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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
二章 ろりと犬とダッシュと編
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10話 とらとらとらっぷ

あざす

 全くパンダに関する知識がなかった隆二に、知っていることを一から説明してやった。ネコが。

 だって俺もよく知らんもん。

 ネコの話を聞きながらふと思ったことを聞いてみる。


「そういえばよーネコ、フェーズってのはどうやったら上がるんだ?レイは10割だってハツメが言ってたぞ」


「んー、それはボクにもわからないな。父さんは素質で上がる早さが違うって言ってたけど、ボクの感覚で言うと死線を越えるとフェーズが上がるね」


「へぇ。よし隆二、お前もO型だろ?噛まれてこい」


「舐めんな!100パーじゃないのに行けるか!」


 他愛のない話をした後、俺たちはモール内で適当な場所を選んで寝ることにした。添い寝しないと寝られない気がしたので、ネコに頼んでみると「馬鹿じゃないの!?」と言われて1人で寝ることにした。


 ――――――――――――――――――――――――


 誰かに肩を揺すられる。眠りが浅かったのかすぐに目を覚ました。誰だ?もしかしてネコがやっぱり添い寝してくれ――。


「…チェンジで」


「いきなり酷いですね…」


 起きて顔を見てみると、のっぺりとした笑顔が貼り付けられた武田こと変態狂信者がいた。


「何の用すか?武田…さん」


「間は気になりますが私はあなたを呼びにきたんですよ」


「こんな夜中に?」


「ええ、あなた方のリーダー。高橋さんとお互いの現状を話し合おうとしたら、高橋さんがあなたにも来て欲しいっておっしゃいましてね?」


「ふーん、どこでやってるんですか?」


「地下駐車場です」


「は?なんでわざわざそんなとこで」


「アズマさんも見たでしょう?私のグループの方々は少々荒れていてね、もしよそ者と話しているところを見られでもしたら騒ぎの種になると高橋さんからの提案ですよ」


「なるほど」


 たしかにここにいる連中は、会った奴らだけでも頭おかしいのはわかるからな。会長も無駄な争いを避けたかったんだろう。


 ネコたちを起こさないようにその場を離れ、武田に連れられて地下駐車場に向かう。道中武田と話す。

 …いや俺って無言の空間耐えられないマンだからさ、いくら武田と雖も無理よ無理。なんなら向こうから話しかけてくるからね?


「アズマさんのその髪はどうしたんですか?」


「え?あー、染めました。こんな世界になってからやりたいことはやろうかなって」


「こんな世界?その言い方は少し気になりますね」


「は?人が簡単に死ぬんだ。酷い世界じゃないですか?」


「何てことを言うんだ!こんな素晴らしい世界はないよ!君も知っているだろう!?死んだ人間が生き返るんだぞ!」


「あ、はいそっすね」


 こいつマジで頭おかしいな。怖い、怖いよ、何恍惚な表情してんだよ。狂いまくってんじゃねえか。

 てかまだ話してるよ、俺の必殺「あ、はいそっすね」で会話断絶したのによ。


「ただ生き返るだけじゃない、体が頑丈になって生き返るんだ!あぁ、早く私もあの姿になってみたい」


「なら外出て噛まれてくればいいじゃないっすか」


「え?」


「え?いや、ああなりたいなら早く噛まれればいいじゃないすか」


「うん、私もそうしたいのだがね、君みたいにあの素晴らしい神の贈り物を壊す輩がいるだろ?そういった人たちの間違いを正さないとおちおち進化もしてられないですよ」


 うん、何度目になるか数えてないけどこいつ頭おかしいわ。パンダになることを進化とかいってんの?え、引くぅ。

 こいつと話すくらいなら無言の方がまだマシだな。


 しばらくするとシャッターが見えてきた。近くにある監視カメラに向け、武田が手を挙げるとシャッターが開く。あ?誰に合図を送ったんだ?モールの奴らには内密でやってんじゃねえのか?


「おい、会長はどこだ?」


「大丈夫ですよ、彼女たちも後で君と同じく進化させてあげますから」


「話聞けよ、会長はどこかって――」


「いやぁ、嬉しいですね。()()に友達がまた増えるなんて、しかも今回は()()()()()()


 音を立てて開ききると、シャッターの奥には暗闇が深く広がっていた。ただでさえ不安を煽る暗闇の中に赤い光が数十個見えた。おい、これって初めて見るけど絶対あれだよな?


 騙された。寝起きで頭が働かないとは言え、疑うべきだった。気づけば武田の周りに武器を持った男達が集まっていた。それもご丁寧にバンダナをして顔を隠して、なんだよ、これから死ぬやつに恨まれたくねぇのか?


