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受取人①

 結局、久留島類対策については、何も話さなかった。今までの放課後のことを根掘り葉掘り訊かれただけで、対策について話す前に別れたからだ。


 朝になっても、自分から言い出せないまま自分のクラスに戻った。久留島類のことから不機嫌になるというのに、朝から機嫌の悪い暦は見たくなかった。


 昼休みも結局、切り出すことが出来ないまま放課後になってしまった。



(このまま図書室に行ったら、暦が怒るだろうな)



 図書室へ続く廊下を眺めながら、そう考える。


 久留島類はホームルームが終わって早々、教室から出て行った。いつも通り図書室に向かったのだろう。



(行かない方がいいんだろうな)



 久留島類のことよりも、暦の機嫌を優先したい。


 だが、どこで暇を潰すべきか。教室は補習で使うし、自習部屋は上級生が占拠しているという。かと言って、暦がいる美術室に行くのも、部員ではない自分が赴くのは気が引ける。


 一人で帰るには、暦が心配だ。暦なら、魅瑠と一緒に帰るから心配するな、と言いそうだが、それでも心配だ。



(適当に歩いて、時間を潰そうかな)



 もしかしたら、人がいない場所があるかもしれない。以前まで昼食を摂っていた非常階段は放課後になると扉が閉じられるから入れない。それ以外の場所を探すしかない。


 図書室へ続く廊下から視線を逸らし、踵を返して人気のない廊下を歩く。


 音楽を聴きたいところだが、歩きながらのイヤホンは危険だ。これで何かあれば暦に怒られる。



(と、いっても一棟は空き教室なんてないし、二棟は騒がしいし、三棟は暦がいるから……でも、あそこが一番静かなんだよな)



 一棟はクラスがあり、二棟には音楽室やパソコン室、理科室などがあり、三棟は美術室や家庭科室、服飾室、工作室などがある。


 二棟は吹奏楽部の音楽があるので、楽器の音が廊下に響き渡っている。音楽室は防音だが、廊下で練習している生徒がいるのだ。


 管楽器は耳を劈く。ヘッドホンで音楽を聴いていても聞こえるので、勉強に集中できない。だから、二棟にもいたくない。


 三棟なら、使われていない教室がちらほらある。もしかしたら、鍵が掛かっていない教室もあるかもしれない。終わったらすぐに暦と合流できる。


 そう思い、棟を繋ぐ廊下に向かおうとしたとき、右側の角のほうから走ってくる音が聞こえた。このまま歩けば、角でぶつかる可能性が高いほどの距離だ。一旦止まって、足音の主が通り過ぎるまで待ったほうがいいかもしれない。


 立ち止まる。


 角から、足跡の主が現れた。男子生徒だった。


 勢いがあったので真っ直ぐ行くものかと思った。だが、男子生徒は急に曲がり、咲夜の真ん前に躍り出た。



「あ!!」



 男子生徒が驚愕の声を上げる。まさか曲がるとは思わず反応が遅れてしまった。


 男子生徒が減速するも、二人は盛大にぶつかってしまった。その衝撃で、咲夜は転倒し、男子生徒も尻餅をついた。



「ご、ごめん! 大丈夫か!?」



 男子生徒が慌てて、咲夜の許へ膝をつきながら駆け寄る。



「あ、ああ」



 上半身を起こしながら、頷いた。肘を打ったが頭は打っていないし、痛いがどこか痛めた感じはしない。



「お前こそ、大丈夫か?」



 男子生徒はきょとんとしたが、すぐ力強く頷いた。



「俺は大丈夫。頑丈だから」



 そう言ってニカッと笑った。そういえば学年を見ていなかった、とネクタイを確認する。赤いネクタイだったので、同じ一年のようだ。


 男子生徒が立ち上がって、咲夜に手を差し伸べる。その手を取ろうと手を伸ばしたとき、彼の手首に巻いているリストバンドが目に入って、咲夜は目を見開いた。



「そのリストバンド……」



 男子生徒も目を見開いた。

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