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時計仕掛けのエンドロール  作者: みたらし団子
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よそ見をするからそうなるのさ

裏通りは家が立ち並んでいました。どの家も年季を感じさせるような赴きを備えていたけれども、逆に新しい家は見るかぎりには見当たらなかった。


子供達は確かにいた、皆物陰からこちらをじっと伺うような視線を送っている。その視線が敵意から来るのか、畏怖から来るのか私には想像することしか出来ないけれど、皆、よそ者である私に興味を示しているらしい。


畏怖と敵意は向けられているだろうと思う、というのも、子供達が大人に対してどのような感情を抱いているのか、まさにそれはここの大人達の子供に対する様子を見ていれば容易に想像出来るから。


「この街はね、昔は観光地として栄えていたんだ、近くに湧く源泉、美しいサクラが咲く季節には多くの観光客が押し寄せていた」


マキアさんは事細かにその日起こった出来事を語る。


あれは、数年前、丁度そのサクラが咲く頃、多くの観光客が押し寄せる季節に起こった。


それは夕方だった、少し外に目を向けるとそこには満開のサクラが咲いている。

観光客は往来の多い裏通り、当時は裏参道と言ったかな、立ち並ぶのは居酒屋や宿屋、そこは今日も土産物を引っ提げた観光客でごったがえしていた、ある観光客が空を見上げる。


「あれ?なんだっけ?あれ」


上空を指差し隣の友人に訪ねた


「え?なに?」


「いや、空にさ、何か」


その二人は潰れた。


飛び散った血や臓器、地面はひび割れ、人々は一瞬で恐怖に巻き込まれた、我先にと逃げる人、転倒した子供を踏み潰しながら逃げる人、人波に押し潰されて息絶えた人、そして火を吐くドラゴン


そこに集まった人を掃討するのにさほど時間はかからなかった、足元には何人もの死体が転がっている、何せ通路が狭い、放っておいても何人かは勝手に潰れて死んでいたと思う、残った人は火に炙られ丸焦げ、ドラゴンがわざわざ爪を使うまでもなかった。もちろん、生き残った人は居たんだ、死んだふりをしていたり、物陰に隠れていたり、もちろんドラゴンは気づいていた、それでも別につついてみたりはしなかった、人間は骨が太くて食うのにも苦労するし、美味しいわけでもない、ただ、潰してみたかっただけだから、人間が蟻地獄を見て潰してみたくなるのと同じように、ドラゴンも人間を見ると潰してみたくなる時くらいある、ドラゴンは満足するとすぐに帰っていったよ、他に用はないからね、そのうち空を飛ぶのにも疲れて近くの森で眠ったよ、おやすみってね。


「それでその後どうなったかのか、だけれども、残った人間が伝えたんだ、『あそこの村はドラゴンの生息圏だった、俺達は生き残ったが、残りの奴らはみんな殺された』とね、事実なんだから仕方ないよね、当然観光客は来なくなった、ドラゴンの棲みかなんかには誰も行きたがらない、結果、マフィアの密売場所として都合よく使われた、何軒かは焼かれたけど、家は残っていたし、子供は、捨てられた者も居るけど、奴隷として売られてた者もいる、そんな感じで変わり果ててしまったものだから、表で商売をやってる連中も何処かの村か街に移って行ったし、残ったものは関わろうとしなくなった、今も互いに不可侵でやってるよ」


その絶望的光景、聞いただけでも吐き気がする。

マキアさんは蟻地獄を見ると潰してみたくなるものと表現したけれど、そんなものはごく一部だし、そんな調子で、人が殺されるのには納得がいかない。


「まるで見てきたような…」


「ああ、実際にみたわけではないけれども見てはきたよ」


「?それって、どういう」


「全ての過去は星が観察している、なら私達はその記録を覗くだけ」


「星と繋がる…聞いたことがあります、星読み、先天性の異能」


「そこまでたいしたことではないし、僕自身には何の力もない」


「それってどういう…」


「あ、ほらあのこ、じゃないかな?君のバッグを盗んだ子供って」


建物の影になにやら大人と揉めてる子がいる。

バッグが盗まれた時、ちらっとしか見えなかったけれど短髪で活発そうな見た目の…


「そうです、おそらく、あのこです」


「どうする?助けるかい?それとも放っておくかい?」


「あんなの放っておけない、助けます」


私は少年の方へ駆け出す、マキナさんは子供の事を心配しているはずなのに、動こうともしない、一体何をしたいのか私はマキナさんのことが良くわからない。


現場に到着するとそこには数人の子供と大人、子供は怯え、大人を睨み付けている。

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