魅瑠に相談①
「…………月曜日の朝、錦と一緒にいたらアイツに絡まれて」
「あ、それ階段のところで見てたぁ! なんか久留島君、メラメラしていたね~!」
「見ていたら助けろよ」
四組を覗き込んで魅瑠も瓜谷もいなかった。だから、五組に行こうという話になった筈だ。あのとき、魅瑠が間に挟まってくれたのなら、もっとスムーズにあの場から離れることができたかもしれないのに。
そう思うと恨めしくて、魅瑠を睥睨する。八つ当たりだということは自覚していたが、それでもそうしてしまった。
「そこはあれだよ~。自分の身が可愛いというかぁ。でも指スマはないと思ったなぁ」
「それは同感だけど」
「あ、そのことはこよみんに言っていないよ! 他の子から聞いているかもだけどぉ」
「それはどうも」
言っていないのなら有り難い。今後の話がややこしくなる。
「なんかその後の久留島の様子が変で……ずっと不機嫌だったというか」
「あの久留島君が? ずっと仮面を張り付けてそうな久留島君が? どれくらい不機嫌だったのぉ?」
「お前の中の久留島がよく分かった。当たりだけど。そうだな……取り巻きが怖がるくらい不機嫌だったな」
「わぉ。それはすごい不機嫌だねぇ! 怖がっているところ、見たかったかも~」
取り巻きが怖がっているところを想像したのか、ぷふふ、と笑っている。
「お前、久留島の取り巻きたちが嫌いなのか?」
「好きじゃないね! 高飛車な態度がいけ好かないというか~。久留島君の前だけぶりっているのが、胸くそ悪いね! ぶりっ子なめんなって感じぃ」
「怒るところ、そこなのか……?」
怒るポイントがややズレている気がする。ぶりっ子ゆえの矜持があったりするのだろうか。
「それで、取り巻きたちはその後どうしたの~?」
「果敢にも不機嫌な久留島に話し掛けていた。そして、消沈した」
「あはっ! 無謀だね~! 考えなしなのかなぁ?」
「どちらかというと、空気を読めないというか……ていうか、取り巻き達に対して辛辣すぎないか?」
「そんなことないよ~。普通だよぉ。さささ、話の続きをどうぞどうぞ~」
はぐらかせた。掘り下げるほどの話でもないので、先に進むことにした。どこまで話したのかを思い出しながら、続けて言った。
「放課後、アイツに無理矢理呼び止められたんだ」
壁ドンされたことは伏せておく。あの時の冷たい目を思い出したくないし、なんとなく気恥ずかしい。
「ほう。久留島君はさっくんになんの用だったの?」
「なんか文句を言いにきたとかで。てっきり取り巻きの勉強教えてコールから助けてくれなかったから、その文句かって聞いたけど違うって言われたんだ」
「あ~。そういえばテスト前にそんなこと言っていたねぇ。それで、なんて言われたの?」
「さらに不機嫌になったんだ。なんかそれくらい分からないのかって、遠回しに言われたような気がする」
「ほうほう」
「で、一応理由を言ってくれたんだけど、それが最近図書室に来ないうえ、最近錦と一緒にいるからって。オレが誰と一緒にいようが、久留島には関係ないし、久留島も気にするようなことじゃないはずなのに、なんでそれで文句言われるのか分からなくて。なんか錦が、飼っている猫の拗ねている顔と一緒って言っていたのを思い出したから、まさかな、と思ったんだけど、久留島に訊いたんだ。拗ねているのかって」
「ズバッと訊いちゃったのか~。それで、久留島君はなんて返したの?」
「否定するかと思ったら、なんか鳩鉄砲を食らったような顔をしたんだ。それで『違うって言えたら、よかったのにね』って帰っていった」
「なんか意味深だねぇ。そのとき、久留島君どんな顔だった?」
「どんな顔って……」
あれは、どんな顔と表したらいいのだろうか。
悲痛? 少し違う。入り混じっていたけれど、そうではない。悔しそう? それも違う。冷たい顔? 冷たかったが、あれは自分に向けられてたというより。
どちらかといえば、あれは。
「あ」
ぴったりな表現を見つけて、思わず声を上げる。




