問いかけるだけ無駄で
盛大に溜め息をつく。静かになった病室に響き渡り、物寂しく感じた。
眠気はやってこない。目が冴えてしまって、当分やってきそうにもない。でもやることはないので、とりあえず横になった。
今日は色々とありすぎて、すごく疲れた。横になるまではそれをあまり感じなかったのに、横になった途端、疲れがどっと押し寄せてきた。
(そっか……まだ一日も経っていないのか)
気を失っていたから、一晩寝ていた感覚があるがまだ一晩経っていない。気分的には五日ほど経っているような気がする。色々なことが一日に濃縮された分、疲れも倍になっているのだろうか。
(学校、か)
学校には行きたいと思う。暦を安心させて、錦にお礼と詫びをしなくてはいけない。授業も出来れば参加して、勉強に遅れないようにしたい。
けれど、志津江に言われた通り、やはり久留島類と顔を合わせたくない。
ふいに、久留島類のあの微笑みを思い出した。やっとこっち向いてくれた、と呟いたときの、あの微笑みを。
あの微笑みは、久留島類にしては珍しい中身のある笑みだった。
胸が痛い。彼の嬉しそうな笑みでも優しい笑みでも、今の自分には無理だ。ただ、食い千切るだけ。彼を見たくない。
(きっと、ずっと、顔を合わせたいと思わない。見ない方がいい)
拒絶されたのに、顔を見たいなんて思うほど、神経はず太くない。教室には行かなくてもいいと言われても、ほぼ一年間それが通るだろうか。
いくらクラスメイトとの関係が薄いとはいえ、疑惑の目が向けられる。そして、あらゆる憶測が立てられる可能性がある。だから、一年間はさすがに無理だ。よくて夏休み明けまでだろう。
それから二年になるまで、どう立ち回ればいいか。考えなくてはいけない。
(そもそも、オレ、アイツのことどう思っているんだ……?)
色々な意味で特別な存在だ。それはハッキリ分かっている。けれど、特別は特別でも、そこに恋情は絡んでいるのだろうか。
運命の番だ。拒絶されようが、それは特別だ。けれど、そのフィルターを剥がすとどうなのだろう。
嫌いではない。それは分かっている。けど、好きなんだろうか。
あの日、久留島類を見つけたとき、湧き上がってきたのは歓喜だ。運命の番を見つけたときと、一目惚れしたときの感覚は多分違うと思う。
あの時、自分は久留島類に惚れたのだろうか。恋情を知る前に番を知ってしまったから、恋情がどのようなものか分からない。
(……考えるのは、よそう)
導き出したところで、何になる。答えを導き出しても、久留島類がどうこうすることもない。だから、これ以上考えても意味がない。
胸がズキズキと痛む。それを振り払いたくて、頭まで布団を被せた。
むしろ、答えを導き出さない方がいい。このままでいたほうがいい。きっと、答えを出してしまったら、後戻りできなくなる。
答えを導き出しても、結果は変わらない。
例えば、咲夜が久留島類の目の前で消えても、久留島類が必死に探してくれるはずがない。名前を呼んで、泣いてくれるはずもない。きっと、何も言ってくれない。
だから、答えなんていらない。このままが一番いいんだ。




