16話 ひとりごと
生活の一部に成りつつあった「小説を書く」という行為がパタリとあやんで、驚いていたら数ヶ月経ってました。僕だけ別の時空にいたのでは?と錯覚するほどでした。...こんな馬鹿をお許しください。
「…んぁ」
目を覚ます。いつも通り知らない天井だ。
「あ、アズマ氏。目を覚ましたんですね」
「…おお、ハツメ」
「いやぁ、大手術でしたよ。一昨日は…」
そうだった。潰れた右手とかを直してもらうためにハツメに頼んだんだ。痛すぎて気絶したけど。だってさ、いきなり傷口に酒ぶっかけるんだよ?この子本当に大学出てるの?
「…ん?一昨日?」
「そうですよ。アズマ氏は2日間ぶっ続けで意識失ってたんですから」
「まじか…ん?」
どうやら疲れもあって2日寝てたらしい。道理で代償が少ないわけだ。
ハツメと話していると、左手に違和感がありそこを見る。
「スー…スー…」
「こいつにも悪いことしたな」
「ずっとアズマ氏から離れなかったんですよ?レイちゃん。あ、私会長たち呼んできますね」
え、めちゃかわやん…。それに俺が選んだ服着てくれてるし。
ハツメが部屋を出て、実質1人になる。思い出すのは一昨日のことだ。
『私はそんなこと本当には思って――』
『うるせぇっつってんだろ!!!!!』
『もう関わらんでくれ、神崎』
『ケイ…』
忘れようとしたって無理だ。あいつにも言ったけど、一度言った言葉はもう戻せない。
………ふぅ。
ああああああああああああ!!!何してんだ俺!!!めちゃくちゃ寝て冷静になったけど恥ずかし!!!たった一言でキレるなんて恥ずかし!!!幼稚園児でも我慢できるわ!!!たしかに詩乃に言われて傷ついたよ!?でもさぁ!!!そこで俺がさぁ!!!…………あああああああああああ!!!男に二言はないって言ったやつを10割の力で殴りつけたい17歳です。
「…ん?…っ!?けいじっ」
「うぉ!?」
俺が髪をかきむしっていた所為で目を覚ましたのか、レイが起きて抱きついてきた。
「レイ、ごめんな。辛い思いさせて」
「…ん、けいじはしんでない」
「え、許してくれるの?優しいなあ」
頭を撫でると、レイは目を細める。かわいっ。レイはこのまま汚れを知らずに育って欲し――。
「けいじはしのちゃんとけんかしたの?」
「うっ!!!」
「なんでけんかしたの?」
「ううっ!!!」
「しのちゃんないてたよ?」
「なんでこんなに饒舌になってるの!?子供の成長早すぎてついてけねぇよ!!!」
レイのストレスが減ってきたのか、よく喋るようになっていた。もしかしたらパンデミックが起きる頃は元気な子だったのかなぁ?
…はい、すみません。現実逃避してました。認めるんでそんな目で見ないでレイちゃん。
「レ、レイは、あいつとどうしたい?」
「…レイはしのちゃんと――」
「アズマくん!目を覚ましたのね!全く、これからは特技の欄に気絶って書け…ば…な、何その顔」
めちゃくちゃ良いところで邪魔者がログインしてきた。いやね?いろいろ感謝はしてますよ?でもこのタイミングはちょっと…ねぇ?
無言で会長を見ていると、会長がオドオドし始めた。
「ご、ごめんなさい。でも別に気絶が悪いとは」
「いや、そこじゃないっす」
「へ?」
「まぁアズマ、そこまで攻めてやんな。こいつなりに心配してたんだぞ?」
「タケさん…会長も、ありがとうございます。さっきのは気にしないでください」
「いや、あの顔はなかなかできないわよ?」
とりあえず平常心を取り戻した会長から現状を教えてもらう。
今現在、片柳以外にもモールからついてきた奴らがいて、マンションの部屋がギリギリだそうだ。さらには会長側と片柳側に派閥が分かれ始めているらしく、雰囲気はよくはない。
どうやらあの片柳というやつ、意外とすごいやつだったそうだ。力の強さとかではなく、人の心を操るのが上手いらしい。その点は会長も上手いのだが、タイプが違うようだ。
「という感じよ、まぁ主力は殆ど私を助けてくれてるから暴動とかは全然ないんだけど。あったらすぐ潰す」
「ひぇっ」
さすがの会長もイラついてるらしい。怖えよ。
「…すいません。俺の所為ですよね」
「何言ってるの?アズマくん。人なんてそんなものよ。アズマくんのことがなくてもいずれ私に対立する人は出てくるって予想できてたわ」
「そうだぞアズマ。なんならこいつは対抗馬が片柳ってことが役不足でイラついてんだ」
「えぇ…」
「しょうがないでしょ!もっとすごい人来ると思ったんだもん!」
もんって、あなた18でしょ?
「まぁ、この件に関してはアズマくんの協力もお願いするかもしれないわ。ごめんなさい」
「いいっすよ。会長には世話になってるし」
「…詩乃ちゃんと喧嘩して腑抜けたわね」
「ぐふぅ!?」
「おい菜々!アズマがかわいそうだろ!たしかにあの時は『うわ、こいつ子供かよ』って思ったけど!」
「う、うわぁぁぁぁあああん!!!」
「「あ…」」
気づけば、泣き声を上げながら部屋から飛び出していた。そのままマンションの屋上に向かう。
屋上には誰もいなかった。そのままポッケに入れていたタバコに火をつける。あ、やっべレイ置いてきた。まぁレイもそろそろ俺以外と交流できるだろ。
「…はぁー」
吸い上げた煙を吐き出すと、外が寒い所為か白い息も一緒に出て爆煙となった。もうすぐ冬か、ここまで駆け抜けてきたな。たった1ヶ月少し前は、何も考えずに生きてたのに、今では考えることが一杯で息苦しくすら感じる。
『あなたはこれからどう生きたい?』
この質問もだいぶ前に感じるほど、ここ最近の人生は色濃く、充実している気がする。
「これから、どう生きるんだろうなぁ」
煙と一緒に吐いた言葉は誰にも届かず、煙と一緒に空へ昇って行った。
生活が忙しく、書けなくなる時があります。感想をくれていた方に申し訳ない。
アズマ「寝ていたのが二日間じゃない気がする」




