6話 独特なアダ名付ける人っているよね
あざすあざす
昇降口に向かってからが大変だった。それまでは猛さんのワントップでやっていけてたが、昇降口は人数が多すぎてどれが変質者だかわからなくなるほどごちゃごちゃになっていた。何度か普通の人を殴りそうになって怯えた目で見られた。ごめんて。
「きっついな!」
「まあそう言うな2年、お前らのグループとそろそろ合流できそうだ」
「でも昇降口のドアが開いてる限り変質者が入ってきちゃうんじゃないすか?」
「それもそうだな…よし!2年二人組俺についてこい!菜々!俺らは昇降口のドア閉めてくるわ!」
「了解!怪我しないようにねー!」
「うし、行くぞお前ら!」
「まじかよ」
「キシシ」
ドアに近づくにつれて相手の数が増えている。といっても、猛さんが先頭で数を減らしてくれるからギリギリ進める。そしてドアを閉めることができた。
「よし、窓は破られるがこれでしばらくは入ってこれねえだろ」
「やりましたね、しかし囲まれましたよ」
「キシシ…流石にこれはキツイかも」
最短距離でここまできたため、数は倒せていなかった。やべえなあ。ここで死ぬのか。痛いのは嫌なんだけどなあ。あー
お父さん、母さん兄さん、妹よ、私はここで、生き絶えます。
「アズマあああ!」
「ん?田中?」
辞世の句を考えても字足らずだった時に田中の声が聞こえた。暫くすると俺がはぐれたグループのやつらが周りの変質者を片付けてくれた。危なかったぁ。あ、ちゃんと黒木先生もいる、やったぜ!
周りで達成を祝しているのか雄叫びが多く聞こえてきた。雄叫びを聞いて、1時間にも2時間にも感じた戦いが終わったことに安堵する。でもこれでまだひと段落か、早く休みたい。あ、田中がこっち来た。
「アズマ!ちゃんと生きてたんだな、よかった」
「流石に死んだかと思ったぞ。そっちはうまくいったか?」
「あはは、俺も死んだと思ったよ。こっちはあれから誰も死んでないよ」
「そうか、よかったな。あと田中」
「なんだアズマ?」
「俺らのグループなんか人数増えてね?倍ぐらいになってんぞ」
「ああ、これは戦ってる途中で一階の教室から飛び出して助けてくれた人達だよ。俺らに勇気付けられたんだって」
「へぇ」
流石田中くんのカリスマ性とでも言えばいいのか、田中のグループには見たことのない人たちがたくさんいた。
俺と田中が話していると猛さんが会話に入ってきた。
「おい2年」
「なんすか猛さん」
「終わったがまだ気緩めんなよ?この後はたぶんバリケードを作る作業になるからもう一仕事だ。とりあえずお疲れさん」
「ういっす」
あの人顔面怖いけどいい人なんかな?よく言えばワイルドだが俺からしたらただのヤンキーにしか見えないから優しいとギャップがすごい。惚れてまうやろ。
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そこからまた大変だった。椅子や机を乱雑に積み重ねて一階にバリケードを作っていると噛まれたことを隠してきた奴が変質者になって噛まれそうになったり、まだ変質者がいないか確認してまわると普通にロッカーから出てきて噛まれそうになったりと、学校の安全性を高める作業に1時間以上かかった。
「ハア…ハア…もう無理、もう動けん。てか怪我したとか痛えし腹減った!」
「キシシ、ボクからしたら後片付けの方がつかれたかな」
「あの生徒会長コキ使いやがって、生まれつき顔がいい奴は周りがなんでもしてくれると思ってやがる」
「あ、キシシ」
「ネコもそう思うだろ?」
「ボクはそう思わないかなあ」
「何でだよ!あの人は絶対性格悪いタイプの美人だろ」
「キシシ、アズマ、後ろに気をつけた方がいいかもね」
「あん?後ろ?とにかく!生徒会長は性格悪「私が何だって?」キャーー!」
後ろには、生徒会長と猛さんがいた。生徒会長は頭に青スジを浮かべ、猛さんの方はプルプルと笑いを堪えてた。後ろからいきなり声かけないで欲しいわ、乙女みたいに叫んじゃったじゃない。てかネコも気づいてたら教えて欲しいわ。しょうがないわね、ここはビシッと謝っときましょ。
「ご、ごごごごめんなさい」
「…まったく、アズマくんは失礼な子ね。くれぐれも周りにはそういうこと言わないでね」
「はいであります!」
「ぶっ…おい2年、ふふっ…お前すげえな。くく…初対面なのに菜々の本性見抜くなんて」
「猛うるさい!」
やっぱ性悪じゃねえか。
「お二人様は何でここにいらっしゃるんですか?」
「堅い敬語はやめて。あなた達2人にお礼を言いにきたのよ、あなた達のおかげで助かったわ、ありがと」
「俺はお前らの名前を聞きにきた。いつまでも2年呼びじゃ悪いからな」
「そうだったわね。私は高橋菜々、それでこっちは小堀猛よ、改めてよろしくね」
「俺は東 京次です。そんでこっちは…ネコ、お前なんて名前?」
「仲良さそうなのに名前知らなかったのね…」
「キシシ、たしかに教えてなかったね。ボクもアズマの名前知らなかったし、ボクは根本康太です」
「あながちアダ名はネコで間違ってなかったんだな」
「それは強引すぎじゃないかしら…」
あざした