7話 おひさ
あざすあざす。
マンションを出てショッピングモールに続く道を歩く。そういえば、今回の探索班はほとんどO型で形成されている。それでも十数人で、マンションにいた家族の父親とかは来ていない。会長は甘いよなぁ、俺にも甘くしてくれよ!糖尿病になるくらいによ!
中には違う血液型の奴もいるけど、そういう奴はみんな動ける人たちだ。
「結局着いてきたんだな、詩乃」
「ん?だから行くって言ったじゃない」
「お前本当に大丈夫なんか?」
「舐めないで欲しいわね、これでも才色兼備の詩乃ちゃんなんだから」
「ふざけんな」
「ほら2人とも!いちゃつくのはいいけど集中して」
「「いちゃついてません」」
「いちゃついてるじゃない、アズマくんはともかく詩乃ちゃんは初めてに等しいんだから気をつけてね」
「はい、すいません菜々さん」
「ハッ、会長に怒られてやんの」
「アズマくんも後で張るわよ?」
「ごめんなさい」
しばらく歩くと三体のパンダがいた。俺とネコが速攻で2体倒したところで会長から待ったがかかる。
「なんすか会長?」
「詩乃ちゃん、ここにいるみんなは貴方以外パンダを倒したことがあるの。あと1人のパンダ、詩乃ちゃんが倒してみて、できないなら今すぐ帰って大丈夫」
「え?会長、いくらなんでも早―――」
「私も指揮をとるにあたって人の命を背負ってるの、無駄な死なんて見たくない。詩乃ちゃんとは仲良くしたいから尚更よ」
あぁ、この人は常にトップとしてのプレッシャーを感じて行動しているのか。俺とひとつしか歳が違わないのに、すごい人だ。厳しく言ってるけどこれは詩乃を思っての発言だな。やっぱ甘ちゃんだよこの人。
「詩乃、できるか?」
「…やるわよ、腹は何回も括ってきたわ」
そう言うと、武器として渡されたゴルフクラブを握り直して近づく。緊張しているのが側から見てもわかる。
「…っ!ハァ!」
一息で振り下ろし、パンダの頭を潰す。そして数秒後にこちらに振り向いて笑いかけてきた。
「ふぅ、どう?動けるって言ったでしょ?」
「…ああ」
「そうね、じゃあ詩乃ちゃんこれからもよろしくね?くれぐれも気をつけて」
「あ、はい。お願いします」
またショッピングモールに向かって歩き出す。歩いている最中に詩乃は笑って話していたが、手が震えているし笑顔がぎこちない。そりゃ始めて殺したんだ、なんとも思わない方がおかしい。
少し気がかりにもなったが、歩みを止めるわけにも行かないので歩き続けた。
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何回か戦闘があったが問題なくショッピングモールまでたどり着くことができた。ほんと田舎でよかった。道中のパンダの数が少なかったから危なげなくここまでこれた。
来れたのはよかったが、数キロ歩いただけなのに俺を含めてみんな息が上がっていた。やっぱ死が近くにある緊張感を持ちながら過ごすのは相当なストレスになるんだな。
「さて、着いたわね。それにしてもこれは…」
会長が話しながらショッピングモールを眺めている。会長が言葉に詰まるのもわかる。なぜならショッピングモールの入り口にはバリケードが張り巡らせられていて中に入れそうにない。みんなショッピング好きなんだなあ。
そこに田中がやってきた。
「やっぱり誰かしら立て籠ってるんですかね?」
「うーん、これだと中に入れないね。どうしよ」
「バリケードぶっ壊して入りゃいいんじゃねか?」
「だめよ猛、あまりここにいる人たちと対立はしたくないの」
あーだこーだと話している人たちを尻目にネコと話す。
「やっぱ人はショッピング好きなんだな」
「キシシ、そういうわけじゃないでしょ。でもどうするんだろ、会長さんたち…アズマはどう思うんだい?」
「まぁこういう場所に避難するってのは定番だよな。そんで普通は見回りとかつけ「動くなぁ!!!」…こんな感じかなぁ」
気がつくと銃を構えた奴らに囲まれていた。顔にはバンダナを巻いててどんな奴だかわからい。え?てかそれって本物?だったらすぐ下げて欲しいんですけど。
「武器を捨てて手を上げろ!」
「か、会長。どうすれば…」
俺らのうちの1人が会長に尋ねる。あいつ誰だ?名前知らないな。
「従いましょう。私が代表者です!みんな!武器を置いて!」
会長の号令でみんな武器を置いて行く。俺もそれに倣って二号を地面に捨てる。すまねぇ二号!
「噛まれた奴は?」
「いません。私たちは衣服を分けていただければすぐにここを出て行きます。食糧を分けてもらいたいわけではありません」
「…噛まれた奴はいないみたいだな。衣服については俺の一任では決められん。とりあえず中には連れて行くがその後はリーダーに決めてもらう」
異様な緊張が広がる。やっぱり「災害起きて大変っすね、みんなで仲良しこよぴで頑張りましょう!」とはならんのか。
てかさっきから俺のことをジーっと見ている奴いるんだけど、何あいつ?俺にそっちの趣味はねぇぞ?え、こっち近づいててくんだけど…。
「やっぱ京次じゃねえか!お前生きてたのか!」
「は?なんで俺の名前知ってんすか?」
「あー?お前の大親友を忘れたんか?俺だよ俺!」
そう言いながらバンダナを取ると、その下には嫌という程見たことのある顔があった。
「は!?隆二!お前生きてたんかおい!」
俺の目の前には、この間名簿を調べた時にチェックがついてなかった。俺と小学校からの腐れ縁の朝比奈隆二がいた。
気づいたら10万字越えてました。ダラダラと書き綴っている作品で申し訳ねえっす。最近ランキングとかも一切見てないけど誰か読んでる人いるんですかいな。




