28話 たなかはかなた
アズマver
あれから数日が経ち、農作業の日々を過ごしていると、ちょっとしたいざこざが起きた。
レイと銀を連れて歩いていると、騒ぎ声が聞こえてくる。あ、なんか巻き込まれる気がする。
「会長!なんで助けに行かないんですか!?」
「落ち着いて、タイミングを見てあの人たちに行ってもらうつもりよ」
ロビーに行くと会長と女子数名が話し合っていた。
中には見たことある顔もあったが、何を話してるんだ?
「大毅が今にも死んじゃうかもしれないんですよ!?タイミングってーー」
「私も田中くんが心配だわ、だから情報を集めて場所を...あ」
「あ」
やばい、会長と目が合った。
レイを抱えて逃げようとすると、レイが話しかけてきた。
「けいじ?たなかにぃしんじゃうの?」
「死なないだろ、あいつなんだかんだ強いし」
田中はショッピングモールの一件以来、マンションに帰ってきていない。心なしか十数名の士気が下がっている現状を考えると、やっぱあいつは俺と違って誰かの希望になってたのかもな。
いや十数名って多いな。
「けいじくん?かいちょうのおねがいがそんなにきけないの?」
「うぉっ、なんすか会長、レイの真似して話さないでくださいよ気色悪い」
「中々に辛辣ねアズマくん、美女がこんなに困っているのに」
いつの間にか近づいていた会長に捕まっていた。
会長は人前だとあんまり俺を張らないんだよな、ずっと人混みにいようかな。無理だけど。
会長と話していると、女子集団の1人が話しかけてきた。
「アズマくん!お願い!大毅を助けて!」
「誰だよあんた」
「えっ?」
「流石アズマくんね、花咲さんとは面識あるはずでしょ」
「知らないです」※2話で助けてます。
「元はと言えばあなたがショッピングモールでーー」
「ダメよ舞!アズマくんを責めないで!」
他の女子が俺を非難しようとすると、花なんとかさんが止めてくれた。優しいなこの人。なんでだ?※2話で助けています。
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その日の夜、全員参加の会議が開かれた。
片柳派の人間はほとんど来ていなかったが、
顔ぶれを見ていると、神崎や羅夢とかも参加していた。ひさしぶりに神崎見たな...。
ぼーっとしてると、神崎たちが近づいてきた。
「久しぶりケイ...」
「...おう」
「しのちゃん、きょうもあそびにくる?」
「んー、今日は夜遅いからまた明日かな、ごめんねレイちゃん」
「だいじょうぶ、らむっちもあしたくる?」
「もちろんだよレイちゃん!てか今日私たちの部屋に泊まれば?いいよねアズマっち!」
「相変わらず羅夢は声がでかいなあ、レイが良ければいいぞ」
「うん、いってきます」
もうちょっと俺のこと惜しんでもいいんだよレイちゃん?なんか最近そっけなくない?思春期?
「やったー!じゃあ今日は徹夜で桃鉄だね!」
「ももてつ?」
「おい羅夢!ちゃんとレイを寝かせるんだぞ!」
「わかってるって!何か最近のアズマっちお母さんみたいになってるよー、明日の朝に寝かせるから大丈夫!」
「ダメだこいつ!何の話も聞かねえ!し、神崎頼んだぞ!」
「う、うん、任せて」
神崎と目が合う。
あれ、俺どうやって話してたっけ...。
やっぱこいつ可愛ーーー。
「はーい、じゃあ皆んな集まったと思うんで会議始めまーす」
「あ、会議始まるな、じゃあ悪いけどこの後レイの迎えに来てくれ」
「うん、ま、また後で」
気まずい...。
ずっと思ってたんだが、神崎は片柳の近くにはいないようだな。何回か話かけられていた所は見たが、その度にあずさちゃんや羅夢に遮られて避けてるみたいだし。(ストーカー)
脳内でずっと考え事をしていると、会議は進んでいきーー
「じゃあヤクザの事務所に潜入するのは、猛、ネコくん、アズマくんの3人で決定ね!」
「え、なんて?」
何を聞き逃したらそうなるんだ?俺明日からヤクザになるの?
「キシシ、また話聞いてなかったでしょアズマ」
「ネコ、いたのか」
「相変わらずひどいね」
「それより何で俺はヤクザにならんといけんのだ?仁義切っちゃう?」
「はぁ...ちゃんと聞いてなよ」
ネコの話を要約すると
・ダッシュ中野が集めた情報によると、田中がいそうな施設の情報を西条組か東条組というヤクザのどちらかが持っている。
・また、ヤクザはウイルスの特効薬を持っている可能性がある。
・危険を伴うので、武闘派の中から俺たち3人が選ばれた。
「はあ...また労働か」
「キシシ、頑張ろうね」
「おうアズマ、俺は1人で東条組に行くから、お前らも頑張れよ」
「何でタケさんは平然としてるんですか」
「まぁ、負ける気がしないしな」
「どんだけ強いんだよこの人」
「キシシ、僕が本気だけしてもタケさんに敵うイメージが湧かないもんね」
そうなのだ。
この人ウイルス無しで、赤パンダ相手にも無双してるんだけど、どんだけ強いの?
「俺が本気出したらお前らの頭と体が別れるくらいには強いぞ」
「あははっ、冗談うまいですねぇ....ねぇ?」
「アズマ、たぶん本当に言ってると思うよ」
「え、こわ」
「ま、やるわけねーけどな」
そういうとタケさんは、俺とネコの頭にぽんと手を置いた。その手は大きいもので、ネコなんて頭の半分は覆われるくらいだ。
...引きちぎらないよね?
「お前らは俺の大切な後輩だ。何かあったら死んでも守るさ」
「かっけぇ...」
「キシシ、ありがとうございます」
体も器もでかい人だ。
こんな人だから会長ともパートナーとして長年付き合っていけるのだろう。もう付き合っちゃえよ最強二人組なんだから。
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会議が終わり、部屋でくつろいでいると神崎と羅夢がレイを迎えに来た。
「けいじ、いってきます」
「おう、あずさちゃんにもよろしく言っといて」
「わかった」
わかったの?この子、最近すごく頭良くなってない?今のでわかるの?この子天才?(親バカ)
「じゃあアズマっちまたねー!しのっちちょっと置いてくね!」
「え?」
聞き捨てならないことを羅夢が吐き捨ててレイを攫って行った。あの、神崎さんまだいますよー?置いてけぼりとかよくないですよー?
「け、ケイ...ちょっと屋上で話さない?」
「え?」
え?




