10話 ゴムゴムですかい?
ネコver
血の気が引いて、ストンと地面に膝をつく。
「...え、あずま?」
バンジョーが指定したビルに来ると、ボクの友達が下に落ちて肉が潰れる音が聞こえた。
「...うそ、嘘だ!アズマが死ぬわけない!」
そう思うなら下に向かい、確認するか、今すぐにでも下を見ればいいのだが、体が動かない。
「まだ...何も返せてないよ?アズマ...」
涙で視界が歪む。
ボクはいつからこんなに弱くなったんだろ?
今となっては真実はわからないが、親に捨てられたと思いあの男しか信じられなかった時の方が感情が揺らがず戦い続けることができた。
その男が自分を騙したと気づいた時、何もかも奪われた感覚になり体が動かなかった。
そんな中命懸けで助けてくれたのがアズマだった。
「...」
プチン
体の中の何かが切れて、ふつふつと熱いものが湧き上がる。
「...やル」
あまりにも低くて、最初は誰の声か分からなかった。しかしーー
「...殺シてやル」
視界が赤くなり、足が動いた時、自分の声だと気づいた。
階段を一歩で全てのぼり、バンジョーを探す。
「...おぉ?アズマの次は嬢ちゃんかぁ?」
いた。
「貴様、絶対ニ許さなイぞ」
「んん?あぁ、アズマのことぉ?」
「喋ルなぁぁぁぁあ!!!」
ズォンッ
敵が銃を放つが、そんなこと前から分かる。
もうどうやって動くのか、全て見える。
ボボキッ
「こぷ...まじぃ?」
膝を地面につけ体を捻りながら銃弾を避け、一歩で距離を詰める。
そして徒手で相手の首、腕、足の骨を瞬時に折り、自由を奪う。
「アぁぁぁァあああ!!」
再生して、折った骨が元通りになるが、その瞬間にまた踏みつけ、打ち抜き、粉々に砕く。
「ぐ...まじかぁ..」
ドドドド
人を踏み、打ち続ける。あまり見たことがない光景かもしれない。
普通の人間なら数秒で死ぬからだ。
しかしコイツは、さっき折った骨が数秒後には戻っている。まさに不死身だ。
事務所を出る前に、アズマが言っていた言葉を思い出す。
『たぶん何らかのエネルギーを消費して回復してると思う。だからエネルギーが切れるまで殺し続ければいい』
『キシシ、やっぱりゴリ押しなんだね?』
先程まで楽しく話していた彼はいない。
「お前が...お前ガぁ!!!」
ゴギギギギッ
体の限界を超えて動き続けて、耐えられなくなったどこからか血が出て喉を通って外に出てくる。
そんなの知るか...
「こぷ...」
知らないはずなのに、体が一瞬止まる。
無呼吸で打ち続けるのは不可能なのか。
「ま、まダ終わらなーー」
ギュルル
一瞬止まった時、バンジョーの右足が一気に回転し元通りになった。
「どぉぉぉぉん!!!」
「ぐっ...」
そのまま前蹴りを腹に受け、距離をとってしまう。
一箇所だけ集中的に直した...?
「はぁ...はぁ...すげぇよ嬢ちゃん、アズマだけじゃないんだなぁ、愛してるぜぇ?」
ふらふらと立ち上がり、銃を撮りに行くバンジョーが見える。
体が思うように動かない。
もういいかーーー
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田中ver
久しぶりにマンションに帰った俺は、その場にいた全員に迎えられた。
特に春香たちは俺に抱きつき、しばらく泣き続けていた。シェリーさんには睨まれた...
「さて、田中くん。もう大丈夫なのね?」
「はい菜奈さん。ご迷惑をおかけしました」
「いいのよ、あなたは貴重な戦力でもあり皆んなのモチベーションでもあるから」
春香たちとしばらく抱き合った後、俺とニシ、シェリーさん、小堀さんは会長にマンションの一室に連れて来られ、事の顛末を報告していた。
「それで...その、そちらがアズマくんの後輩?」
「へい、あっしはアズマさんの後輩ですぜ、よろしくお願いしやす」
「アズマくんにも知り合いがいたのね」
「俺も同じこと思ったぞ菜奈」
小堀さんと菜奈さんは、楽しそうに話していた。
その時あることを思い出した。
「あ」
「どうしたの田中くん?」
「いや、武田の心臓食った方が強くなれたのかなって」
「あー...それはオススメしないですねぇ」
ニシが賛同せずに、止めてくる。
「なんでだ?心臓を食べれば能力が上がるんだろ?」
「いや、それは同種だけですぜ。違う能力者の心臓を食べると体が拒否反応を起こして、そのうち細胞が死滅してやがて死にます」
「何よその悪◯の実みたいな立ち位置...」
ニシから説明を受け、食べなくて正解だったと知る。
じゃあ俺は、火の出る奴を探せばいいんだな。
「じゃあ、俺とニシはアズマとネコを迎えに行ってくる」
「はーい、いってらっしゃい」
少しして、小堀さんとニシは先ほど戦闘していたにも関わらず。アズマを探しに行くとのことだった。
無敵なのか?この人たちは
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ネコver
体が動かない。
そんな中、バンジョーが銃口をボクのおでこに付ける。
「悪いなぁ、死んでもらうぜぇ?」
「はぁ...はぁ...貴様だけは殺ス」
最後までこの男のことは許せない。
でも...もういいのかな?アズマのいない世界で生きても意味がないのかな。
「んー?口でそう言う割にぃ、あまりやる気がないなぁ?」
「...」
全てを諦め、目を閉じる
「まぁいいかぁ、じゃぁ、愛してるぜぇ?」
スパン
いつまで経っても引き金を引かないことに、違和感を感じる。
「....ぇ?」
目を開けると、バンジョーの右腕が肩から切り落とされていた。
ネコ(クソデカ感情)




