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説明①

「ここが今日からお前の教室になる」



 そう案内されたのは、社会科準備室だった。一見ごちゃごちゃしていて片付けられていないように見える。だが物が沢山あったが、ちゃんと整理をしているようで散らかっていなかった。掃除もしているそうで、窓から差し込む光の中に、埃はそんなに舞っていなかった。真ん中に向かい合わせで設置されている、二つのデスクは右側は誰も使用していないのか、上にはなにも置かれていなかった。左側のデスクは物が置かれているが散らかっている印象は受けない。


 なるほどな、と咲夜は感心した。社会科準備室は授業で使う教室から離れている。正直、社会科準備室があるだなんて知らなかった。確かにここなら人が来ないだろうし、久留島類と顔を合わせることもない。



「ここの掃除はオレがしているから、掃除の時間になってもここには来ない。だが、近くのトイレは来るから、その間はここで隠れていろ。一人でいるときは念のため、鍵を掛けておくように」


「分かりました」


「とりあえず、何もない机のほうに座れや。今日からお前の机だ」



 そう言って梅田が左側の席に座る。咲夜も向かいの席におそるおそる腰を下ろした。



「さて、色々と説明する前に謝りたいことがある」


「なんでしょう」


「俺だけだと物理的に無理だから、魅瑠に協力を要請した。その際、お前の過去のことを少し話した」


「まあ、それくらいは想定内だったのでいいですよ」



 物理的に無理だったのは分かるからいいし、梅田は魅瑠のことを信用しているみたいだったから、協力を仰ぐだろうなとは予想がついていた。



「ちなみに少しというのは?」


「記憶を少し失っていて、久留島とすごく気まずいことがあったこと思い出してしまって、それがすごく複雑だから、学校側にもほぼほぼ内緒にして協力することになった。と、説明した」


「かなり省きましたね……」


「どこまで話してもいいのか分からなかったからな。悪いが言ってもいいことは、魅瑠に直接言ってくれないか?」


「はい。こちらこそ、色々と気遣いというか……ご迷惑をお掛けしてすみません」


「そこら辺は気にするな。仕方のないことだ。さて、説明をするか」



 梅田の椅子がギシッと音を立てる。咲夜は改めて姿勢を直し、梅田を見据えた。



「まあ、説明って言っても、さっき言った通り、ここに引き籠もって自習をしてくれ。授業の内容は、ノートにまとめてくれるよう先生たちに頼んだ」


「でも、それじゃ先生達に迷惑じゃ」


「いいや? むしろ乗り気だったな。お前は授業態度がよく、分からないところがあったらタイミングを見計らって質問しにきたから、先生からの評価は高いぞ。それに頼み事を引き受けれくれるし」


「そ、そうですか」


「そんな感じだから、授業内容のことは心配するな。引き籠もる時間だが、放課後になってしばらくして人気がなくなった辺りのほうがいいだろう。人目があるしな」


「そうですね……」



 七限目が終わる少し前に移動しても、ここから玄関まで教室の前は通らないし、移動教室の前も通らない。けれど、校門で一人いるのは目立つし、教室から見える位置にもなる。裏庭を通って旧部室棟に向かっても結局教室から見えてしまう。それなら、放課後しばらく経った後のほうが目立たない。



「お前がここにいることは、お前が信頼している奴だけ話していい。ただし、口止めはしておくこと。それから、あまり通うのは良くないが、ここに来るなとは言わない。来てほしかったら誘えばいい」


「はい」


「俺も時間が空いたら、お前の勉強を見る。分からないことがあったら、訊けよ」


「……数学でも大丈夫ですか?」


「大丈夫だ。どの教科でも教えられる」



 さすがα、と心の中で呟く。



「あとはそうだな……あ、ここにいてもいい期間のことだが、いつまでもここにいるのは不味いから、二学期の始業式までだ」



 やっぱりか。咲夜は俯いた。


 それまでに心の整理をしなくてはいけないのか。出来るのだろうか。



「本当はクラスを替えたいところだが、それは無理だからな。すまないが、来年まで我慢してくれ」


「はい……」



 仕方の無いことなので、頷く。とりあえず整理できる時間がたっぷりあるだけありがたいことだ。

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