居眠り
車内アナウンスが鳴って、Kさんは目を覚ました。
(やべっ)
自宅のある田舎駅は通り越して、都市的なホームに到着する。
(やっちまった~)
Kさんは電車を降りた。
エスカレーターを下り、反対側の線路に向かう。
外は暗くなっていた。
時刻はまだ六時だったが、秋に入った空は日暮れが早い。
スマホが鳴る。
『もしもし。K。K!』
大学の友人からだった。
彼とは高校時代からの付き合いで、地元でもよく顔を見る。
「 T野じゃん。なに?」
『おまえ、今どこにいんの? 『××駅』?」
「いや、乗り過ごした。『〇△駅』。これからそっちに戻るところ」
友人は気が狂ったように『そこにいろ! そこにいろ!』とわめいた。
「なんだよ? そんな必死になって」
しつこく繰り返される命令に、Kさんは少し苛立つ。
『……今、××駅を通りかかったんだけど……』
友人は急に声を小さくして言った。
『ホームに、鉈を持った女が立ってたんだ』
※この物語はフィクションです。
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