「…おいおい、まさか俺の処女でも狙ったのかぁ武田?」


「年上に対してなんという口の利き方。醜い、醜すぎですよ。やはりあなたは進化すべきです」


「…はぁ、じゃあその前にちょっとだけ自分の息子を弄らせてくれよ。ほら、進化したら生殖活動もしなくなるだろ?」


「ふふ、別に構いませんよ。今更反抗もできないですし、あなた達から武器は全部取り上げ――」


 パンッ、と乾いた音が鳴り響く。それと同時に武田の右肩に赤い花が咲いた。

 意外と音はしょぼいんだな。筋肉が発達している所為か反動は少なかった。

 俺が下らないことを考えていられるくらいは、周りの連中は一瞬何が起きたのかわからず呆然と立ち尽くしていた。


「ひ、ひぎぁぁぁあ!?熱い!熱い!!!」


「貴様ああああ!リーダーに何をふごぉ!?」


 やっと再起動した奴から、こっちにバットを振りかぶって走ってきたので顔面を掴み上げ駐車場に投げ込むと、中から叫び声が聞こえる。


「な、やめろぉ!やめてくれぇ!ひぎぃ!?いだい!いだいいだいいだいいだい……」


 その叫び声で全員意識が戻ったのか、青ざめた顔で俺を見て後ずさる。それを見た武田が叫ぶ。


「何してるんだお前ら!俺がやられたんだぞ!?さっさとそいつを殺せ!!!」


 武田に洗脳レベルのものをされているであろう奴らは、ビビりながらも俺に向かって襲いかかってきた。


「うぉぉぉおおぷっ!?」


「がああああふぐぅ!」


 掴んで投げたり蹴り込んだりと、次々駐車場にぶち込んでいく。その度に叫び声が上がりすぐに止む。

 8人か、残り1人というところで地下駐車場に通じる道のシャッターが閉まり始めた。気づけば武田の姿がない、管理室のやつが機転きかせたんかな。

 最後の1人の襟首を掴み上げてどうするか考えていると残った1人がバンダナを外して話しかけてきた。


「お、おい!た、たた助けてくれ!俺は戦えないんだ!!!」


「あ?なんだよ片柳くんじゃねぇか」


 俺が掴み上げていたのは田中の劣化版a.k.a片柳だった。


「た、頼む、助けてくれ」


「うーん、お前殺すと詩乃が悲しむかな?」


「し、しの?あ、ああ!お前が詩乃の言ってたアズマか!?ならちょうどいい俺が詩乃に頼んでお前とヤラせガッ!?」


「おい、調子に乗って話してんじゃねぇぞ?テメェらは俺を殺そうとしたんだ。小学校で習わなかったか?やられて嫌なことは人にしないようにって、ならお前らは別に気にしねぇよな、だって俺を殺そうとしたんだし」


「ひ、ひぃぃい!?」


 少しドスを効かせて殺気を出しながら話すと、片柳(劣化版)はガクガクと震えだし、次第にアンモニア臭のする臭いが漂ってきた。うわ、こいつ漏らしやがった。(鼻声)


「まぁ今回は許してやるよ、お前は会長にこのことを報告してすぐにモールから出るように言え。それができなけりゃここで殺す」


「だ、だすげアガァッ」


 騒いで話を聞かないのでもう一度殴る。


「は、歯が…」


「おい、話聞いてんのか?俺はもう人を殺すのに躊躇なんかしねぇぞ?」


「は、はひっ、わきゃりまじだ!!!」


 片柳(ボロ雑巾)を離すと、脱兎のごとくシャッターが閉まりきる前に逃げて行った。ほんとに大丈夫か?


 シャッターから駐車場の方に向きを変えると、まだ中からはぐちゃぐちゃと聞いただけで吐きそうな音が聞こえてくる。その音をバックに、タバコに火をつけ今後どうするかを考える。

 たぶんさっき見た赤いやつは赤パンダの目だろ、前あいつが言ってたことがほんとなら、赤パンダは普通のやつより強い。やっぱりここで食い止めるしか手はねえよな?


 駐車場の方のシャッターをくぐって中に入ると、赤い目が急に近づいてきた。え、はや――。


「ぐっ!?」


 殴りかかられたのでガードをしようとすると、想像の倍以上の力がかかり吹っ飛ばされた。背中を打ちつけて、呼吸しづらい中赤パンダの方を見ると、後ろにも数十個の赤目が浮き上がっていた。


 あー、死んだかも。

二連投稿は自分の首を絞める行為となりました

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