表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/113

久留島親子について①

 ああ、苛々する。


 意識のない咲夜の顔を思い出すたびに、心が静かに沸いてしまい、顔に出てしまう。


 暦は険しい顔で一人、通学路を歩いていた。その足取りは速く、そして一歩一歩が地面に食い込んでしまうような重く、力強い。


 いつも隣にいる咲夜は、入院して今日はいない。今日は念のため検査をするらしい。異常がなかったら、今日でも退院して明日から登校すると咲夜の母が言っていた。


 電話越しで聞いた咲夜の母の声は、焦燥していなかった。むしろ安堵していたように思う。命に別状がないかどうかは、今日の検査で分かる。きっと、命に別状はないだろう。


 その場にいた錦が言っていた。久留島類の告白現場を見た咲夜が、頭を押さえて倒れてしまったのだと。



(あれは、記憶を失う前の咲夜と会ったことがある……)



 それだけなら、まだいい。けれど、久留島類と接触すると頭痛がした咲夜を見ると、どうもそれだけではない。



(咲夜が倒れたのは、あれのせいよ!)



 二人の間に何があったのか知らない。けれど、何かがあったのは間違いない。咲夜の母が言ったことがある。記憶を失った直後の咲夜は、両親を見ても頭痛がしなかった、と。


 つまり、両親との記憶以上に、刺激的な記憶が久留島類との間にあったということで。



(やっぱり、あれは疫病神よ)



 叔母を死なせた男の息子で、少なからず叔母を自殺に追い込んだ一端があるはずだ。そのうえ、咲夜を苦しませている。


 叔母を不幸にしてくせに、咲夜も不幸にしようとしている。そんな気がしてならない。そこに彼の悪意はないとは思う。わざとやっていない、ただ面白がっている。それがなお、質が悪い。



(やっぱりあの男の息子ね。人の気持ちと命をなんだと思っているのかしら)



 風の噂で聞いたことがある。あの男が再婚したと。


 叔母のことがあったのに、再婚。あの男にとって、叔母はその程度の命だったらしい。



(それに、番が面倒くさいって言っていたらしいし)



 運命の番なのよ、と叔母が言っていた。運命の番だったはずの男は、叔母を捨てた。あの男にとって運命の番は、面倒くさいものでどうでもよかったものだった。


 その血は、しっかりと息子に引き継いでしまったようだ。あれには叔母の血が入っていないように思えてくる。


 暦はβなので、番のことはよく分からない。知識として知っているが、αとΩが番に対して、どのような感情を抱くのか。ただの愛情か恋慕か、はたまた執着なのか。正直言って、想像ができない。


 だが、少なくてもαである瓜谷は番に対して面倒くさいとは思っていない。運命の番にしろ、ただの番にしろ、自分が面倒を見ると決めたら最後まで見るし大切にするつもりだ、と語っていた。


 まるでペットに対する言い方にも聞こえるが、とても真摯な態度だったし、あの男と比べたらとても良い答えだ。


 番が面倒くさいという発言は、叔母のことがあっての発言かもしれない。けれど、つまり叔母が面倒くさかったと思っていたとも取れる発言だ。



(薔子おばさんが死んだのに、遺体を見ているはずなのに、面倒くさい? あれにとっても、薔子おばさんの命はその程度のものだったってことよね、つまりは)



 叔母のことを引き摺っていたのなら、まだ許せた。けれど、自殺した叔母のことを忘れてのうのうと過ごしている。許し難く、憎々しい。


 叔母にあんなことを言わせるほど追い詰めて、最悪の選択をさせたっていうのに。



「あ、こよみーん!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