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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
二章 ろりと犬とダッシュと編
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15話 いたい

開いていただきありがとうございます。

 アズマver


 疲れてるってのに帰ってきたら、総バッシングって…やめてくれよ、俺は思春期なんだ。

 詩乃が片柳懲らしめんの止めてきたけど、こいつも俺のこと否定すんのかな…いや、詩乃は俺の味か――


「ケイ、なんでこんなことするの?」


 あっ、ふーん。そういう感じね。


「…はぁ、詩乃、お前も片柳のバカを信じんのか」


「100%信じたってわけじゃないけど、徹が嘘つくとも思えない」


「そうか、じゃあこれからは俺に関わんな」


 …どいつもこいつも、自分で戦いもしないクセに偉そうに批判しやがる。第一こっちは疲れてんだ。後にしてくれよ。


「な、なんでそんなこと言うのよ!」


「は?俺を信じられないんだろ。そうだよな、ぽっと出の男なんかよりイケメン幼馴染の方がいいよな」


「何よその言い方!」


 …うるせぇな。疲れている体と頭に女性特有の甲高い音が響いて軋む。


「どうせ俺と関わってたのも、本当はボディーガードが欲しかっただけだろ?あーよかった。そんな奴に本気になんないで」


「…っ!あなたが普段から根暗だからみんなにも信じて貰えないのよ!」


「アズマくん、言い過ぎよ。それに詩乃ちゃんも、わざわざ面と向かって信じられないなんて言うもんじゃないよ」


 ヒートアップして来そうな言い合いに、会長が見かねて間に入る。申し訳ねえ、この人も疲れてんのに。でも自分を抑えられるほど、俺は賢くも、強くも、大人でもない。


「ハンッ、結局顔かよ!あーあ、誰か俺に新しい顔くれねえかなぁ!」


「そんなんじゃない!で、でも顔ではあんたなんか選ばないわ!」


「あぁん?なんだてめぇ!とっくに片柳でオマタ真っ黒な癖によぉ〜」


 一度回ると口は止まらない。口論に熱が増す。人間は熱くなると、思ってもないことを売り言葉に買い言葉で返してしまう。


「…っ!?最っ低!!!よく生きていられるわね!()()()()()()()!!!」


「……ぁ」


「…ケイ?」


 刺さった。


 胸に言葉が刺さった。


 心臓にまち針でも刺されたかのような痛みが、無数に広がる。


 その痛みは何故だか一向に消えそうにない。


 これも慣れるはずだった。慣れたはずだった


 批判されることなんて、すぐに慣れるもんだと思っていた。


 こんなに痛いものなのか。


 これで()()()()()()に気づいてしまったことが皮肉だ。


「ケイ?…あっ…ご、ごめん!そういうつもりじゃ」


「…どういうつもりでも、言っちまったんだ。もう戻せねぇよ」


 声が出ねぇ、情けねえ。


 自分が如何に弱い人間なのかを突きつけられる。


「け、ケイ!ほんとにごめん!」


「…せぇ」


 欲してもいない痛み、心臓を直接握りしめられたような痛みが続く。


「私はそんなこと本当には思って――」


「うるせぇっつってんだろ!!!!!」


 詩乃が固まる。人に対して、こんな大声を出したのは初めてだ。もう駄目だ。泣けてくる。


「…もう関わらんでくれ、()()


「ケイ…」


 なんでお前が泣きそうなんだよ、お前には大切な幼馴染がいるんだろ?泣きたいのはこっちだよ。


「…会長、ハツメのとこ行ってきます。もう気絶しそうなんで」


「あ、うん。お大事にね」


「おい待て!」


 やっとこの場を離れられると思った時、後ろから呼びかける声があったから振り返ると、さっき俺に罵声を浴びせてきた奴らがまだ数人いた。


「え、だる。なに?まだいたの?」


「俺は認めねえぞ!お前みたいな人殺しと一緒に住むなん――」


「じゃあ今から取り合いっこするか?殺しあって」


「は?いや、それは…」


「まさか、話し合えば俺が出てくとでも思ってる?そんなわけないじゃん。治安がぶっ壊れてる今は殺し合いが一番原始的で効率的だと思うけど、どう?」


「…」


「黙んないでよ。俺がいじめたと思われるじゃん」


 誰一人として話さなくなってしまった。こんな災害時に、何が自分を守ってくれてると思ってるのだろうか。家族とか抜いたらそりゃ自分しか自分を守れないだろうよ、守れなかったら死ぬだけだ。


「じゃ、本当に治療しに行くから」


 今度こそハツメの所に向かう。誰も声をかけてこなかった。



 ――――――――――――――――――――――――



 ハツメの部屋に入ると、消毒液の匂いが漂っていた。誰かの治療でもしてるのか?


「ハツメー、いるかー?」


「えっ、アズマ氏!?帰ってきたんですか!よかっ…えええええ!?ボロボロじゃないですか!それに髪の毛が!」


「そうなんだよ、痛くてしょうがねぇから治してくれや」


「え?あ、は、はい。いや、でも私は簡単な治療しかできないですよ?」


「まじかよ…飛び出してる骨とか治せないの?お前頭良いからできるだろ?」


「アズマ氏の中の私どんだけ万能なんですか!?治せないですよ!…一応知識ならありますけど、経験はゼロなんで相当痛いですよ?」


 えー、まじかよ。どうしよ、でもこれだと生きづらいからなぁ。


「わかった。それでもいいから頼む」


「…わかりました。少し準備するのでベッドに寝ていてください」


 ハツメの準備を待ってると、隆二達がやってきた。あ、レイが駆け寄ってきた。レイにも悪いことしたな。


「レイ、ごめんな」


「…」


 何も言わないでしがみつくレイの頭を左の手で撫でていると、隆二が話しだした。


「まったく、こんな可愛い子の前で怒鳴り散らして挙げ句の果てには置いてくなんて、とんだイかれ野郎だなお前は」


「うるせえ、悪いと思ってるよ。お前らにもな」


「キシシ、どうしたんだいアズマ?君はそんなキャラじゃないだろ」


「そうだよアズマっち!あんな人たちなんて放っておけばいいんだよ!私たち現場専門の苦労も知らないでさ!」


「…俺はもう出てった方がいいんだろうな」


「京次!テメェはどしっと構えてりゃいいんだよ!そんであいつらが死にそうな時に助けて嘲笑え」


「隆二…てかなんでお前ここにいんの?」


「ひどい!?」


「お前早くモールに戻れよ」


「親友に対してこの仕打ち!?」


 俺と隆二のやり取りを見て、ネコと羅夢が笑う。こいつらのお陰で少しは元気がでた。天涯孤独キャラに路線変更しようと思ったけど、やっぱただの寒いやつになるだけだよな。危なかった。


「お話中すみません。治療の準備が整いましたー」


 ハツメがトレーを持って隆二達の合間に入り込んできた。トレーにはメス、針、糸、綿、ガーゼとか色々乗っている。でも麻酔らしき物とかが見当たらない。







 え?あれ?もしかして麻酔なしでいくやつですかハツメさん?それって痛いじゃ済まなくないですかハツメさん?なんでちょっとウキウキしてるのハツメさん?好奇心ありすぎじゃないハツメさん?


 あとすごく気になるんだけど、それウイスキー?何に使うの?ぼくみせいねんだからおさけのめなーい。

あーあ、何やってんの東。詩乃ちゃん泣きそうじゃん。


ありがとうございました。

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