレッドにハニートラップを仕掛けた少女はそのままアルフレッドの影になり、側近達も問題が無い事もわかった。
「流石に毒殺までは油断していた様だがな」
耳の痛い言葉だ。
「それで今回の令嬢はどうするつもり?」
「彼女に任せました」
王妃の質問にアルフレッドは曖昧に笑った。
影となった彼女がお任せ下さい、とかなり厳しい目をしていたから、まぁ普通には終わらないだろう。
だが、自分が知る必要は無い。
「どう?落ちぶれヒロインさん」
地下牢を掃除していたミアが顔を上げると、いつの間にか黒い服を着て覆面をつけた女が立っていた。
「あんた誰?」
見た事もない女にミアが噛み付く様に叫ぶと、女はクスクス笑う。
「アンタみたいに使えないのと同郷だなんて知られると、アタシ困るのよね」
「同郷?」
「本当使えない。アンタが思っているより此処は転生した人、多いのよ。しかも皆結構優秀なの」
女が何を言いたいのかがさっぱりわからないミアは掃除の手を止め、ジロジロと女を見た。
「何が言いたいのよ」
「ブランドが下がるから、アンタは馬鹿な女として此処で一生働いてね」
「な、何……」
ミアが文句を言う前に黒服の女がミアの喉を掴み、口に薬を流し込んだ。
喉に焼ける様な痛みが走り、ミアが暴れたが女は手を離さない。
「じゃあね、落ちぶれヒロインさん」
漸く女が手を離し、さっさと地下牢から出る時、ミアは文句を叫ぼうとしたが、がぼっと血を吐いた。
「安心して殺す気はないわ。余計な事喋らない様に声帯、潰しただけだから」
覆面を外し艶然と微笑む顔が、自分が転生したと信じた乙女ゲームのヒロインに似ていることに気が付き、出ない声で悲鳴を上げた。
「おや、もう終わったのか?」
執務室で働いているアルフレッドが、書類を持って現れた女に目を向ける。
「はい」
女は持っていた書類をアルフレッドの前に置き、静かに頭を下げた。
世の中には知らない方がいい事が多い。
アルフレッドは頷き、次の仕事が書かれている書類を渡して手元の仕事に意識を戻した。
END
最後まで読んで下さってありがとうございます。
後日談はエレオノーラと全く関係無い話になってしまいましたが、真実は小説より奇なり、を軸になってます。
また別の物語でお目に掛かれれば幸いです。
ちなみにずっと後書きで書いていたウチの猫は今日も私のベッドの真ん中で寝ています。