第二話 幼女神
第二話 幼女神
「あ、また来たよ〜」
「おー、この人はどんな選択をするかなー」
声が聞こえる。
白い光が見える。
あれ?俺さっきまで授業をしてて…
「うわぁ!!!!俺刺されてしんだ!?……!?」
驚いて飛び起きた。
「ここは…」
一面真っ白だ。雪山の白さとも違う。俺は今、真っ白な空間に立っている。
そして、この状況からすればどうでもいいが、今俺は全裸だ。
「うぉぉ、いいリアクションですねぇ。定番定番」
「最近は目が冷めても無表情の人とかいるからねー。やっぱリアクション芸がないとねー」
「うわぁ!だれ!?」
振り返ると女の子が二人立っていた。そっくりだ。双子だろうか。
「どうも!生を司る神のタマンです!よろしく」
「どうもー、死を司る神ラマンでーす。」
「…。」
「あはっ!絶句してる!ラマン、こいつ絶句してる!」
「何から聞けばいいかわからないって顔してますねー」
「あの…」
「お、なんすか!」
「俺は死んで、今天国みたいなところにいる…ってことですか」
「ビンゴ!」
「ゴンビ!」
「あの、神って言ってましたけど、それにしては…その…」
「幼すぎる?」
「はい」
二人はおよそ身長150センチくらいだろうか。肩で揃えたショートヘアもあいまってだいぶ幼く見える。神ってもっと大人のイメージだったが…
「それたまに聞かれるんだよね。」
「みんな神をなんだと思ってるんだろーねー」
「逆に聞くけどさ?もし私達が常に雷を身に纏ってるいかついおっさんだったり、光を放ってる巨大な女性だっとしてさ、話聞く気になる??」
「へ?」
「いやぁ、そういうのが流行ってた時代もあるよ。でもさ、最近の人はさ、そういうの見ると夢だと思って話聞かなかったり、逆にビビりまくって気絶しちゃったりするんだよね」
「なるほど…」
「だから、私達みたいな若くてピチピチな神が受付やってるってわけ」
「かわいいは正義だからねー」
そういうものなのか。たしかにおっさんが出てくるよりは話を聞く気にはなる。
「それで、早速で悪いんだけど、あなたに提案があるのよ」
「提案?」
「そう、あなたは寿命を全うせずに死んだ。だから実はいま使える命が『余っている』状態なの。」
「それを手放すこともできるんだけどねー、他のところで使ってもいいんだよねー」
「他のところ…」
「そう、簡単に言うとあんたの国ではやってる『異世界転生』ってやつ」
異世界転生、現実にあったのか!
ということは
「異世界転生といったら、無敵な能力とか、新しい種族になれたり、すごい身体能力をもらえたりするのか?」
「はいストップ」
「出たよー典型的アニメ脳ー」
「そういうふうに簡単に何でも手に入ると思われると困るんだよねぇ…」
「こまるんだよねぇー」
「残りの命を使いたいなら、対価を支払ってもらわないといけない。」
「対価?」
「そう、あなたはなにか一つ『能力』を失うことになる。典型的なもので言えば、視力、聴力とか。言語能力とか運動能力を差し出す人もいたわよ」
「この間は空間認識能力とかの人もいたねー差し出した瞬間まっすぐ立てなくなったけど。今頃なにしてるかなぁー。ナメクジみたいに地面を這って歩いてるのかなぁー大変そうだよねー」
対価、か。話を聞いている限りこの対価は重い。どの能力もなくすとその後の人生に支障が出るものばかりだ。
「ダメ元で聞くが、ゆで卵をきれいに剥く能力とかでもいいのか?」
「んー、ラマン的にはできなくもないけど、向こうでの寿命三十秒とかになるよー。即死だね」
「言ったでしょ、『対価』が必要なの。あなたの人生において常に使用するものでない限り、認められないわ」
「………。」
「そこまでして生きたくないって場合は、ここで終わりにしてくれてもいい。全く新しい別の命としてまた生まれ直すこともできるわ。もちろんあなたの人格は残らないけど。」
「これは簡単に答えの出る話じゃないからねー。考える時間はたくさんあげるよ。」
俺の混乱し、悩んでいる顔を見て、察してくれだろうか。二人は答えが出たら教えてねとの声を残して消えてしまった。
差し出す能力、その後の人生、何を優先するべきだろうか…。