歴史は繰り返す
細い身体に多数の刺青、瞼からは黒いクマと唇に銀色のピアス、肌色のキャンバスに色を入れる彼女の手はペンを持つ、上半身が露出したスチュースカは椅子に横たわり肌を突くペン先からの痛みを受け入れる。
黒い液体が染み渡る、乳房に蛇が巻き付き、先から僅かな血が出る、蛇はやがて透き通るように肌に滑り込み、皮膚を残す。今度は臍へ迷路を描き、背を丸める犬のように、脅威となる。
「気分はど?」
絵描きが訪ねる
「最悪」
「そうなの?けど、イカしてる」
肌に残る黒い紋様、スチュースカは笑う。
「ドトードの尻尾でも踏んだ?ひっどい顔、してる」
「それは、死んだから」
絵描きは微かに笑う
「なんの冗談?」
「うそじゃない、死んでるのよ」
彼女は首を傾げる
「ニューデリーは美味しいよ、気分が優れる」
絵描きは注射器を見せびらかした。
「チップはないし、初体験にしちゃ、少し不味そう」
「そう?楽に、トべるのに…」
「ラドをバッグで飛ぶ方が気持ちいいわ」
「災難だった、よね」
「そうかも」
「楽園の感触はどうだった?」
「出来が悪い模造品がゴロゴロしてて、そこの上に私がいた。多分、取り違えられたんだと思う」
「じゃあ、別の誰かが死んだんだ」
「そう。顔も見えない誰か」
「どうでもいいやつだね」
「この先、どうするの?」
「もともと、宛先に沿って歩いてただけだから、ここに居ないのなら次の送り先に向かうしかないかな」
「彼を連れていきなよ」
「彼」
「役に立つから」
「私、見捨てられたの」
「事情は知らないけど、あんまり気にしなくてもいい、ほら彼、人形だから」