<プロローグ>
これは、ニートの男が、ある日古本屋で100円で売られていた古文書からよくわからない生物を呼び出してしまい、ついでに本の中に吸い込まれて「本の国」に実体化し、なんやかんやで本の国のお姫様と小人たちと世界を救う勇者になっちまう話である。
今日出来る事は、明日も出来る。
嫌なことは、明日やる。
明日から、本気出す。
ヘタレニートな男がいた。
彼は某出版社の小説家新人賞を取った。
だから、小説家を名乗った。
しかしその後、小説を1冊出版したきり、同人誌のみでしか彼の作品を見ることはなかった。要するに、文章で食えていない男であった。
それでも彼は「小説家」を名乗り続ける。
そう。実態は家の金を食い潰すニートだったとしても…
そんな折、ふと立ち寄った古書店で、彼はある本に目を留める。
古書店の入口脇の「どれでも100円」コーナーの棚に、その本はあった。
色褪せた赤い別珍が張られた文庫本サイズのその本は、まるで誘っているかのように彼の目に留まった。
手に取りなさい…
私を、手に取りなさい…
彼は、中をあらためることもなく、タイトルさえ見ずに、その本を手に取ると、何かに操られているようにふらふらと、レジへ持って行った。
このあと、一体なにが起きるか、全くわからずに…