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パンデミック起きたけど生き残る気力がない  作者: ちぐい
二章 ろりと犬とダッシュと編
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9話 れっかばん

あざす

 詩乃に抱きついていたイケメンは、どうやら詩乃の幼馴染らしい。名前は片柳(かたやなぎ)(とおる)、髪は明るい茶色でTHE今どきの高校生みたいなイケメンだ。俺は好かない。


「詩乃が生きてて本当によかった」


「私もまさか徹が生きてるとは思わなかった」


「学校から逃げ出す時に俺が詩乃を助けていれば、って何回も後悔してたんだ」


「そうなの?てか、徹は――」


 2人で楽しそうに話している。

 …なんか面白くねぇな。ただの幼馴染の感動の再会だろ、なのになんで面白くねぇんだ?

 無性に居ても立っても居られなくなり、カバンの余白にタバコでも詰め込んでやろうと立ち去ろうとすると、さっきまで黙っていた会長がニヤニヤした顔で話しかけてきた。その顔腹立つからやめた方がいいですよ。


「アズマくん、今何考えてるか当ててあげようか?」


「…たぶん当たんないっすよ」


「詩乃ちゃんが誰かに取られそうで焦っているんでしょ?」


「いや、面白くないんでゲロでも吐こうとしてました」


「きみは何を考えてるの…」


「俺と詩乃は別に付き合ってるわけでもないし、あいつが居たい所にいればいいんじゃないっすかね」


「もー!」


「牛ですか?そこまで自虐しなくごべんなさい!」


「私のダイナマイトボディー、DBを馬鹿にするからよ。…まったく、自分に素直にならないと後で後悔してするよ?」


「はっ、俺はいつも自分に素直で「はいはい、わかったわかった!」自分から話しかけといてそりゃないぜ」


 俺は鈍感系主人公じゃないから詩乃の好意はわかっているつもりでいた。でもそれはあの幼馴染とやらがいない状態のもので、自分の命を守るための戦闘要員として俺の側にいただけだろ。幼馴染がいたら俺の側にいる必要なんてないからな、これから少しずつ離れてくだろ。


 …理解した上で、面白くねえな。


 ――――――――――――――――――――――――


 スポーツ店にあったバッグに詰めるだけ服を詰め込んだら、そろそろずらかろうとみんなで集まっていると武田がやってきた。それに会長が対応する。


「みなさん、今日はここに泊まっていってください。もう日も落ちるころなので、今から外に出たら危ないですよ?」


「お気遣いありがとうございます。ですが、私たちの帰りを待っている人がいるのでおかまいなく」


「少ないですがお食事もあるのでどうぞどうぞ」


「んー、みんなどうする?」


 特に断る理由が()()()()。たしかに夜は視野が狭まって危険だし、食事なんて今の状況じゃ普通誰もが欲しがるはずだ。よっぽど食料に余裕がない限り。

 ここで断っても「そんなに安全な場所に住んでるなら俺たちも住まわせろ」といざこざの種になってしまうので、怪しまれないためにと一泊していくことになった。


 ――――――――――――――――――――――――


 現在、隆二と一緒に屋上に出て俺はタバコを燻らせている。するとそこにネコがやってきた。


「あ、ここにいたのかいアズマ」


「おおネコ、そうだ隆二こいつはネコ、俺の友達だ」


「キシシ、根本康太ですよろしく。朝比奈隆二くんだっけ?」


「…」


「どした隆二?」


「なんでお前女なのに学ラン着てるんだ?」


「ボクはこれでも男なんだよ」


「言っとくけどこいつめちゃくちゃ強いぞ?俺フルボッコされたし」


「キシシ、今はアズマも力を使えるからわからないよ」


「…」


「なんだよ隆二?」


「…やっとお前にも友達ができたんだな」


「あ?何言ってんだよ」


「いや、お前の両親が亡くなってから、ずっと友達は俺だけだったじゃねえか。だから嬉しくてよ」


「は、恥ずかしいこと言ってんじゃねえぞ!」


「安心してよ隆二くん、ボクはアズマの友達だよ。それに、今アズマには神崎さんもいるしね」


「ケッ、あんな奴友達じゃねえよ。カッコいい幼馴染に会えたからってすぐに乗り換えやがった」


「アズマ、そんな言い方ないだろ。あれはただ再会を喜んでただけだよ、アズマと隆二くんみたいにさ」


「神崎の幼馴染?ああ、片柳のことか。俺はあいつ嫌いだなぁ」


「だろ?隆二もそうだろ?」


「いや、お前みたいに顔が嫌いって訳じゃねえぞ京次?あいつは戦わないくせに女子と楽しそうに話してんだよ」


「ああ、好きになれない理由がわかった。俺は苦労もしないで助かってる奴が許せねえんだ。パンダに股間食い千切られねぇかな?」


 なんだよ、田中の劣化版みたいなやつじゃねぇか。嫌だなぁ、そんな奴に詩乃が好き好き言うのを見るのは。べ、別に好きじゃねぇし?


「ぶはは!そりゃいいな!」


「もー、2人ともよしなよ」


「最近は牛のものまね流行ってんのか?」


「とにかく、アズマはちゃんと神崎さんを守ってあげて。いいかい?」


「向こうの出方次第だな」


「もー」


 その後も色々な話をして盛り上がっていると、いきなり隆二が俺に質問してきた。


「ん?京次髪染めたのか?似合ってねぇぞ」


「お前今まで気づいてなかったの!?よく惜しげも無く親友とか言えたもんだなぁおい!!!」

感想くだちい

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