~次回作予告~
「君……悪いけど、今日パーティから降りてもらおう」
「そうか……俺、何~ンにもしてないしな、しゃーないか。世話になったな」
「ちょっと待った、ならアタシ降りるよ」
「私も、ですね」
「……」コクリ
「え」
「ちょっと待て!魔王打倒もかなり来たんだぞ、みんな勇者に協力しろってば」
「なら。パーティ解散、あとは自由!ってことでいいわね?」
「え」
世界の終わりが……今、始まった!
◇ ◇ ◇ ◇
~魔王城~
「魔王様、報告です。
勇者の奴ら、パーティを二つに分けたようです」
「ほう……挟撃か、それとも二面作戦か。随時報告せよ」
・・・
「魔王様、報告です。
勇者パーティの片方は勇者単身で、こちらに向かってくるようです!」
「ほほう、これはオトリか。して、もう片方は?」
「それが……
故郷で飲み会を始めました!!」
「何でだよ!!」
・・・
「魔王様、報告です。
四将軍・ドラゴン様が……単身の勇者と激突、討死しました!」
「ぬう、中々の腕前のようだな。その他は?」
「それが……
四天王・エゲフ様が、勇者別動隊の飲み会に参加しました!!」
「何でだよ!!」
・・・
「魔王様、報告です。
四将軍・ハンゾウ様病死の影響で、直轄領土に不安が走っております!」
「ぬぬぬ、これは深刻な問題。その他は?」
「それが……
辺境領土に、勇者別動隊の飲み会が伝播しました!!お祭り騒ぎです!!」
「何でだよ!!」
・・・
「魔王様、報告です……!」
「今度は何だ!?」
「それが……
勇者が、勇者が……っ
いらっしゃいませ!!」
「歓迎するな!まずは落ち着け!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「よく来たな勇者よ!我の力の前に絶望し、死んでいくがいい!!
ミュージックスタート!」
四方から、コーラス付きゴージャスな管弦楽が鳴り始めた。
「まぁ待て。その前に、僕はお前と話をしに来たんだ」
「命乞いの類か?」
「世界の在り方についてだ」
「どちらが支配するか、それだけであろう?」
「違う。今、何が起きてるか、如何なる異常事態か、わかってるのか」
「ほう?言ってみろ。ミュージックストップ」
「もう、僕が言うまでも無くわかってるだろ?
世界中で、……飲み会が始まっている」
「貴様の別動隊が始めたことであろう、我が領土は、収拾がつかぬ騒ぎだ。
貴様の指示か?大したものだ」
「……違う。仲m……アイツが全部やったことだ。
僕は、とんでもない化物を、野に放ってしまったようだ」
「……まさか、あのふざけた男のことか?」
「!魔王、お前なぜ分かる……」
「何故も何もない、貴様も居たであろう。
初めて我と貴様らが対峙した、あの時を……」
「……ああ、そうだったな、お前が僕達の故郷に侵攻したアレか」
「我が軍は圧倒的に優勢、だが我は貴様を取り込めばと考えた。
言ったな、『降伏しろ、さもなくば町の全員、煮込んで喰らってやろう』と」
「そしてアイツは、それにノータイムで応えてたね。僕が発声する間も与えず……」
『へー?なら俺も、一杯相伴に預かろうか』
「結局我が軍勢は撤退することになった、配下全員ドン引きしてな」
「僕も同じくらい引いていたよ……」
「でも、僕はアイツに一目置いていたんだ。
力も魔力も頭も弱いくせに、不思議と皆アイツの元に引き寄せられていく。
思ったんだ、コイツひょっとしたら、上に立つ能力があるのかもな、と」
「ふむ」
「別のとある日。何の気なしの雑談。
“魔王”を倒したら、その後どうするか、って」
「我の前でそれを話すとは、良い度胸をしているな」
「まぁそう言うな。
僕は答えたんだ、
『そうだな。君を上司に祭り上げた後、旧魔王軍を管理する部門の長にでもなるか』って。
『どれだけ多くても、僕なら抑えられるから』って」
「配下宣言と、組織のリスク管理、か。
悪くない回答だが、武力所有とは警戒される回答でもあるな」
「そうしたら、アイツは笑い飛ばしてね」
『みみっちい事言いやがって!どうして、
“僕が次の魔王になって、領地も配下もまるっと統治してやる”ぐらい言えねぇんだよ!』
「何だそれは……ヤツは莫迦なのか?」
「……永遠とも思える程の、底無しの、ね。
少なくとも、僕がそうなっても笑って見過ごすくらいには」
「お前は“魔王”を名乗っている。
事実、世界にお前より強い奴などいないだろう。
僕は“無双”を自負している。
戦闘の才能だけに生きる僕は、お前にも勝てるだろう。
だが……僕もお前も、アイツにはきっと勝てない。
アイツ自身は別に、無能ボンクラだ。だが……
アイツは……底の無い沼で、彼方まで無限に広がる空だ。
人を、力を、能力を、その場に在るもの総てを、
無限に覆い尽くし、取り込んでいく……
流石に“無限”には、勝てない……」
「……」
「……」
「おい、“勇者”よ」
「何も言うな、“魔王”よ」
「ほう?理由を聞こうか」
「きっと、お前と僕は今、“同じことを考えている”から」
「……そうか、“勇者”よ」
「……シン、と呼べ」
「なら我のことも、セキウと呼ぶがいい」
◇ ◇ ◇ ◇
~城と化した故郷~
「おうシン、久しぶりだな!!
お前ひとりで魔王倒したんだってな!?いやマジでスゲーよ、俺尊敬するわ」
「……君の方が、よっぽど“魔王”だよ。
行くぞっ、セキウ!!」
「応っ!覚悟!!」
次回作
『 「勇者パーティから追放されたんだけど、みんな俺についてきた」 』
制作予定、全くなし!