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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
二章 ろりと犬とダッシュと編
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11話 けっかい

あざす

 田中ver


 …ん?なんか騒がしいな。起き上がると見知らぬ場所に自分は居た。


「…ああ、そっか。モールか」


 昨日モールに衣服を取りに来て、そのまま止まったんだった。

 それより騒がしいな。何かあったのか?すっかり日が昇っているのかモール内は比較的明るい。騒ぎのする方に行ってみると菜々さんと武田さんが言い争っていた。しかもなにやらマンション組とモール組で対立して睨み合っている。


「だから言ってるでしょ!あの子がそんなことするわけないって!!!」


「高橋さん、私と片柳くんが何よりもの証拠じゃないですか?」


「だから!アズマくんを連れてきなさい!どこにいるのよ?あなた達が無事ってことは捕縛したりしたんでしょ?仮に殺してしまったとしても死体でいいからここに連れてきなさいよ!」


 話の内容が全く掴めないから何故か知らないがマンション組側に立っている朝比奈に聞いてみる。


「なぁ朝比奈、アズマがどうかしたのか?」


「あ?誰だお前?」


「隆二くん、彼は田中くんだよ。アズマの友達」


 一発目から会話が失敗したのを見ていたのか、根本が間に入ってくれた。とりあえず誰でもいいから話が知りたいので根本に聞くことにする。


「なぁ、どうしたんだよこの騒ぎ?」


「ボク達もさっき来たんだけどね、どうやらアズマがモールの人たちと言い争いになって8人殺したみたいなんだ」


「は?あいつが言い争いだけでそんなことするわけねぇだろ?」


「田中くんもそう思うかい?でも当の本人はここに居ないんだ。それで武田さんと片柳くんがアズマを人殺しって言いふらして会長が反論しているところ」


 視線を菜々さん達の方に戻してみると、確かに武田さんと片柳は怪我をしていた。するとそこに神崎さんが割って入った。


「あ、あの菜々さん!とりあえず謝りましょう!」


「えっ、なんで?詩乃ちゃん、まさかほんとにアズマくんが、たかが言い争いで人を殺したと思ってるの?」


「い、いえ、まだ確証はないってだけでもしかしたら本当かもしれないし」


 それを聞いたマンション組の人達が驚いた顔をしていた。もちろん俺も驚いた。なに言ってんだよ神崎さん?あんたはアズマと数週間一緒に居たのにわからないのか?あいつがそんなことするわけないだろ。


「…詩乃ちゃん、少し頭を冷やしなさい。他の人ならまだしも、あなただけはアズマくんを疑っちゃだめでしょ」


「でも、徹がそう言ってたから――」


「っ!頭冷やしなさい!」


 そう言って菜々さんは神崎さんに叱咤した。怒られた神崎さんはなぜ怒られたかわからず呆然としていた。本当にどうしちゃったんだ?あんなに自分を持たない人じゃないのに。

 菜々さんの怒りを孕んだ声がモール内に響き、周りが静かになる。睨み合いが続いている中、朝比奈が声を荒げて武田さんに話しかけた。


「リーダー!俺はこの人たちについて行くぞ!」


「…何勝手なことを言っているんですか朝比奈くん?」


「この人たちには出てってもらえば済む話だろ?京次が言い争いをして人を殺したってんなら、当人たちの問題だ。俺たちは関係ねぇ」


「ですが朝比奈くん、自分のグループの人が起こした問題は長の責任になるんですよ」


「じゃあどんな言い争いをしたんだよ?さっき銃で撃たれたってのも聞いたぜ?俺は昔からあいつを知ってるけど、たかが言い争いで銃を撃つような奴じゃねえ!そうだ、お前が答えろ片柳。お前も怪我してるってことは覚えてるだろ?なんで殴られたのか」


