あんたは生まれた時から人形なのさ
カチリ、ギリッ、バリッ
音がする、歯車が回る音、ネジがしまる音、火花が散る音
ドクン、ドクン、ドクン
音がする、脈うつ音、無機物が奏でてはならない音、心臓の音
生命の輪郭が無機物には填まらない、無機物に命は宿らない
ピキリ
秩序を崩す音がする、生まれ落ちる、人ではない、何が別のモノ。
『カラッ』『ドクン』
人形は動き出す、眼球を回転させながら、脈動を立てながら、乾いた音を立てながら、意識を持って確実に、起き上がる。
『?』
「君の疑問はわかる。意識を持たないものが何故意識を持たなければならないのか、自分は人の革など持っていない、金属の機能も木材の眼球も、命さへも何も持っていない、存在しないモノではなかったのか…」
女が語りかける、長身の綺麗な造形の女
『そうだ、俺は、私は、何者なんだ』
「君が何者かだって?そんなの、ただのモノさ。命を付けた、革を付けた、肉体を調達した、機能を宿した、お前は只の人形だ。
だが…そうだね、君に名前をやろう」
『名前?』
「私が産み出した、神にも等しいお前よ、名はマキナ・マキア、自身に意味を与えよ、お前は何になる、何を求める?」
『私は…』
「私の為に生きている、などとつまらない事は言ってくれるなよ?、それは君の人生だ、産まれた時点で私には関係ない、他人だ」
『俺は…わからない』
「そうだろう、生まれてすぐに意味を見つけれるのならば、それぞれには産まれたときから役割があるはずだ、ただ、残念ながらそんなものはない、だから人は死ぬんだ。
マキア・マキナ、お前は違うだろう?
名は既に与えた、さぁ、どこへとも行け、そしていつかその可愛い顔を私に見せに来ておくれ、それだけで私は満足だ」
女は去っていく、僕は追いかける、足が絡まって、躓く、当然だ、僕は足の動かし方も手の動かし方も何も習っていない、布一枚羽織っただけの生まれたての機械なのだから。
途方にくれて、途方にくれて、空腹を覚えるまで時間がかかった