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当然、断罪しますわ。  作者: 紅月
21/22

後日談 イヴォンヌ編

イヴォンヌさんメインです。

イヴォンヌ編


「フェノミナ様、エレオノーラ様の新刊お読みになりましたか?」

「勿論ですわ。とても面白かったですもの」

「私も何度も読み返しましたわ」


卒業を祝うパーティーでイヴォンヌはあの時から親しくなったフェノミナとマルタと楽しげに話していた。


学園には既にステファノンやミアの姿は無いが、頭の中身が腐っている令息達は残っている。

だが、彼女達は彼らと関わるつもりはない。彼女達の視界をウロウロして何かを言おうとしている様だが、既に決着はついている。


「一体何がしたいのでしょうね」


フェノミナは視線を向けず呟いた。


「本当に鬱陶しいですわ」


マルタが眉を顰めながら頷いている。

彼らを切り捨てる決断をした彼女達には既に新しい婚約者がおり、関係は良好だと聞く。


イヴォンヌは数日前あった事を思い出し、ふぅとため息を吐いた。


アルフレッドからステファノンが離宮で幽閉されることは知らされていたが、特に何かをしようとは思っていなかったのに、突然ステファノンから最後に会いたい、と言われた。


「会っても意味はない、と思いますが」

「イヴォンヌにはね。でも、ステファノンには必要かな」


アルフレッドの言葉に首を傾げながらも仕方無く会う事にした。


身分を剥奪され平民になったとはいえその体に流れるのは王家の血。

下手な場所に置いては後顧の憂いが残るとも考えられ、王家が所有する北の離宮で生涯幽閉が決まった。


「……」

「……」


特に会話をするわけでも、謝罪をするでも無く、ステファノンは黙ってイヴォンヌを見ていて、イヴォンヌも静かにソファに座っていた。


面会は30分。

黙っていても時間は過ぎ、イヴォンヌは役目を果たせる。

10分、沈黙の時間が過ぎた。


後20分ですね、とイヴォンヌが考えていると


「……何故何も言わない」


沈黙に耐えきれなかったのか、ステファノンが重い口を開いた。


「言わなければならない事がありませんので」


冤罪を掛けられそうにはなったがあの夜会では何も無かった。

元々候補者ではあったが婚約者でも無いし、ステファノンを慕ったこともない。


「イヴォンヌ、お前は……」

「シスレー公爵令嬢と。平民の貴方に名を呼ぶ事を許しておりません」


毅然とした言葉。熱の無い視線。全てでイヴォンヌはステファノンを切り捨てている。


「何故、そんな態度を取る。兄上に遠慮か?お前は私を……」

「お前?お前とは何方です?」

「イヴォンヌ・シスレー、お前だ」


顔を真っ赤にし立ち上がるステファノンだが、すぐによろける様に椅子に座った。足には鎖、手には手錠とほぼ動けない状態でステファノンは粗末な椅子に座らされているのだ。


「わたくしが此処にいるのは、アルフレッド様の為。本心を言えば、お慕いした事もない殿方と向き合うのも苦痛です」

「えっ?」


何故ステファノンが驚いた顔をしているのかイヴォンヌは理解したく無いが、納得した。


「大切な事なので、もう一度申し上げます。お慕いした事もない殿方と向き合うのは苦痛です」


徐々にステファノンの顔が青褪めていく。


「嘘だ。嘘に決まっている。おま……」

「人として努力もなさらない。義務も果たさない。思いやりさえない殿方の何処に慕う要素があるのでしょう?」


ステファノンの言葉に若干食い気味で言われたイヴォンヌの言葉は、切れ味の悪い刃物の様にステファノンの自尊心をズタズタにする。


切れ味のいい刃物の傷なら傷口も綺麗に塞がるだろうが、イヴォンヌの言葉の切り口は修復出来ないほどだ。


その後、ステファノンは1人ぶつぶつ何かを言っていたが、イヴォンヌは時間まで黙り、優雅な挨拶をして部屋を出ていった。


「ありがとう。これでステファノンは再起不能だ」


扉の前で待っていたアルフレッドの言葉にイヴォンヌは苦笑を浮かべる。


ステファノンが自分に好意を持っているとは思えないが、余計な事を考えられるのは困る。

イヴォンヌはアルフレッドのエスコートを受け、城へと戻った。


「別の場所できっちりと、お慕いした事がない、と伝えてみてはいかが?」


フェノミナ達の声で、意識が思考の縁から現実に戻ったイヴォンヌがそっと囁いた。愚かな行為をした者は、それ相応の罰を受けるべきだ。


此処は物語の世界の様な、優しい場所ではない。


「断罪はエレオノーラ様の新刊で済んでますもの。わたくし達がするべき事ではありませんわ」


イヴォンヌの笑みにフェノミナ達も頷いた。

後一本、アルフレッド編で完全完結します。


ウチの猫

ビビリの内弁慶ですが、おやつをくれる人にはちょっとだけ甘える。マグロをくれる人に対しては、腰が引けてても頭をグリグリ押し付けているからちょっと笑えます。

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