「朝比奈…俺は嘘なんかついて――」


「いいから答えろっつってんだよ!!!テメェら内容も話さず俺の友達を人殺し呼ばわりしやがって!どうせお前らが大人数で襲ったところを返り討ちにされたんだろ!」


「…もういいですよ」


 怒りを隠そうとしない朝比奈の話を聞いて武田さんが言い出した。それに菜々さんが反応する。


「もういい?もういいですって?ならアズマくんを連れてきなさい!そしたら私たちはすぐに出て行くわ!」


「だからもういいですって」


「…何を言ってるの?」


「アズマくんはここには連れてこられません。ですがあなたたちをアズマくんの所へ連れてはいけます」


「それでいいから早くアズマくんの――」


「はい、ですからみなさん死んでください」


 にっこり、という効果音が当てはまりそうな表情で武田さん…武田が言い放った。

 武田が手を挙げると遠くの方から機械音が聞こえてきた。これは恐らくシャッターが開く音。いや待てよ、昨日聞いた話だとこいつらはパンダを殺さずに閉じ込めてるって言ってたよな?じゃあこの音は…。


「あ、あなた何をしているの!?自分の仲間も殺す気!?」


 いち早く反応したのは菜々さんだった。菜々さんの問いかけに対して武田は何でもないように答えた。


「私たちは皆進化を求めています。ですからみなさん喜んで受け入れてくれますよ」


 最早何を言っているのかわからないが、モール組の何人かは「万歳!万歳!」と言って床に膝をついている。その光景は異様だ。

 …死を受け入れた人間に構っている時間はない。菜々さんが全員に指示を出す。


「みんな!ここから逃げ出すわよ!…アズマくんは私が見つけるわ!だから今は逃げて、できればO型でない人を守りながら逃げて!」


 そう言ってる間にも、パンダの群れはゆっくりと、しかし着実に近づいて来ていて、菜々さんの指示を聞いた全員がパンダとは反対方向に逃げ出す。

 だが武田は何人かを連れて別の方向に向かっていた。菜々さんはアズマを探しに行ったようでもういないな。くそ、逃がさないぞ。


 走って武田に追いつき、タックルで動きを止める。


「武田!アズマをどこにやった!」


「ふふ、なんのことですか?それよりも、この汚い手を離…せ!」


「ぐっ!」


 殴られてあっさりと武田を離してしまった。武田が距離を離すと同時に取り巻きが近づいてくる。やっぱり誰かと来るべきだったな。


「取り押さえろ」


「「はい!」」


 武田の指示で2人に掴まれ身動きが取れなくなる。


「くっ、離せ!」


「えーと、君はたしか…田中くんだったかな?」


「離せよ!」


「ちょうど試したい()()があったんだ。1つしかないけど君に使ってあげますよ」


 そう言って懐から注射器と小瓶を取り出し、瓶の中にある液体を注射器で吸い上げる。あれが何かはわからないが、ダメなものだってのは俺でもわかる。


「おい!やめろ!」


「だめだめ、君は更なる進化への人柱になってもらうよ。素晴らしいことじゃないか、世のため人のため、人間の理想だ」


 話しながら近づき、針を俺の首に押し付ける。


「やめてくれぇぇぇえ!」


 アズマたちのように力があるわけでもない、更には俺はO型じゃない。どんな薬だろうと俺はパンダになってしまう。必死の抵抗も虚しく、チクリと痛みを首に感じた後に液体が流し込まれているのがわかった。


「ぐぅぅぅうう!!!」


「また後で結果を見にくるよ、それでは」


 武田たちがこの場から去る。だけどそんなこと気にしていられない。


 熱い。


「がぁぁぁあ!!!はぁ、はぁ」


 体内の血が沸騰しているようだ。


「あぁぁぁああああああ!!!!」


 誰か殺してくれ。


「ぁあ…」


 こんな辛いことを我慢するくらいなら死んだ方がマシだ。


「あぁ!あぁぁぁぁあああ!!!!」」


 あぁ、熱い。


「あ」のゲシュタルト崩壊起こしました。

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