ホッチキス恋愛
ペアネックレスを、告白の後プレゼントされた。それは彼の趣味のビリヤードと私の趣味のダーツができるおしゃれなバーで、ありきたりな愛を囁かれ頷いた後だった。テンプレートな言葉を飲み込んで、その味がどうであってももう一度口にしたいと思えるくらい私は彼を好きでいる。
そのくらいは、彼を好きだ。
恋には痛みを伴う、性行為がそうであるように。でもそれは慣れてしまえばどちらも薄れるもの。慣れてしまえるものだ。
帰り道、最寄り駅まで送ってもらった。駅から徒歩10分、虚無感を感じて歩く。この間に充足感を得られていたころの私と今の私は何が違ってしまったのだろう。何が変わったからその感覚を持ち合わせられないのだろう。
不安を知ったからか。終わりを知ったせいか。
ヒールの音が夜道に響く。少しだけアルコールを含んだ体に沈む。月は明るく、空は真っ黒だ。満ち足りてはいないのに、私の足は重かった。重力を感じるよりも、自分の体ごと重くなったように感じた。
いつかホッチキスを外す時のことを考えながら、ホッチキスの針の痛みを受け入れる。できれば多くの針で留めてほしい。痛くても構わない。離れてしまいたくない。未知を彷徨って続く日常に、私はやっぱり耐えられない。寄りかかって許される場所を欲してしまう。
ホッチキスの後ろに針外しがなければいいのに。どうかその針を取り除かないで、痛くてもいい。空いてしまったその穴を私は自分で塞げない。離れたくなっても離れない。離れる痛みを恐れている。離れてあなたのことも傷つけることを、知っている。傷つける針で居たいと思う。
ネックレスを外して、家のドアを開ける。
鍵を開けるときに迷った。いつか、あなたの針だらけにしてくれれば。
なんて、思ってしまう。
「一生一緒だよ」
その針がいつまで刺さったままでいられるのか、いっそ私が留めに行けばわかるだろうか。
カチャンと、音がした。
うわああって走り書きしました。久しぶりに勢いで書きました。
私もホッチキスのような恋愛をしてたなぁって思ってます。その針を外さないでほしい、って。
感想、評価等おまちしてます。モチベになります。
まだ君が僕を呼んでいる、という現代恋愛に少しだけファンタジーを足したようなお話を書いています。もしよければ。
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