17話 わんわん
あざす。
気持ちを整えた後、ハツメの部屋に行くとタケさんと会長がまだいた。そしてタケさんは棒状の何かを持っている。なにそれ?
「あ、アズマくんもう大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないです」
「じゃあこれから作業に移ってもらうわね」
「一回耳鼻科とか行ってみたらどうですか?」
「ん」
「…タケさん?」
会長と言葉で刺しあってると、タケさんが謎の棒を差し出してきた。
「ん」
「いや、あの」
「ん!」
「え、え?」
「ん゛!」
「俺んちお化け屋敷じゃねぇから!!!」
となりのタケさんから渡された物は、鍬だった。
「…なんすかこれ?」
「鍬だ」
「それはわかります」
「相変わらずアズマくんは鈍ちんね!」
「腹立つな、この人」
も〜勘弁してくださいよ!よ!日本一!
「心の声と逆になってるわよ?」
「それで、作業というのは?」
「スルーで行くのね、OK、メモはしといたから」
どうやら俺のタダ働きが確定したようだ。
なかなか話が進まず、痺れを切らしたのかタケさんが話し始めた。
「前言ってた農作業だ」
「…あー、ありましたね。どうです?有志集まりましたか?」
「おう」
「よかったじゃないすか!それじゃ―――」
「俺とお前の2人だ」
「どうやら僕は二重人格のようです」
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「ぐ…ぐぐっ」
全国の皆さん、おはようございます!今日も元気なアズマです。いやぁ、農業って素晴らしいものですね。汗水垂らして作った野菜が可愛くてしかたがありません!このまますくすくと育ってくれよ?
「がぁぁあ!!!ふぅ、ふぅ」
「ほらそこー、手を休めない!」
「…ちっ、あんたもやれよ「何か言った?」なんでもありません!」
え?僕が今何をしているかって?もちろん農業ですよ!だってタケさんも言ってたじゃないですか!
「農業って言ってたはずなのに…」
「ん?何かおかしいことあるか?」
タケさんの方を見ると、涼しい顔をして車を押していた。
「全部おかしいよ!どこの世界に農業って言って車を押す人がいるんですか!」
「ほらー、また手が止まってるー!」
「うるせぇ!あんたもやれよ猫被りおんごべんなさい!」
「筋トレ+音立てずにバリケード作りでWIN-WIN作戦♡」のために車を移動させているわけだが、これがキツすぎる。ひっくり返したりもするんだよ?あと作戦名が変。そもそもタケさんはなんで普通に押せてるの?あの人噛まれてもないよね?あと作戦名がへごべんなさい!
…確かに必要なことだけどさ、俺とタケさんとネコ(さっき捕まえた)だけって無理があるだろ。しかも一緒にじゃなくて別々にって。
「キシシ、タケさんはすごいね」
「お前も大概だぞネコ、いくら力を使わない状態だからって俺と比べてスピードがダンチだ」
「それは体の使い方かなぁ?アズマもそろそろ自分の体を自在に動かせるようにしといた方がいいよ」
「はぁ?体なんて自在に動かせるだろ、今だってこき使われてるんだから」
「キシシ、そうじゃなくて…なんだっけ、ボディイメージ?をしっかりするのさ」
「ほーん」
「全く興味ないみたいだね」
「ほら、2人とも頑張って、とりあえずこの三台が終われば今日は車運びおしまいよ」
今日で数十台運び、しばらく農業は続くようだ。
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「ハッハッハッハッ」
「あん?」
マンションに帰ろうとしていると、犬がこっちを見ていた。あれなんて犬種だっけ?ベジタリアンハスキー?
「あ、ハスキーだ。この子は飼われてたのかな?野良なわけないだろうし」
「ネコは犬好きなのか?」
「うん、可愛いじゃん」
「そうね、ペットは癒されるわ」
「お前も昔飼ってたよな」
そんな会話をしていると、犬が近寄ってきた。
「バウッ」
「なんだ?餌でも欲しいんか?残念だけどないよ、なんなら俺が餌食いたいぐらいだ」
「餌も持っていない下等生物が我に話しかけるでない」
「え?めっちゃ生意気なんだけどこの犬。ぶっ飛ばしていい?」
「いいわけないでしょ、この子にはかわいそうだけど帰るわよ」
「餌がないならさっさと取ってこい、喰い殺すぞ」
「やっぱお前ぶっ飛ば……ん?」
「なんだ?我に恐れをなしたか?」
「「シャ、シャベッタァァァァァアアア!!??」」
俺と会長の声が響き渡った。やっぱり俺らリアクション担当ですよね。
最近忙しすぎて自分に使える時間がゼロなんです。本当なんです。信じてください。
それと持病の五月病が月の半分発病するんですよ。本当なんです。信じてください。




